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荒井良二さんと野村誠さんのワークショップ

 以前のエントリーで触れた、荒井良二さんと野村誠さんのワークショップ、
子どもプロジェクト:九州大学ユーザーサイエンス機構に案内が出ていました。子どもプロジェクト: 荒井良二+野村誠 ワークショップ参加者募集!です。

 ワークショップの期日は8月1日から3日まで。なんと3日間連続です。そのため、募集参加者も3日間とも参加できる小学生とのこと。定員は30名ですから、少数限定ですね。

 これは、かなり中身の濃いワークショップになるのではないでしょうか。詳細はまだ発表になっていませんが、絵を描くことと音を奏でること、二つの表現形態の相互作用がテーマになるのかな。非常に楽しく、またワクワクするような場が生まれそうです。

 例のNHK教育の「あいのて」効果で応募が殺到しそうな気がしますが、近場の方はぜひ応募されはいかがでしょう。

荒井良二さんによる「あいのて」ライブペインティング

 以前のエントリー、「絵本を知る: 荒井良二さんがNHK教育「あいのて」の美術を担当」で、荒井良二さんがNHK教育「あいのて」のスタジオセットをライブペインティングしたことに触れました。このときの様子が、「あいのて」の音楽監修を務められている野村誠さんのブログに書かれています。野村誠の作曲日記:[コラボ][子ども]子どもプロジェクトwith荒井良二さんです。

 読んでいて、ちょっと感動しました。ライブペインティングは、なんと10時間(!)にもわたって続き、その間、自然に野村さんたちとの「セッション」が生まれたそうです。ぜひ、リンク先の野村さんの文章を読んでみてください。美術と音楽という異なる表現様式でありながら、その相互作用から思いがけない何かが生まれてくる……すごいなあと思います。

 野村さんのエントリーの冒頭には、8月のワークショップ(?)のことが書かれています。福岡で、荒井さんと野村さんが一緒になり、子どもたちと何かを作るそうです。主催は九州大学ユーザーサイエンス機構の子どもプロジェクト。サイトは子どもプロジェクト:九州大学ユーザーサイエンス機構です。

 荒井さんと野村さんのワークショップ、どんな内容かなあ。できたら、ちょっと見に行きたいです。とはいえ、仕事がなあ……(涙)

荒井良二さんがNHK教育「あいのて」の美術を担当

 4月から始まったNHK教育の幼児向けの新番組「あいのて」、荒井良二さんが美術を担当しています。番組のサイトは、幼稚園・保育所番組のひろば|あいのて

 サイトには荒井さんの名前は見あたりませんが、ちゃんとクレジットが流れていました。というか、実際に番組を見れば一目瞭然、最初のタイトルバックからして、まさに荒井さんの絵です。

 スタジオのセットもすべて、荒井さんならではの軽やかでカラフルな色彩が踊っています。もしかすると、登場するキャラクターの衣装デザインにも荒井さんが関わっているかもしれません。なんだかそんな気がします。

 荒井良二さんのマネージメント(?)を担当されているRights Management Inc.のブログ、くうねるしごとの3月31日付けのエントリー、くうねるしごと: 「あいのて」のスタジオセットメイキング番組明日放送によると、スタジオセットは、荒井さんがライブペインティングで作られたそうです。そのメイキング番組も、4月1日と8日にNHK教育で放送されたとのこと。がーん、見逃しましたー。非常に残念です。かなり貴重な映像ですよね。うーん、再放送してほしいなあ。

 それはともかく、サイトの説明によると、「あいのて」は幼稚園・保育所番組の一つ。身の回りの様々な音(ノイズ)に“あいのて”を入れ楽しむことをテーマにしているようです。いわば音楽のプロトタイプですね。実際の番組内容は、非常にユニーク。かなり可笑しいです。とくに受けたのは、「ワニバレエ」。ナンセンスかつシュールな歌と踊りです。

 番組の中心になっているのは、野村誠さんという作曲家の方。ウェブサイトは、野村誠のページ。即興演奏や幼児の音楽遊びについての本も出版されています。そのうち、読んでみたいと思いました。

 また、ブログ、野村誠の作曲日記も開設されていて、活発に活動されている様子がうかがえます。4月12日付けのエントリーには、「あいのて」の第1回目の放送について簡単なコメントが記されているのですが、テレビのスピーカーの音質の問題など、細部にまで気を配って番組を作られている様子が分かります。

