うちの子どものお気に入りの一つがこの『ねぎぼうずのあさたろう』シリーズ。現在、その4まで出ているのですが、何かというと「その5はいつ出るの?」と聞いてきます。私もこのシリーズは大好きです。その4が出たときに、まちの書店でも平積みになっていたので、とても人気があるのだと思います。
この絵本のおもしろいのは、なんといっても浪曲風時代劇というところ。浪曲と絵本の結びつき、こんな絵本は他にないでしょう。
扉のページには、「二代広沢虎造風浪曲節で」なんて説明書きがあります。この広沢虎造さんって誰だろうと思っていたら、たいへん有名な浪曲師の方でした。センチメンタル浪花節さんのサイトに説明がありました。あと、日本映画データベースで検索してみると、多くの映画にも出演されているようです。アマゾンで検索してみると、CDもいっぱい出されています。でも、「二代」ということは、「一代目」の広沢虎造さんもいらっしゃるのでしょうか。もしご存じの方がおられたら、教えて下さい。
この絵本の作者の飯野和好さん自身も、落語家の方と組んで「浪曲風読み聞かせ」「講談風読み聞かせ」をされているそうです。なんと作者みずからが読み聞かせをしたビデオも出ています。飯野和好痛快活劇ビデオに案内がありました。
絵本では、手書きの文字で書かれた文章が楽しいです。冒頭から、
はるがすみ~
むさしのくにのつちのかおり
とあるのどかな
むらのなは
ちちぶごうりは
あさつきむらよ
いちじろまあるく
ピリリとげんき
はたけそだちの
おとこのこ
そのなも
ねぎぼうずの
あさたろう~
といった具合で、言葉の表現がテンポよく、とてもおもしろい。読み聞かせをするときも、ついつい自分流に浪曲の感じ(?)で読んでしまいます。
そのほか、この「その1 とうげのまちぶせ」の数々のセリフは、わが家でちょっとしたブームになりました。「へへっ どうだぃ あっ かんにんしてください」とか「な、なんでい きもちのわるい さむらいだなあ へへえ、ねぇ」とか「あやしい なぞの ろうにんもの」とか。
絵は水彩で、主に見開き2ページを丸ごと使ったど迫力のものです。まあるい顔の「ねぎぼうずのあさたろう」、「あさたろうのはは おたま」、きゅうり顔の「なぞのろうにんもの きゅうりのきゅうべえ」といった具合に、野菜をモチーフにした絵も楽しいです。
そして、やはり魅力的なのは、主人公のあさたろう。悪いことが大嫌いで一本気な男の子です。必殺技はなんと「ねぎじる」。
このシリーズのおもしろさは、お父さんにとっても大満足と思います。お父さんのちょっと低い声で読み聞かせをするとばっちりでしょう。
▼飯野和好『ねぎぼうずのあさたろう その1』福音館書店、1999年