うーん、面白い! タイトルの通り、テーマは「おなら」です。
見開き2ページいっぱいに、様々な「おなら」をしている情景が描かれ、それに簡潔な文が1文だけついています。この文章が非常にリズミカルで、まるで歌うように読んでいけます。というか、どれも、「ぶ」「ぼ」「へ」……と「おなら」の音が文末表現なんですね。なんだか痛快な気分になってきます。
当たり前ですが、「おなら」の音って、ほんとに多様だなあと変なところに感心してしまいました。いや、「おなら」って、ある意味、楽器ですね。自分でコントロールするのは難しいけど(^^;)、いろんな音、しかも個性的な音を出せる楽器。ちょっと恥ずかしいけど、なんだか楽しくもなる楽器です。いやまあ、おかしな考えかもしれませんが、この絵本を声に出して読んでいると、あながち間違いでもない気がしてきます。
そして、この絵本、文はもちろんのこと、それに付けられた絵がまた素晴らしい。谷川さんの詩にまったく負けていないというか、相乗効果で、おかしさが二乗になっていると思います。それぞれ味わい深い描写で、可笑しいです。
とくに面白いのが大人。「おなら」をしているのは、化け物(?)、動物、子ども、大人、男性、女性、おじさん、おばさん……と様々なのですが、大人の「おなら」がなんともいえない趣きを醸し出しています。いや、実にユーモラス。
子どもは、「おなら」をするときもシンプルです。でも、大人はそうはいかない。微妙な表情と動作がそこに現出するわけですが、そのあたりの玄妙なニュアンスが活写されています。
また、「おなら」って、思いがけないところで一発出ちゃいますよね。「おなら」は元来、暴力的なものだと言えるかもしれませんが、そういう部分も描かれている気がしました。「あっ!」と思ったときには出ちゃって、一気に場が弛緩し流れが変わってしまうというか……。「おなら」の力はあなどれません(^^;)。
色彩はもちろん黄色がポイントです。なんだか臭ってきそうな色合い。とくに「すかしっぺ」が雰囲気でています。
ところで、この絵本は、谷川俊太郎さんの『わらべうた』に集録されている「おならうた」に飯野和好さんが新作を加えて絵本にしたとのこと。奥付に説明が記されていました。谷川さんの詩に飯野さんが加筆していると思いますが、一読した感じでは、どれがそうなのか分かりません。全体に自然な感じです。
字がとても少ないこともあって、うちの子どもは一人で読んで、ウヒウヒ喜んでいました。好きだねえ、「おなら」。でも、大人も、なんだかんだいって、あの間の抜け具合が好きなんじゃないかな、ほんとは。
▼谷川俊太郎 原詩/飯野和好 絵『おならうた』絵本館、2006年、[印刷・製本:荻原印刷株式会社]