 たしか、荒井良二さんも音楽活動をされていたと思うのですが、もしかすると野村さんとは知り合いだったりして……。

荒井良二さんとリンドグレン記念文学賞(その3)

 「その3」ということで、今回は、2つのクリップ情報を簡単に紹介したいと思います。

 一つ目は、スウェーデンに行かれる前の荒井さんへのインタビュー。毎日新聞の記事、MSN-Mainichi INTERACTIVE 話題です。記事の日付は2005年5月18日。

 受賞の連絡がいきなり携帯電話にあったこと、小学生のとき絵に目覚めたこと、子ども向けのワークショップのことなどが語られています。

 とくにワークショップに関する次の言葉が印象深いです。

「子供を手のひらであやすようなことはしたくない。全身でぶつかりたい。僕の絵を『うまい、上手』じゃなく『自分にも描ける』って思わせたい」。

 子どもを子ども扱いするのではなく、一人の独立した個人として捉えるということ。だから、変に優しくしたり受けをねらったりしないということ。これは、絵のワークショップだけでなく、私たち大人が子どもに接するときに常に大事な点なんじゃないかなと思いました。

 あと、「絵本の時間は短い」という言葉も、たしかにその通りだなあ。うちの子どもたちと、あとどのくらい一緒に絵本が読めるんだろう? なんだか、いま子どもたちと共有している時間が本当に貴重に思えてきます。

 二つ目は、帰国後の最初(?)のイベント情報です。青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山 にて、6月4日(土)に荒井さんのトークショーが開かれます。詳細は青山ブックセンター イベント情報に掲載されています。これは新刊絵本の刊行にも合わせたもののようです。

 たぶん、あちこちから講演やワークショップの依頼が荒井さんに殺到しているんじゃないかな。しばらくはお忙しいかもしれませんね。

荒井良二さんとリンドグレン記念文学賞(その2)

 荒井さんの話題が続きますが(^^;)、今日は、地元新聞の人欄に荒井良二さんが登場していました。これも共同通信社の配信かもしれません。

 今回の受賞にさいし、スウェーデンのストックホルムで子どもたちと開いたワークショップが、取り上げられています。また、絵との出会いや絵本を志したときの経緯が記されていました。荒井さんは大学一年のときにアメリカの絵本に出会い「やりたいこと」が分かったのだそうです。

 少し引用したいと思います。

小学校一年生の時、学校に行かず、家で絵ばかり描いていた。親や先生に理由を問い詰められ、自分も分からなかった当時の気持ちがよみがえる。「今はかつての六歳の僕に元気を出せよと言いながら、そのままでいいんだよ、ゆっくりでいいんだよと伝えたい」

 実は去年の夏、荒井さんのトーク&サイン会に参加しました。そのとき、荒井さんは、まわりを走り回りマイクにいたずらばかりしている子どもたちを、なんとも自然に受け入れていたことを思い出します。お話が終わって、開場の奥にあったホワイトボードに落書きをしている子どもたちに荒井さんはすっと入っていかれ、一緒に絵を描いていました。荒井さんの絵本が発しているメッセージは、荒井さんのお人柄にも表れているように感じました。このトーク&サイン会のときのことは、近いうちに、なんとか記事にしたいと思います。

 ところで、今回の受賞では、式典以外にもいろいろお忙しかったようです。アストリッド・リンドグレン記念文学賞のサイト Astrid Lindgren Memorial Awardには、受賞者ウィークの案内が掲載されていました。Prize winner’s week 22-28 Mayです。荒井さん関連のところを少し抜き書きしてみます。

  • 5月22日:午後にjunibackenでサイン会
  • 5月23日:午前は記者会見、夕方は国立図書館で講演
  • 5月24日:午前は子どもたちとワークショップ、午後は芸術大学Konstfackで講演
  • 5月25日:午前は子どもたちとストーリー・セッション、夕方から授賞式とレセプション
  • 5月26日:夕方から国際図書館で講演

 かなりのハードスケジュール。だいぶお疲れかもしれませんね。スウェーデンの人たちがどんなふうに荒井さんの講演や絵本に反応されたのか、ちょっと知りたいです。でも、たぶんスウェーデンでも、荒井さんはごく自然に子どもたちのなかに入っていかれたんじゃないかなと思います。

