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アネット・チゾン/タラス・テイラー『バーバパパのしんじゅとり』

 「バーバパパのちいさなおはなし」シリーズの1冊。少し小さめの絵本シリーズです。今回、バーバパパたちは、みんなで真珠取りに出かけます。自分たちで船を造り、南の海へとやって来たバーバパパたち。いろいろ楽しいエピソードがあり、最後には「バーバベル」に真珠の首飾りを作ります。

 船や潜水用の箱を輪切りにして描写するのは、「バーバパパ」シリーズならではと思います。へぇーと思ったのは、バーバパパたちはどうやら人間と同じように呼吸をしていること。潜水用の箱や潜水服には、空気を送り込む管が付いています。でも、体のかたちを変えて変身すると、空気がなくても大丈夫なんですね。なかなか細かい描写です。

 巻末の注記によると、もともとこの絵本は「バーバパパ・ミニえほん」の21巻の装丁を変えて刊行したものだそうです。原書の刊行は1974年。

▼アネット・チゾン/タラス・テイラー/山下明生 訳『バーバパパのしんじゅとり』講談社、1997年、[装丁:スタジオ・ギブ]

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのなつやすみ』

 またまた『バーバパパのなつやすみ』。ラストページには、南の島からバーバパパたちが送った絵はがきが描かれています。「みんなで たのしい なつやすみ」と記され、家族勢揃い。この絵はがきの消印を見ると、94年4月10日付けになっていました。もしかすると、この絵本を描き終えた日付かもしれませんね。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー さく/やましたはるお やく『バーバパパのなつやすみ』講談社、1995年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのなつやすみ』

 2冊目は『バーバパパのなつやすみ』。けんかのあとで仲直りする場面がよいです。みんなでまるく一つになってピタッと抱き合っています。

ようやく、かぞく みんなが いっしょに なれて、
うれしい うれしい。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー さく/やましたはるお やく『バーバパパのなつやすみ』講談社、1995年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのなつやすみ』

 「講談社のバーバパパえほん」シリーズの1冊。夏休みを南の島ですごすバーバパパ一家。へーっと思ったのは、バーバパパの子どもたちが大げんかをするところ。けんかもするんですね。これまで、とても平和的で仲がいいという印象があったので、意外でした。ペンキの色をきっかけにして仲直りするのも、おもしろいです。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー さく/やましたはるお やく『バーバパパのなつやすみ』講談社、1995年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのさんごしょうたんけん』

 「バーバパパ世界をまわる」シリーズの5冊目。エジプトの紅海にやってきたバーバパパ一家、犬のロリータがケガをしてしまいます。

 バーバパパのシリーズはたくさんあって(「バーバパパのちいさなおはなし」とか「バーバパパ・知識のえほん」とか)、うちの子どもも大好きなのですが、私はやはり最初のシリーズがストーリーも絵も一番よかったと思います。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー/山下明生 訳『バーバパパのさんごしょうたんけん』講談社、2000年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『おばけのバーバパパ』

 「バーバパパ」シリーズ、図書館から借りて読んでいるのですが、うちの子どもは大好きです。ほとんど毎晩、読み聞かせ絵本に選ぶほどです(うちでは寝る前の絵本はたいてい子供が自分で選びます)。

 『おばけのバーバパパ』はシリーズの第一作目。まだ「バーバママ」や子どもたちは登場しません。「バーバパパ」の誕生が描かれています。フランソワの家の庭で生まれた「バーバパパ」、一度は動物園に入れられるのですが、まちで大活躍して人気者になり、再びフランソワの家に戻っていっしょに暮らしはじめるというストーリー。

 「バーバパパ」シリーズは図書館でも大人気で、全巻そろっていたことは一度もありません。何度も貸し出されているのでけっこう本が傷んでいたりしますが、それは、このシリーズが愛されている証かもしれませんね。

 ところで、たいてい貸し出し中になっているので、実はわが家ではシリーズを順番通りに読んでいません。シリーズのかなり後のものから読みはじめました。あまりよくないのかもしれませんが、うちの子どもにとってはそんなに違和感はないようで楽しんでいます。

 で、そんなふうに読んでいくなかで、以前うちの子どもに「バーバパパって何?」とたずねてみました。間髪を入れずに返ってきた答えは、

「ねんど。すっごくやわらかい、ねんど」(!)

 なるほどーと思いました。色もカラフルだし、自分のからだを自由自在に変えられるところは、たしかに、ねんどみたいです。

 でも、たしか「バーバパパ」は「おばけ」じゃなかったかなと思い、この第一作目を読んでみました。それで気が付いたのですが、お話のなかでは「バーバパパ」が「おばけ」であるとは一言も書かれていないんですね。

 本文のとびらに記されている原本のタイトルも BARBAPAPA だけで、日本語の「おばけ」に対応する言葉は見あたりません。邦訳のタイトル『おばけのバーバパパ』は訳者の山下明生さんのアイデアなんじゃないでしょうか。そんな気がします。

 そもそも庭の土のなかから生まれてきますし、うちの子どもの言うとおり、やっぱり元は「ねんど」なんじゃないかなーと親ばかな私は思ってます(苦笑)。うちの子どもは、この『おばけのバーバパパ』を読んだあとも、「バーバパパ」はやっぱりねんどだと言っています(笑)。あ、もしかして「ねんどのおばけ」かもしれませんね。

 しかしまあ、少なくとも「おばけ」というよりは「生き物」。シリーズの他の絵本でも、自然を大切にし、人間はもちろん、他の動物や植物も深く愛している姿が描写されていたかと思います。地球のなかから生まれ、生きとし生けるものすべてを慈しむグレートな「生き物」、それがバーバパパとその家族。

 とはいえ、シリーズの絵本をすべて読んでいるわけではないので、他のところで「おばけ」の話が出てくるのかもしれません。

 それはともかく、「バーバパパ」シリーズの絵はなかなか興味深いなと今回あらためて思いました。

 一つは彩色。すべてに色を付けず、ばあいによっては着色しないで白いままにしている(?)のが、おもしろいです。たとえば木々も、緑に彩色しているところと、白いまま輪郭だけになっているところがあります。昼間の建物もあまり色が付いていません。これは、画面ごとの色のバランスやストーリーの意味合いを考えてのことかなと思いました。

 もう一つは、(最後のページを除いて)すべて縦に輪切りにして横から描くようになっているところ。土のなかにいる「バーバパパ」の様子や木の根っこも横から見えます。家や動物園の施設も縦に輪切りになっています。視覚的に楽しめます。

 あと、画面にほとんど奥行きがないのもおもしろいです。最後のページも上から見下ろすようなかたちで描かれているのですが、ここでもあまり立体感はありません。だからといっておかしいわけではなく、むしろ軽快で心地よい感じです。

 絵本だから当然かもしれませんが、誰かが名前を付けたわけでもなく生まれたときから「バーバパパ」、しかも子どももまだいないのに「パパ」というのも、おもしろいですね。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー/山下明生 訳『おばけのバーバパパ』偕成社、1972年