稲田和子/川端健生『しょうとのおにたいじ』

 3冊目。子どもを食べられてしまった「しょうと」の鬼退治の物語。「しょうと」というのは、鳥のほおじろのことで、中国地方での呼び名だそうです。この絵本、いろいろ謎があります。最初に出てくる「おじぞうさん」はどうして鬼退治にいっしょに行かないのか? 赤鬼、青鬼、黒鬼の3匹が「しょうと」の子どもをのみこんでいるのに、どうして退治されるのは赤鬼だけなのか? うーん、何かありそうです。

 それはともかく、川端健生さんの絵がよいです。おさえた色合いにかすれた筆致、キャンバス(?)の生地がそのまま生かされていて、昔話の雰囲気を出しています。

▼稲田和子 再話/川端健生 画『しょうとのおにたいじ』「こどものとも」1996年2月号(通巻479号)、福音館書店、1996年

長谷川摂子/スズキコージ『たいこたたきのパチャリントくん』

 2冊目。いやー、めちゃくちゃおもしろい! 「ぐしゃりとつぶれたおおきなやかん」から出てきた「パチャリントくん」の冒険物語。どこに連れて行かれるのか分からない、ジェットコースターのような展開に度肝を抜かれました。ちょっと破壊的なところもよいです。なんだかまだ続きがありそうな終わり方なのですが、もしかすると続編があるのかも。というか、ぜひ続きを読みたい(^^;)。スズキコージさんの絵も、炸裂しまくっています。空も波打ち歪んでいます。これはすごい。この絵本、おすすめです。

▼長谷川摂子 さく/スズキコージ え『たいこたたきのパチャリントくん』「こどものとも」2000年3月号(通巻528号)、福音館書店、2000年

V.グロツェル/G.スネギリョフ/松谷さやか/高頭祥八『むらいちばんのりょうしアイパナナ』

 今日は3冊。主人公の男の子、アイパナナの描写がよいです。はじめはがかわいく健気、「ねずみのははおや」の魔法で変身すると、たくましくりりしい青年です。なかなかカッコイイです。

▼V.グロツェル/G.スネギリョフ 再話/松谷さやか 文/高頭祥八 画『むらいちばんのりょうしアイバナナ』「こどものとも 年中向き」1997年2月号(通巻131号)、福音館書店、1997年

パット・ハッチンス『びっくりパーティー』

 「あしたうちへあつまってね」とウサギがフクロウを誘うのですが、フクロウは聞き間違えてしまいます。他の動物たちにもどんどん間違って伝わっていき……といった物語。いわば伝言ゲーム。相手の言ったことを誰もちゃんと聞いてなくて、おかしいです。あと、この絵本では、動物たちの毛なみの描写が様式化されていて、なかなか美しいです。原書の刊行は1969年。

▼パット・ハッチンス/舟崎克彦 訳『びっくりパーティー』ポプラ社、1977年。

久里洋二『ゴキブリちゃん』

 みんなに嫌われている「ゴキブリちゃん」、一念発起して音楽を勉強し、すてきな音を奏でられるようになります。そして、人間たちと仲良くなったというお話。主人公の「ゴキブリちゃん」は、かわいく描かれているのですが、設定に無理があるような……(^^;)。また、「汚い」「臭い」という表現が割と直裁に出てきます。そんなに気にするほどではありませんが、少し抵抗を感じました。

▼久里洋二『ゴキブリちゃん』ARTBOXインターナショナル、2004年

ユリ・シュルヴィッツ『あるげつようびのあさ』

 今日は3冊。この絵本は、視点の置き方・動かし方が特徴的かなと思いました。たとえば物語のはじまりとおわりでは、いわばカメラを前後に動かすような表現になっています。他にも、王様と女王様と王子様が現れる場面では、カメラが横移動するような描写です。映画的と言えるかもしれません。

▼ユリ・シュルヴィッツ/谷川俊太郎 訳『あるげつようびのあさ』徳間書店、1994年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのなつやすみ』

 またまた『バーバパパのなつやすみ』。ラストページには、南の島からバーバパパたちが送った絵はがきが描かれています。「みんなで たのしい なつやすみ」と記され、家族勢揃い。この絵はがきの消印を見ると、94年4月10日付けになっていました。もしかすると、この絵本を描き終えた日付かもしれませんね。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー さく/やましたはるお やく『バーバパパのなつやすみ』講談社、1995年

飯野和好『ねぎぼうずのあさたろう その3 人情渡し船』

 わが家の定番、「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズ。うちの子どもは今日も「その5はまだ出ないの?」と言っていました。「その3」では「あさたろう」のお父さん、「ながきち」が登場します。「ながきち」とは言っても、顔はまあるい。なかなかカッコ良い男です。

 また、他の巻と同じく、「その3」に出てくるセリフのいくつかもわが家ではけっこう使います(^^;)。たとえば

「……ずず」
「あっ いきだおれだ」
「むすめさん しっかりしなせぇ」
「なんじゃな あんたたちは いきなり」
「いや なあに この まあるいかたたちがのう」

▼飯野和好『ねぎぼうずのあさたろう その3 人情渡し船』福音館書店、2001年

ユリ・シュルヴィッツ『あるげつようびのあさ』

 なんとも不思議な絵本。ニューヨークに住む男の子のところに、王様、女王様、王子様、お付きの人たちが行列を作って訪ねてくるというお話。この行列がとてもユーモラス。ラストにはトランプの絵札と人形が描かれており、どうも、ここから王様たちは抜け出してきた気がしてきます。フランスの古い民謡に基づいていると記されていました。

 訳者の谷川さんのあとがきによると、ニューヨークのソーホーの実在のまちなみが紙面の端々に描かれているそうです。原著の刊行は1967年。この絵本、おすすめです。

▼ユリ・シュルヴィッツ/谷川俊太郎 訳『あるげつようびのあさ』徳間書店、1994年

なかえよしを/上野紀子『また!ねずみくんとホットケーキ』

 今日は4冊。またまた「ねずみくんの絵本」。うちの子どもはだいぶ気に入っているようです。キリンやゾウやクマなど動物たちが出てくるのですが、「ねずみくん」の小ささが際立ちます。で、その小さな「ねずみくん」が活躍するところがおもしろさかもしれません。

▼なかえよしを 作/上野紀子 絵『また!ねずみくんとホットケーキ』ポプラ社、2003年