荒井良二さんとリンドグレン記念文学賞(その1)

 昨日、リンクを張った、アストリッド・リンドグレン記念文学賞のサイト Astrid Lindgren Memorial Awardですが、いろいろ見ていたら、日本語のプレスリリースが公開されていました。Press release in Japaneseです。左のページから日本語のPDFファイルにリンクされています。このプレスリリースは3月16日付け。今回受賞した荒井さんとイギリスのフィリップ・プルマンさんの紹介、受賞の理由、アストリッド・リンドグレン記念文学賞の説明、などが書かれていました。

 なかなかおもしろいと思うので、荒井さんの受賞理由の文章を引用します。

「荒井良二(日本)は、斬新、大胆、気まぐれ、全く独自の発光力を持つ絵本画家である。彼の絵本は、子供と大人に同時にアピールする暖かさを発散し、茶目っ気のある喜びと奔放な自然さがある。絵の具は、彼の手を経てあたかも音楽の流れのように常に新しいアドベンチャーへ飛び出し、子供達に自分で描き、語らせたがる。子供達にとって、描くこと自体が詩的で偽りのないストーリーアートである」。

 「独自の発光力を持つ絵本画家」……、うーむ、まさにその通りですね。この「発光力」という言い回しは、いかにも翻訳調ですが、しかし、荒井さんの絵本のかなり重要なところを捉えている気がします。というか、実際、荒井さんの絵はまさに「発光」していますよね。あと、「音楽の流れのように」というのも、なんだか納得できます。

 同じく上記のページからリンクされているPDFファイル(日本語)では、荒井さんの作品に関するかなり詳しい説明、というかレビューが掲載されています。翻訳調の堅い文章ですが、こちらも興味深いです。

 たとえば、次のような理解は、かなり当たっていて、おもしろいと思います。

荒井良二の絵の世界には、あり得ないことがない。そこには、都会生活のせわしい表現と森の安らぎと海の穏やかさとが同居している。

 これらのプレスリリースを読んでみると、今回の受賞では、荒井さんの絵本がかなりきちんと評価されていることが分かります。

 アストリッド・リンドグレン記念文学賞のサイトには他にもいろいろ情報が掲載されているので、少しずつ見ていって、そのうち紹介できたらと思います。

荒井良二さん、アストリッド・リンドグレン記念文学賞の授賞式

 共同通信社配信の記事で、荒井良二さんが受賞したアストリッド・リンドグレン記念文学賞授賞式の様子が伝えられています。

スウェーデンの世界的な児童文学賞、アストリッド・リンドグレン記念文学賞の授賞式が25日、ストックホルムで行われ、絵本作家の荒井良二さん(48)=東京都在住、山形市出身=と英国の児童作家フィリップ・プルマンさんに賞状と賞金各250万クローナ(約3700万円)が贈られた。

 笑顔の荒井さんがビクトリア王女と握手している写真も付いていました。あのぼさぼさ髪に無精ヒゲと丸メガネ、割とちゃんとした服装ですが、よく見ると、白のシャツがズボンからはみ出してますね(^^;)。なんか、いいなー。とても荒井さんらしい気がします。

 それで、少し調べてみたら、アストリッド・リンドグレン記念文学賞のサイトが見つかりました。Astrid Lindgren Memorial Awardです。スウェーデン語と英語の両方で開設されています。

 荒井さんのプロフィールやインタビュー、絵本の紹介や著作リストもあり、かなり充実した内容。荒井さんのセルフポートレートは、あの鮮やかな色彩による自画像です。

 英語はなかなか厳しいのですが、どんなふうに評価されているのか、ちょっと知りたいですね。そのうち読んでみようと思います。

 ともあれ、荒井さん、本当におめでとうございます。

長谷川摂子/荒井良二『へっこきあねさ』

 これはおもしろい! 大工の「あんにゃ」と「ばあさ」の二人暮らしの家に嫁に来た「あねさ」、実はたいへんな屁の持ち主だったという物語。

 まずは音がすごい。品のない話で恐縮ですが、「ぷっ」とか「ぶっ」とか「ぶぶっ」とか、そんな半端なものではありません。

どっばーん!
だっばーん!
でっぼーん!

