うーん、面白い! 長谷川義史さんならではのサービス満点のエンタティメント絵本。
ストーリー(?)は、タイトルにも伺えるように「ぼく」「おとうさん」「おかあさん」がカラオケに行って歌を歌うというもの。というか、ストーリーはあってないようなもので、とにかく3人が次から次へと歌っていきます。
基本的に曲を選んで、司会の「ミスターカラオケ」の導入があり、ページをめくると、見開き2ページいっぱいに歌の世界が広がっています。ユーモラスな描写、楽しいディテールがてんこ盛りで、実に楽しめます。よく見ると、ページの端々に可笑しいものが描き込まれているんですね。
なかには長谷川さんのあの傑作、『どこどこどこ』が「サービス」で付いているページもあり、うちの子どもも大受けでした。表紙・裏表紙の見返しも、隅から隅まで仕掛けがあって面白い。
また、3人が歌う曲は誰もが知っているような童謡や昔のヒット曲ばかり。子どもが知らないものもありますが、親の世代はもちろん知っている曲です。読み聞かせというよりは、歌い聞かせ(?)になって、妙に盛り上がります。なんだか熱が入っちゃうんですよね。いや、楽しいです。
有名な「ぐりとぐら」シリーズをはじめとして、絵本のなかに歌の要素が含まれていることはよくあると思いますが、ここまで歌がメインになっている絵本は、あまり他にないかも。
選曲も絵も、下世話と言えば下世話。上品とはとても言えないかもしれません。しかし、ここまで娯楽を徹底すると、(ちょっと大げさかもしれませんが)従来の絵本の世界を越え出ていくような、そういう勢いがあるように思えてきます。雑然としていて、でも大らかでユーモラス、そのパワーです。
長谷川義史さんの芸風(?)って、けっこう貴重と思うのですが、どうでしょう。
▼長谷川義史『いっきょく いきまぁす』PHP研究所、2005年、[印刷・製本所:凸版印刷株式会社、制作協力:PHPエディターズ・グループ]