JPIC 財団法人 出版文化産業振興財団が刊行している季刊誌、『この本読んで!』のサイト、えほん大好き(読みきかせ・絵本大好きな方々のコミュニティ)に興味深い記事が載っていました。特集 お父さんだって、読みきかせたい。です。
『この本読んで!』の読者の夫、100人に対し、家事・育児へのかかわりや読みきかせについて実施したアンケートが掲載されています。もちろん、サンプルが100人ですから、平均的父親とは言いにくいですし、また『この本読んで!』を定期講読しているとなると、比較的絵本に親しんでいる家庭かもしれません。それでも、一般的な傾向は読み取れると思います。
上記のウェブページの左側には、アンケートの単純集計がグラフで表されています。それを見ると、まず意外だったのは、父親がかかわっている家事・育児の第3位に読みきかせが挙がっていること。複数回答で、全体の42%です。けっこう読みきかせをされているお父さんが多いと言えます。
その一方で、読みきかせが好きだと答えた父親は28%、読みきかせが得意と答えた父親は21%しかありません。「どちらともいえない」が半分以上を占めていますが、けっこう低い数値ですね。
この傾向は、上記のウェブページの右側にまとめられている自由回答からも読み取れます。たとえば「自分にはできない」「何がおもしろいのかわからない」「面倒くさい」「自分が眠くなってきて、つらい」といったネガティヴな回答が並んでいます。比較的、絵本の読みきかせに積極的なお父さんでも、明確に前向きな回答は少ないような気がします。
特集のタイトルは「お父さんだって、読みきかせたい。」ですが、調査の結果からは、とてもそう言えない現状が浮かび上がってくると言ったら言い過ぎでしょうか。
アンケートのまとめに記されているように、お父さんにとっての読みきかせは発展途上かもしれませんね。単なる印象論にすぎませんが、一つには、「恥ずかしい」「どうしたらよいのか分からない」といった、読みきかせをはじめる以前の尻込みがあるように思います。もう一つには、仕事が忙しく疲れている父親の姿があると言えるでしょう。
私の個人的な体験から言うと、子どもと一緒に絵本を読むことは、それ自体、仕事の疲れを取ってくれる最高の時間です。恥ずかしい、分からないといった最初のハードルを越えたら、あとは楽園、もうやみつきです(^^:)。
特集のパート2で鈴木光司さんが触れているように、子どもの教育のためといったこともないわけではないでしょうが、私の場合は、むしろ、自分自身のためにも読みきかせをしていると言えます。読みきかせは、仕事のストレスを忘れさせてくれると言ってもよいです。
まず、絵本は一つの独創的な表現様式であって、それにふれること自体が楽しみになると思います。すぐれた絵本は一個の芸術作品であり、それを体感することが楽しいわけです。
もちろん、子どもと一緒に絵本を読むことはコミュニケーションですから、独りよがりなものではうまくいかないと思います。そうではなくて、子どものぬくもりを感じ、やりとりを楽しみ、一緒に笑ったりしんみりしたり、場を共有することそれ自体が、子どもにとっても自分にとっても貴重で、そしてまた楽しいのです。
とにかく、まずは自分と子どもが楽しい時間を過ごす、そのことだけを考えるのがよいかもしれません。何かのためではなくて、それ自体を楽しむことが大事で、実際、絵本はそういう楽しみをたくさんもたらしてくれると思うのです。
えほん大好き(読みきかせ・絵本大好きな方々のコミュニティ)のひとのページで、飯野和好さんが次のように語っています。
絵本を人に読んであげるとき、たとえ相手が何人でも「芸能」になる。人に向かって表現するわけだからね。それをただ「読んで聞かせよう」とする人がたくさんいるんだね。芸能として考えたとき、もっと表現方法があると思うんだ。子どもを「いい子に育てよう」とかあまりかたく考えないで楽しんでほしいなぁー。
大事なことはまさに上記で言い尽くされていると思うのですが、どうでしょう。