荒井良二『そのつもり』

 「そのつ森」という森の一角で、動物たちが会議を開いて話し合いをするというお話。会議のテーマは、森にある空き地をどう使えばよいか。何年も何年も話し合っているのですが、なかなか決まりません。おかしいのは、誰かが何か提案すると、みんな少し考えてから「いいねえ、それ」と言って、「そのつもり」になってしまうところ。これじゃあ、決まりませんよねえ。とくに「オバケを住まわせたい」というコウモリの提案、みんなの「そのつもり」ぶりがおもしろい。そんななか、リスが「何もしないでこのままがいいと思います」と言うと、誰も「そのつもり」になれず、そのあと、みんなが勝手にしゃべりはじめ大混乱。このままだからこそ「そのつもり」になれるのに、でも「このままがいい」という真実は「そのつもり」になれないから受け入れられない……いろいろ寓意を読みとれるような気がします。不思議な味わいの物語です。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年

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