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荒井良二『そのつもり』

 今回、うちの子どもは、リスはどうして「何もしないでこのままがいいと思います」と言ったのかなと考えていました。動物たちの提案を聞いてもリスは「そのつもり」にならなかったんじゃないかというのが、うちの子どもの意見。うーむ、どうかな。みんなが「そのつもり」になっている画面にはリスもいたような気がするけど……。この会議は何かを決めるためではなく「そのつもり」になることが目的なのでは?というのがうちの妻の意見。うーむ、そうかも……。いや、いろいろ考えてしまう絵本です。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年

荒井良二『そのつもり』

 今日は2冊。「そのつ森」の空き地で開かれていた動物たちの会議は、大きなウシが草を食べに「ニューッ」と出てきて中断するのですが、このウシが実にでかい! いっしょにいる人間と比べると、とんでもなく大きいです。うちの子どもも「大きすぎだねえ」と言っていました。あらためてよく見ると、前の方の画面にも小さく描き込まれていたことが分かります。この大きなウシが草をはみ、人間がその下でごろりと横になっている画面は、動物たちの混乱した会議と対照的に、のんびりしています。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年

荒井良二『そのつもり』

 「そのつ森」という森の一角で、動物たちが会議を開いて話し合いをするというお話。会議のテーマは、森にある空き地をどう使えばよいか。何年も何年も話し合っているのですが、なかなか決まりません。おかしいのは、誰かが何か提案すると、みんな少し考えてから「いいねえ、それ」と言って、「そのつもり」になってしまうところ。これじゃあ、決まりませんよねえ。とくに「オバケを住まわせたい」というコウモリの提案、みんなの「そのつもり」ぶりがおもしろい。そんななか、リスが「何もしないでこのままがいいと思います」と言うと、誰も「そのつもり」になれず、そのあと、みんなが勝手にしゃべりはじめ大混乱。このままだからこそ「そのつもり」になれるのに、でも「このままがいい」という真実は「そのつもり」になれないから受け入れられない……いろいろ寓意を読みとれるような気がします。不思議な味わいの物語です。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年