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長谷川義史『いいから いいから』

 うーむ、これは面白い。「いいから、いいから」が口癖(?)の「おじいちゃん」と、「ぼく」が、雷と一緒にやってきた「かみなりのおやこ」をもてなす物語。

 「おじいちゃん」は相手が「かみなり」でもまったく気にせず、「いいから、いいから」と手厚くもてなします。その桁外れのホスピタリティ(?)が、とても可笑しい。ラストのオチも爆笑間違いなしです。うちの子どももウヒウヒ受けていました。

 この絵本、とびきりユーモラスで大笑いなのですが、実はかなり奥が深いと思いました。タイトルにもなっている「いいから、いいから」は、考えてみると、非常に含蓄のある言葉です。自分とは異なるものを安易に拒否するのではなく、大らかに受け入れていく、そんな懐の深さを表しています。たとえ人間ならざるものであっても、それを平気で迎え入れる度量と言ってよいかもしれません。

 「いいから、いいから」は、いいかげんでちゃらんぽらんにも聞こえます。けれども、今の世の中にあって、もっとも必要とされることがらを表している気がします。目くじら立てて視野狭窄に陥りがちな私の日常において、一番欠けているものかもなあと思いました。もう少し、ゆったり構えてもいいんじゃないか、そんなメッセージが聞こえてくるようです。

 関連しますが、子どもと一緒に読むとき、「おじいちゃん」のこのセリフ、「いいから、いいから」をどんなふうに声に出せるか、割と大きなポイントかもしれません。けっこう難しいんですよ、これ。すべてを肯定し歓待していく、そういう読み語りは、一朝一夕には出来ないと思うのですが、どうでしょう。何かというとすぐ早口にまくしたてて、相手の言うことも遮ってしまうような人(つまり私です^^;)には、とても困難。読む人の人となりが試される絵本かもしれません。

 あと思ったのは、「おじいちゃん」だけでなく、「おかあさん」がけっこう、すごいんじゃないかということ。文中には一つのセリフもなく、絵のなかに少ししか登場しないのですが、この「おかあさん」、「おじいちゃん」以上の傑物かも。なんでも受け入れてしまう「おじいちゃん」を叱ったり疎んじたり、そんなそぶりは微塵も見せません。ほとんど驚いたりもしません。にっこり笑って普段通りなのです。

 いや、もちろん、絵本だから当然そうなのだと言えるかもしれません。でも、どことなく浮世離れした「おじいちゃん」にこのように接していることは、それ自体すごいことだし、けっこう重要な意味があるんじゃないかと思いました。例によって考えすぎかもしれませんが……(^^;)。

▼長谷川義史『いいから いいから』絵本館、2006年、[装丁デザイン:広瀬克也、印刷・製本:荻原印刷株式会社]

長谷川義史『いっきょくいきまぁす』

 うーん、面白い! 長谷川義史さんならではのサービス満点のエンタティメント絵本。

 ストーリー(?)は、タイトルにも伺えるように「ぼく」「おとうさん」「おかあさん」がカラオケに行って歌を歌うというもの。というか、ストーリーはあってないようなもので、とにかく3人が次から次へと歌っていきます。

 基本的に曲を選んで、司会の「ミスターカラオケ」の導入があり、ページをめくると、見開き2ページいっぱいに歌の世界が広がっています。ユーモラスな描写、楽しいディテールがてんこ盛りで、実に楽しめます。よく見ると、ページの端々に可笑しいものが描き込まれているんですね。

 なかには長谷川さんのあの傑作、『どこどこどこ』が「サービス」で付いているページもあり、うちの子どもも大受けでした。表紙・裏表紙の見返しも、隅から隅まで仕掛けがあって面白い。

 また、3人が歌う曲は誰もが知っているような童謡や昔のヒット曲ばかり。子どもが知らないものもありますが、親の世代はもちろん知っている曲です。読み聞かせというよりは、歌い聞かせ(?)になって、妙に盛り上がります。なんだか熱が入っちゃうんですよね。いや、楽しいです。

