月別アーカイブ: 2004年9月

平山暉彦『へんてこロボットのぼうけん』

 またまた『へんてこロボットのぼうけん』。今日うちの子どもは、合体した「へんてこロボット」の足になるコンパスに興味を引かれていました。くるくるとまわるコンパスのダンス。うちの子どもはいまお絵かきに熱中しているのですが、コンパスを使ってみたいようです。
▼平山暉彦『へんてこロボットのぼうけん』「こどものとも年中向き」2003年3月号(通巻204号)、福音館書店、2003年

たむらしげる『おばけのコンサート』

 今日は2冊。子どもに言われてはじめて気が付いたのですが、この絵本では、ロボットの「ランスロット」以外にも、たむらさんの他の絵本のキャラクターが登場しています。それは『ネズミのヒコーキ』(あかね書房)の主人公の「ネズミ」。小さく描き込まれているのですが、みんなといっしょに踊っています。うちの子ども、よく気が付いたなあ、ちょっと、びっくりしました(^^;)。この絵本には、まだ他にもそういうキャラクターが出ていそうな気がします。
▼たむらしげる『おばけのコンサート』福音館書店、2004年

赤羽末吉『おへそがえる・ごん 3 こしぬけとのさまの巻』

 この第3巻では、みんなで協力して戦をやめさせます。初登場のかみなり、「へそとりごろべえ」は、「へそとりき」なんていう道具を持っているのですが、これが見たところ、まさにビールの栓抜き! これを使って、戦を起こしている赤と緑の殿様のおへそを「ぽこん」「ぽこん」と取っていきます。すると、殿様は、おなかに力が入らず腰が抜けて立てなくなるのです。いや、実におかしい。そして、呼んだらすぐ来る「ぽんた」と「こんた」の活躍もあり(たくさんのカエルとタコが大行進している画面のすごさ!)、戦はおしまい。最後に「けん」は「おとう」と再会できるのですが、その画面には小さな花が赤で描き込まれていて、なかなか印象的。
▼赤羽末吉『おへそがえる・ごん 3 こしぬけとのさまの巻』福音館書店、1986年

荒井良二『そのつもり』

 今日は2冊。「そのつ森」の空き地で開かれていた動物たちの会議は、大きなウシが草を食べに「ニューッ」と出てきて中断するのですが、このウシが実にでかい! いっしょにいる人間と比べると、とんでもなく大きいです。うちの子どもも「大きすぎだねえ」と言っていました。あらためてよく見ると、前の方の画面にも小さく描き込まれていたことが分かります。この大きなウシが草をはみ、人間がその下でごろりと横になっている画面は、動物たちの混乱した会議と対照的に、のんびりしています。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年

アネット・チゾン、タラス・テーラー『まほうにかかった動物たち』

 今日は1冊。この絵本のストーリーは、よく考えてみると、いわば人造生物(?)の悲哀を描いたものとも言えそうです。「人間にきらわれるのがいやなんです」「ほかの動物とちがうからって、人間が悪者あつかいするんだ」と「ハービィ」に訴えています。最後は「ハービィ」とイヌの「アンジェロ」が友だちになり、みんなで楽しくパーティなんですが、これで本当にいいのかなと少し疑問。それはともかく、生命をいとおしむという「おばけのバーバパパ」シリーズと共通のモチーフが読みとれるような気がしました。
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『まほうにかかった動物たち』評論社、1984年

ジョン・バーニンガム『ねえ、どれが いい?』

 これはおもしろい! いろんなおかしな選択肢が見開き2ページに描かれ、「ねえ、どれが いい?」と尋ねられます。どれもちょっと遠慮したいものが多くて、なんだか究極の選択のようになり、おかしい。家族みんなで「うーん」と考え、自分はこれ、私はこれ、と楽しみました。読み終わったあとでうちの子どもが一番いいなと言っていたのは、「ネコとボクシング」と「小人の宝探しの手伝い」の2つ(^^;)。原書の刊行は1978年。この絵本、おすすめです。
 ところで、この絵本を読む前にうちの子どもは表紙を見て「『アボガドベイビー』を描いた人が描いているんでしょ?」と聞いてきました。『アボガドベイビー』はジョン・バーニンガムさんの絵本で、だいぶ前に図書館から借りて読んで、うちの子どもがけっこう気に入っていたのです。『ねえ、どれが いい?』の表紙の子どもの描き方から分かったようで、子どもはよく見ているなと思いました。ちなみに、『アボガドベイビー』もとてもおもしろい絵本で、おすすめです。
▼ジョン・バーニンガム/まつかわまゆみ 訳『ねえ、どれが いい?』評論社、1983年

樋口淳/片山健『あかずきん』

 今日は2冊。ご存じ「赤頭巾」のお話。巻末の「あとがき」によると、「赤頭巾」にはペローとグリムの二つの型があり、それに対して、この絵本はフランスのトゥーレーヌ地方の語りをもとにしているそうです。そのため、一般に知られている「赤頭巾」のお話とは細部がいろいろ違います。世界各地の民話や日本の民話とも共通のモチーフが見られるそうで、おもしろい。とはいえ、この絵本の「おおかみ」は、かなり恐いです。うちの子どもはそんなに恐くないと言ってましたが、私は「えーっ!」とのけぞりそうになりました。絵は、よく見ると部分的にコラージュされていて、片山健さんの絵のなかでは珍しいのではないでしょうか。主人公の「あかずきん」があまりかわいく描かれていないのも、新鮮です。
▼樋口淳 文/片山健 絵『あかずきん』ほるぷ出版、1992年

井口真吾『バンロッホのはちみつ』

 おなかにチャックがついたテディベア、「バンロッホ」、いつものようになんとなく歩いていると、蜜を集めているミツバチを見つけます。蜂蜜をなめたくなった「バンロッホ」はいろいろ探しているうちに木のてっぺんに登るのですが、このあとの物語の爆走ぶりがおかしい。上へ上へと上昇していき、自分の住んでいた世界がどんどん相対化されていきます。しかし、最後は戻ってきて、やはり蜂蜜。絵はシンプルで色合いも均一的、グッとクローズアップしたり遠くを俯瞰したりする画面もおもしろいと思います。
▼井口真吾『バンロッホのはちみつ』学研、2001年

荒井良二『そのつもり』

 「そのつ森」という森の一角で、動物たちが会議を開いて話し合いをするというお話。会議のテーマは、森にある空き地をどう使えばよいか。何年も何年も話し合っているのですが、なかなか決まりません。おかしいのは、誰かが何か提案すると、みんな少し考えてから「いいねえ、それ」と言って、「そのつもり」になってしまうところ。これじゃあ、決まりませんよねえ。とくに「オバケを住まわせたい」というコウモリの提案、みんなの「そのつもり」ぶりがおもしろい。そんななか、リスが「何もしないでこのままがいいと思います」と言うと、誰も「そのつもり」になれず、そのあと、みんなが勝手にしゃべりはじめ大混乱。このままだからこそ「そのつもり」になれるのに、でも「このままがいい」という真実は「そのつもり」になれないから受け入れられない……いろいろ寓意を読みとれるような気がします。不思議な味わいの物語です。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年