暑い夏、4百万匹のハチの大群に襲われた村が、みんで協力してハチを退治するお話。どうやって退治するかがポイントです。荒唐無稽、驚きの大作戦が繰り広げられます。どんな作戦なのかというと、ヒントはタイトル。うちの子どもも大受けでした。
ハチ一匹一匹は小さきものですが、それを退治するためにとんでもなく巨大なものが作り出されるわけで、この対比が面白い。どこからこんな発想が出てきたのかというくらいのスケールの大きさなのですが、なんだか怪獣映画を見ているような趣きもあります。
考えてみると、怪獣やウルトラマンなど、巨大なものって、それ自体、魅力があるなあと思います。絵本のモチーフとしても、絵にしたときのインパクトと面白さは格別です。どでかいものをテーマにした絵本って、他にもいろいろあった気がします。
なんとなく思うのですが、巨大なものを中心にすえたとき、たぶん、二つの展開がある気がします。一つは、たとえば怪獣ものがそうですが、人間にはどうしようもない力、人間の小ささやか弱さが表される場合。ばんばん町が破壊され、いくら抵抗しても勝てないという展開ですね。もう一つは、その巨大なものが人間の生み出したものであり、だから、人間の力のすごさが表現される場合。まあ、ちょっと考えすぎかもしれませんが、両方がミックスされることも多い気がします。
で、この絵本は、どちらかというと後者かな。村人たちみんなで協力し合って、ばかでかいものを作りあげ、ハチを退治していくわけです。その制作プロセスは豪快そのもの。ヘンな言い方ですが、なんだか清々しくなってきます。村の大問題に取り組むわけですが、くそまじめではなくて、快楽的なんですね。みんな楽しそうに作業をしています。
一番楽しんでいるのは、もちろん、パン屋のおじさんとお百姓さん。二人とも大活躍です。とくにお百姓さんは、帽子に隠れて顔の表情がぜんぜん見えないのですが、たぶん、最高に面白がっていたんじゃないかなと思います。
あと、よーく見ると、画面の端々にユーモラスな描写が見つかります。うちの子どもはヘリコプターに反応していました。それから、最初の方のページに登場する3人のおじさん。他のページにも小さく描かれていて、面白い。村人たちの作戦とは別にずっと戦っています(^^;)。他にもサイドストーリーが描き込まれているかもしれません。
裏表紙には3匹のハチ。「3匹」というのがポイントですね。これがほんとの結末かな。
原書“The Giant Jam Sandwich”の刊行は1972年。
▼ジョン・ヴァーノン・ロード/安西徹雄 訳『ジャイアント・ジャム・サンド』アリス館、1987年、[印刷・製本:大村印刷]