 有名な「ぐりとぐら」シリーズをはじめとして、絵本のなかに歌の要素が含まれていることはよくあると思いますが、ここまで歌がメインになっている絵本は、あまり他にないかも。

 選曲も絵も、下世話と言えば下世話。上品とはとても言えないかもしれません。しかし、ここまで娯楽を徹底すると、(ちょっと大げさかもしれませんが)従来の絵本の世界を越え出ていくような、そういう勢いがあるように思えてきます。雑然としていて、でも大らかでユーモラス、そのパワーです。

 長谷川義史さんの芸風(?)って、けっこう貴重と思うのですが、どうでしょう。

▼長谷川義史『いっきょく いきまぁす』PHP研究所、2005年、[印刷・製本所:凸版印刷株式会社、制作協力:PHPエディターズ・グループ]

長谷川義史さんの「目標」

 朝日新聞関西の7月20日付けの「旬の顔」、asahi.com: 絵本作家 長谷川義史さん(44)-旬の顔-関西

 これはおもしろい! 長谷川義史さんがこれまでと現在を語られています。長谷川さんが描かれた絵本、最近とても多いと思っていたら、去年は10冊、今年もすでに6冊、刊行されているそうです。うーむ、すごいハイペース。

 とはいえ、絵本を描き始めた当初はなかなか、うまくいかなかったとのこと。中川ひろたかさんの文に絵を描く仕事が一つの転機になったそうです。

背景を細部まで描きこみ、文にだじゃれをまき散らし、本の見返しまで埋め尽くす。持ち前のサービス精神が本領を発揮し始めた。

 うーむ、なるほどなあ。「どこどこどこ」の2冊なんて、超絶的なものすごい描き込みですよね。

 子どものころは絵本に縁がなく、読み聞かせなんて「気色悪い」と思っていたのも、おもしろい。小さいころ絵本に接していない方がむしろ、自由に絵本を描けるのかも。

 掲載されている写真のワークショップの様子も、実に楽しそうでよいです。

長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』

 今日は4冊。表紙・裏表紙の見返しの「まちがいさがし ちゃう ちゃう ちゃう」、ようやくすべて見つけました。これで安心して眠れます(^^;)。それにしても、作者の長谷川さんのご苦労は半端じゃないですね。すでに第二弾が刊行されているようですが、そのことを話したら、うちの子どもはやる気満々でした(←しばらく休ませてくれえー)。

▼長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』ひかりのくに、2003年

長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』

 今日は2冊。1冊目は『どこどこどこ いってきまーす』。子どもといっしょにがんばって、本文も表紙・裏表紙もすべて見つけました。やったー! いやー、難しかった(^^;)。「きいろい ねこ」と「ろば」、この2つが難関でした。残るは、表紙と裏表紙の見返しにある「まちがいさがし ちゃう ちゃう ちゃう」。それぞれの見返しの間で8つも違いがあるそうなんですが、ちっとも分かりません。うーん、まだまだ楽しみ(?)は続きます。

 ところで、この絵探しは、オリジナルでもやれますね。たとえば表紙、「忍者が一人、どこどこどこ?」といった感じで自分たちなりに新しく質問を作って楽しめます。

▼長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』ひかりのくに、2003年

長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』

 今日も子どもといっしょに「どこどこどこ!?」と探してみました。お寿司屋の「カッパちゃん」の「えび」、ついに発見! それから、「どんぐりぼうや」も全部、見つけました。けっこう、うれしいです(^^;)。でも、まだ見つかっていないものがあります。難しいです。

 それはともかく、よく見ると、絵のなかのポスターとか広告の文が笑えます。あと、巻末の作者紹介文は長谷川さん自身が物語風に書かれていて、これもおもしろい。

▼長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』ひかりのくに、2003年

長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』

 これは、おもしろい! 画面に描き込まれたいろんなものを探す絵本。「あー、みつけた!」って感じで、子どもだけでなく家族みんなではまりました。ユーモラスな描写がてんこ盛りで、ぜんぜんあきません。作者の長谷川さんは描くのが大変だったろうなあと、苦労がしのばれます(^^;)。この絵本も、おすすめです。

▼長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』ひかりのくに、2003年