「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻。タイトルからも伺えるとおり、探偵ものの絵本です。全ページに絵が付いているので、絵本といえば絵本ですが、頁数が少し多めなので、絵本と児童文学の中間のような感じです。
主人公は9歳の少年、「ネート」。彼は「めいたんてい」で、様々な事件を解決してきました。今回、「ネート」は、友達の「アニー」が描いたイヌの絵を探します。「アニー」は、家で飼っているイヌの「ファング」の絵を描いて机の上に出しておいたのですが、いつの間にかなくなってしまったのです。その絵を見たのは、なかよしの「ロザモンド」、弟の「ハリー」、そしてイヌの「ファング」だけ。「ネート」は「アニー」とともに、一人ひとりあたっていきます。
いやー、これは面白い!! うちの子どもも大満足の一冊です。犯人はいったい誰なのか、物語に引き込まれます。もちろん、恐いことはまったくありませんが、展開の妙味はなかなかのもの。
とくに最後の謎解きが絵本ならでは仕掛けになっていて、素晴らしいです。うちの子どもも「あっ!」と声を上げていました。おもしろいよねー、これ。
それから、登場するキャラクターがまた魅力的。大人は一人も出てきません。それとなく存在が示唆されるのみで、子どもたちとイヌだけでお話は進んでいきます。で、この子どもたちが、かなり個性豊か。というか、言ってしまえば少々ヘンなんですね。品行方正、健康優良児とはちょっと違う、それがまた興味深い。
主人公の「ネート」は「めいたんてい」ですから、もちろん、切れ味抜群、沈着冷静、頭脳明晰なんですが、と同時に、独得の個性があります。なんといえばよいか、つまり、ハードボイルド。最初の登場シーンからしてクールです。
「しごとは いつも ひとりで します」し、「しごとちゅう」は笑ったりしませんし、「アニー」へのほのかな好意(?)も素直に表したりなんかしません。会話もどことなくウィットに富んでいますし、ラスト、雨の後ろ姿には私もちょっとしびれました(^^;)。
その一方で、大好物のパンケーキへのこだわりが妙に可笑しい。着ている服装も、探偵ものの定番。だぶだぶの格好は、なんだか大人子どもでかわいいです。
巻末には訳者の光吉夏弥さんの「あとがき」があり、シリーズの紹介と作者の簡単なプロフィールも記されていました。原書“Nate the Great”の刊行は1972年。ストーリーも絵もまったく古さを感じさせません。アメリカでは、ペーパーバックスにもなったヒットシリーズだそうですが、納得です。
この絵本、うちの子どもも私も、たいへん気に入ったので、ぜひシリーズの他の巻を読んでいきたいと思います。
▼マージョリー・ワインマン・シャーマット 文/マーク・シマント 絵/光吉夏弥 訳『ぼくはめいたんてい1 きえた犬のえ』大日本図書、1982年、[印刷所:株式会社精興社、製本所:株式会社若林製本工場]