辺り一面に響き渡る、文字通り破格の音なのです。たとえば大砲をどかーんと撃つような感じでしょうか。

 活字で組まれた文章のなかで、この屁の音だけ、手書き文字。しかも、だいぶ大きく書かれています。音の豪快さがよく伝わってきます。また、声に出してみると、これが実に開放的。うちの子どもと一緒に読むとき、かなり気合いを入れて言ってみました。うーむ、楽しいぞ!(^^;)

 さらに、屁の「かぜ」が強烈。「ばあさ」は天井まで吹っ飛ばされ、柿の木にみまえば実が一つ残らず落ちてくるし、渡し船は川の向こうまで流されます。いやはや、すさまじい。というか、たいへん便利な屁です(^^;)。

 そして、何よりも驚いたのが、この「あねさ」、屁をただぶっ放すだけではないこと。こ、これは、すごすぎる! 何がすごいのかは、ぜひ読んでみて下さい。まさに驚愕、呆気にとられること間違いなしです。

 荒井さんの絵は、「あねさ」の描き方が秀逸。だってね、気立てがよさそうな可愛い娘さんが、着物の裾をまくって、白いおしりを天に突き出し、どっかーんと屁をこいているのです。絵本のなかでこんな描写、古今東西、はじめてではないでしょうか。いや、冗談抜きで、すばらしいと思います。ある意味、絵本の世界を一つ広げたと言える気がします。

 屁そのものは、当然ながら(?)主に黄色を使って描かれているのですが、汚いということはありません。少し蛍光の入った透明感のある黄色です。この彩色は、あっけらかんとした大らかな物語によく合っていると思いました。

 ところで、屁、といえば、臭いはいったいどうなのか? 絵をよーく見ると、どうやら、やっぱり臭いようです(^^;)。

 うちの子どもは、「あねさ」の豪快なおならに、ゲラゲラ、ウヒウヒ、大受けしていました。この絵本、下ネタはダメという人には向きませんが、そうでなければ、おすすめです。

▼長谷川摂子 文/荒井良二 絵『へっこきあねさ』岩波書店、2004年、[装丁:桂川潤]

北村想/荒井良二『まっくろけ』

 これはおもしろい! 小学二年生の「たっくん」の家のとなりには「グウさん」という芸術家が住んでいて、二人は友だちです。「グウさん」の仕事は墨で絵を書く仕事。ある日、「グウさん」は2日ばかり外出することになり、「たっくん」は「グウさん」の家で絵を描いていてよいことになります。ただ、一つだけ守らなくてはならないのは、棚の上にあるビンの墨だけは使ってはいけないということ。ところが、やってはいけないと言われると、どうしてもやってみたくなるのが人情。「たっくん」がその墨を使って描いてみると、なんと墨を少しでもつけると、あっというまに何でも真っ黒けになってしまう、という物語。

 最初はそのへんの紙や本を真っ黒けにしていた「たっくん」ですが、だんだんエスカレートしていき、電信柱や赤いクルマ、ガミガミじいさん、いじめっこまで、墨をつけ真っ黒にしていきます。

 最初は「ふーん」って感じで聞いていたうちの子どもですが、このあたりまで来ると、だんだんおもしろくなってきたようで、身を乗り出してきました。いろんなものが真っ黒になるところでは大受け。

 「たっくん」の真っ黒けはなお止まらず、ついにはママまで真っ黒けにされてしまいます。ところが、「たっくん」、ころんで地面で墨のビンを割ってしまうと、「たっくん」も含めてすべて何もかもが真っ黒け。

 いやー、本当にすごい! 実にアナーキーな展開。すべてを黒く塗れ!というわけですね。破壊的と言えば破壊的。でも、ここまでくると逆にすがすがしいかも。そういえば、ロックソングにそんなのがあった気がします。

 なかでも絵本を真っ黒にしているところが強烈。引用します。

たっくんはお家にかえると、このあいだママがかってくれた絵本をだしてきた。『クマちゃんのジャム』っていうつまんない絵本なんだ。クマが森のくだものでジャムをつくりましたっていうおはなしの、それだけの本。この本をいつも、ねるときにママがよんできかせてくれるんだけど、もう、たいくつでたいくつで。

