こ、これはすごい……。なにげなく図書館で手に取り借りてきたのですが、こんなにすごい絵本だったとは!
主人公はマクスとモーリツの二人の男の子。二人がしでかした7つのいたずらとその顛末が描かれていきます。この「いたずら」がなかなか強烈で、たいへんな悪たれぶり。大人たちが眉をひそめるような行動が次から次へと続きます。こんな絵本、教育上よろしくないなんて、敬遠されるくらいかも。
しかし、しかし、この絵本のすさまじいところは、実は二人の「いたずら」ではありません。あっ!と驚く、まさにまさに驚愕の結末が待っています。呆気にとられること間違いなし! いや、これほど凄みのあるブラックな絵本は、あまり他にないと思います。
一応、「いたずらなんかしたらダメだよ」と、教育的なメッセージが込められていると言えなくもない……かな? というか、そんなありきたりの展開、常識の範囲はとっくに超えちゃってます。
やっぱりねー、子どもの「いたずら」なんて、ある意味、かわいいもの。本当に恐いのは大人なんですね。あるいは、狭い社会の怖ろしさが描き出されていると言えるかも。
物語は壮絶と言っていいのですが、絵はとても軽快でユーモラス。そのギャップがまた面白いです。また、訳文がリズミカルでとても読みやすい。
あと、気になるのは主人公二人の家族。ぜんぜん似てないので、兄弟ではなさそうですが、しかし、親はどうしたんだろうか。孤児という設定なのかな。謎です。
この絵本、うちの子どももさすがに驚いていました。「えーっ!」。いや、父ちゃんもびっくりだよ、ホント。うーむ、読んでよかったんだろうかと若干の危惧を覚えつつ、とはいえ、ぜんぜん屈託のない我が子がなんとなく頼もしく思えたのでした(なんだか分かりませんが^^;)。
原書“Max und Moritz”の刊行は1865年。140年以上前の絵本なんですね。でも、それほど古さは感じません。むしろ、このブラックな趣きは現代的と言えるかも。
▼ヴィルヘルム・ブッシュ/上田真而子 訳『マクスとモーリツのいたずら』岩波書店、1986年、[印刷:精興社、製本:三水舎]