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ヴィルヘルム・ブッシュさんの関連情報

 しばらく前に読んで衝撃的だった『マックスとモーリッツ』、その作者であるヴィルヘルム・ブッシュさんの記念館があることを知りました。日本経済新聞で毎週土曜日に掲載されている、多和田葉子さんの「溶ける街 透ける路」、8月12日付けの第31回「ハノーファーの罠」で取り上げられていました。

 ドイツの都市、ハノーファーのヘレンハウゼン王宮庭園のなかにあるそうです。ヴィルヘルム・ブッシュさんはハーノーファーの生まれとのこと。検索をかけてみると、ウェブサイトもありました。Wilhelm-Busch-Museum Hannoverです。なかをのぞいてみると、ヴィルヘルム・ブッシュさんの写真もあります。ブッシュさんの作品のコレクションはもちろんのこと、風刺画のコレクションも所蔵しているようです。トミー・ウンゲラーさんのイラストがサイトには掲載されています。

 多和田さんによると、『マックスとモーリッツ』は、ドイツでは知らない人がいないほど有名だそうです。そこで、少し関連サイトを検索してみました。

 まず日本語で読めるもの。

 Wikipediaには、マックスとモーリッツ のページがあります。ここの説明によると、漫画の歴史においても重要な作品だそうです。

 また、酒寄進一研究室ドイツ語文化圏データベースには、ヴィルヘルム・ブッシュに略歴や作品リストが掲載されています。

 続いてドイツ語のサイト。非常にたくさんの関連サイトがあります。

 上記の酒寄進一研究室のページからもリンクが張られていますが、著作権フリーのドイツ文学作品をデジタル化しているプロジェクト・グーテンベルク、Projekt Gutenberg-DEには、『マックスとモーリッツ』の原文がそのまま集録・公開されています。Max und Moritzです。ただし、挿絵はないようです。『マックスとモーリッツ』以外のブッシュさんの作品も、パブリック・ドメインになっているようですね。

 同様にして、Vorleser.netでは、オーディオブックのように、朗読の音声データを無料でダウンロードできます。Wilhelm Buschです。

 ドイツのWikipedia、Wikipediaにも、Max und Moritzのページと、Wilhelm Buschのページがありました。かなり詳しい記述になっています。ブッシュさんの自画像も掲載されています。りっぱなヒゲです(^^;)。

 また、個人の方が運営されているサイト、Wilhelm-Busch-Seitenには、関連情報が集められています。そのなかのWilhelm Busch Museenのページには、ブッシュさんの生家など、多くの記念施設の説明とリンクが載っています。生家はきちんと保存され公開されているようですね。ウェブサイト、Wilhelm Busch Geburtshausもあります。

 さらに、「ヴィルヘルム・ブッシュ賞」というものがあるそうです。上記のドイツのWikipediaに説明のページがありました。Wilhelm-Busch-Preis – Wikipediaです。風刺作家、ユーモア作家に授与されるようです。サイト、Wilhelm-Busch-Preisもあります。

 さらにさらに、「ヴィルヘルム・ブッシュ協会」というのもあるみたいですね。サイトは、Wilhelm Busch.deです。

 そして最後は、ドイツのアマゾン、Amazon.deで、「Max und Moritz」で検索してみました。Amazon.de: Max und Moritz: Suchergebnisse Amazon.deです。実にたくさんの関連商品があるようです。ポップアップ絵本や、なかには「 Max und Moritz Reloaded」なるDVDもありました。どうやら舞台を現代に移した映画のようです。うーむ、どんな内容なんだろう。あの物語を現代でやるとなると、相当にブラックなものになると思いますが……。

 まだまだ関連サイトがあるようですが、少し調べただけでも、ドイツの人たちにとって、いかに『マックスとモーリッツ』が身近で、ヴィルヘルム・ブッシュさんが親しまれているか、よく分かるような気がしました。

ヴィルヘルム・ブッシュ『マクスとモーリツのいたずら』

 こ、これはすごい……。なにげなく図書館で手に取り借りてきたのですが、こんなにすごい絵本だったとは!

 主人公はマクスとモーリツの二人の男の子。二人がしでかした7つのいたずらとその顛末が描かれていきます。この「いたずら」がなかなか強烈で、たいへんな悪たれぶり。大人たちが眉をひそめるような行動が次から次へと続きます。こんな絵本、教育上よろしくないなんて、敬遠されるくらいかも。

 しかし、しかし、この絵本のすさまじいところは、実は二人の「いたずら」ではありません。あっ!と驚く、まさにまさに驚愕の結末が待っています。呆気にとられること間違いなし! いや、これほど凄みのあるブラックな絵本は、あまり他にないと思います。

 一応、「いたずらなんかしたらダメだよ」と、教育的なメッセージが込められていると言えなくもない……かな? というか、そんなありきたりの展開、常識の範囲はとっくに超えちゃってます。

 やっぱりねー、子どもの「いたずら」なんて、ある意味、かわいいもの。本当に恐いのは大人なんですね。あるいは、狭い社会の怖ろしさが描き出されていると言えるかも。

 物語は壮絶と言っていいのですが、絵はとても軽快でユーモラス。そのギャップがまた面白いです。また、訳文がリズミカルでとても読みやすい。

 あと、気になるのは主人公二人の家族。ぜんぜん似てないので、兄弟ではなさそうですが、しかし、親はどうしたんだろうか。孤児という設定なのかな。謎です。

 この絵本、うちの子どももさすがに驚いていました。「えーっ!」。いや、父ちゃんもびっくりだよ、ホント。うーむ、読んでよかったんだろうかと若干の危惧を覚えつつ、とはいえ、ぜんぜん屈託のない我が子がなんとなく頼もしく思えたのでした(なんだか分かりませんが^^;)。

 原書“Max und Moritz”の刊行は1865年。140年以上前の絵本なんですね。でも、それほど古さは感じません。むしろ、このブラックな趣きは現代的と言えるかも。

▼ヴィルヘルム・ブッシュ/上田真而子 訳『マクスとモーリツのいたずら』岩波書店、1986年、[印刷:精興社、製本:三水舎]