 というわけで、『クマちゃんのジャム』も真っ黒にされてしまいます。いやはや。親がよかれと思って読んで聞かせても、子どもにとってはとてつもなく退屈……ありがちですね。独りよがりな読み聞かせなんか、黒くしてしまえ! と一刀両断です。いや、私も反省しないとダメかもしれません。

 ところで、この絵本は文章もなかなかおもしろいと思いました。こちらに語りかけてくるような表現なんですね。それも客観的な語りではなく、物語の登場人物とは違う第三者のキャラクターが文章中にはっきりと現れています。そのためか、子どもに読んでいるとだんだんのってきます。いわばその第三者を演じるような感じかなと思います。

 同じことは、物語の終わり方にも言えます。途中でいったんブレイクが入って「おしまい」になってしまいます。そのあと「おまけ」としてやっとハッピーエンド。フェイントをかまされたというか、これも語り手の作為の現れと言え、おもしろい趣向です。

 絵は、やはり黒の色が鮮烈。なんというか、深みのある黒。もしかすると本当に墨を使って描かれているのかもしれません。「たっくん」があちこちをスミで真っ黒にしはじめると、文章が書いてある見開き左ページも端の方が黒く彩色されます。どんどん黒が浸食してくるかのよう。

 で、一番すごいのが、すべてが真っ黒けになってしまった画面。泣き出した「たっくん」の涙も真っ黒。真っ黒な地上に対し、画面上部の青空と黄色い太陽がなんとも鮮やかです。そして、めくった次のページもすごい! 雨によって墨が少し流されている様子が描かれています。いや、どろどろと言えばどろどろなんですが、陰影のある黒が印象的。さらに、その次のおしまいのページもおもしろい。雨に流されてやっと元通りになった地上が淡く輝く色合いで描かれています。中央下のネズミ色、これは雨に溶けた墨の名残かも。この終わりの数ページの色彩の変化は本当にすばらしいと思いました。

 以前、今江祥智さんと長新太さんが組んだ「黒の絵本」三部作のなかの2冊(『なんだったかな』と『よる わたしのおともだち』)を読んだのですが、こちらの『まっくろけ』もまさに「黒の絵本」。長さんの黒は光り輝く漆黒でしたが、荒井さんの黒は深みと厚みのある黒といったところでしょうか。なにせ墨ですから、なんだか重く粘りがあるような感じです。これもまた独特の美しさがあります。

 ちなみに、うちの子どもは読み終えたあと「家の壁を真っ黒にしたい!」と言っていました。お父さんやお母さんは真っ黒にしないそうです。はあ、よかったあ(^^;)。

 この絵本、おすすめです。

▼北村想 作/荒井良二 絵『まっくろけ』小峰書店、2004年、[ブックデザイン:高橋雅之]

穂高順也/荒井良二『さるのせんせいとへびのかんごふさん』

 動物村に新しくできた病院、「さるのせんせい」と「へびのかんごふさん」が開きました。「へびのかんごふさん」は清楚でかわいく、「さるのせんせい」も目が笑っていてやさしそう。ところが、その診察と治療がすごいのなんの、ぶっとんでます。

 とくに「へびのかんごふさん」の活躍ぶりに、唖然、呆然、間違いなし。口あんぐりのあとは何も考えずに大笑いです。

 我が家で一番うけていたのは、薬を作るところと注射の場面。「ぶた」や「ぞう」の治療もすごかった。最後の最後まで大活躍していて、ここまでやってくれると、なんだかすがすがしくなってきます。

 一見むちゃくちゃなのですが、でも考えてみると筋はちゃんと通っているんですね。論理的といえば論理的。それが逆におかしさを増しています。また、お医者さんらしい妙に冷静なセリフも笑えます。

 絵はとてもカラフルで楽しい雰囲気。よく見ると、場面によっては花がぼんやりと顔になっていたり、見ようによっては少し不気味なところもあります。でも、それも全体のアクセントになっています。

 ところで、今日の記事ではこの絵本の何がそんなにおかしいのか、ぜんぜん具体的に書いてませんが、これはぜひ一度、読んでみて下さい。種明かしをしたらつまらないなと思いました。

▼穂高順也 文/荒井良二 絵『さるのせんせいとへびのかんごふさん』ビリケン出版、1999年