岸田衿子/白根美代子『おいしいもの つくろう』

 いわばお料理絵本。動物物語のなかで、朝食、昼食、夕食の計8つの料理がそのレシピとともに紹介されています。子どもだけで作るのは無理ですが、大人といっしょに作って楽しめるかも。おいしそうな料理です。

▼岸田衿子 さく/白根美代子 え『おいしいもの つくろう』「こどものとも 年中向き」1994年10月号(通巻103号)、福音館書店、1994年

内田莉莎子/小野かおる『くまのしっぽ』

 ベラルーシの昔話をもとにした絵本。しっぽを持っていなかった動物たちが、唯一しっぽを持つライオンの王様からしっぽをもらうという物語。クマのしっぽが短い理由があんなことだったとは! たくさんのしっぽが山のように積まれた画面は、なかなかシュール。

▼内田莉莎子 訳/小野かおる 絵『くまのしっぽ』「こどものとも 年中向き」1996年9月号(通巻126号)、福音館書店、1996年

吉沢葉子/斎藤隆夫『おおぐいひょうたん』

 西アフリカの昔話をもとにした絵本。ひょうたんに化けて肉を食う魔物「おおぐいひょうたん」が出てきます。はじめは、ひょうたんといっしょに遊ぶという楽しい雰囲気、ところが途中から、魔物に追いかけられる恐ろしい物語に展開します。うちの子どもはあまり恐くなかったようですが、実は私はびっくりしました。でも、おもしろいです。斎藤隆夫さんの絵もすばらしく、この絵本、おすすめです。

▼吉沢葉子 再話/斎藤隆夫 絵『おおぐいひょうたん』「こどものとも」1999年1月号(通巻514号)、福音館書店、1999年

神沢利子/片山健『いいことって どんなこと』

 《こどものとも》傑作集の一冊。雪国に訪れた最初の春の息吹を描いた絵本です。同じモチーフの絵本としては『はなをくんくん』が有名と思います。『はなをくんくん』は躍動感あふれる歓喜に満ちた描写でしたが、『いいことって どんなこと』はたいへん静謐な描写になっており対照的だなと思いました。じっさいに雪国を知る者としては、『いいことって どんなこと』の方がしっくりきます。主人公の女の子の表情(あるいは無表情)がよいです。この絵本、おすすめです。

▼神沢利子 さく/片山健 え『いいことって どんなこと』福音館書店、1993年

香山美子/遠藤てるよ『ねずみきょう』

 「日本の民話えほん」シリーズの1冊。「じいさま」を亡くした「ばあさま」、一晩泊めてあげた偽物のお坊さんにでたらめなお経を習います。この「ねずみきょう」で知らないうちに泥棒を追い払うという物語。おもしろいのは、お経を上げる画面で口から煙のようなものが描かれるところ。なんだか不思議な力がありそうです。

▼香山美子 文/遠藤てるよ 画『ねずみきょう』教育画劇、2003年

佐々木マキ『まちには いろんな かおが いて』

 マンホールのふた、家や工場の壁、信号機、遊具などなど、よく見ると「顔」にみえてくるものをモチーフにした写真絵本です。笑っている顔、考えている顔、困っている顔、とぼけている顔……いろんな表情をしていて、おもしろいです。佐々木マキさんは写真絵本も手がけるのですね。はじめて知りました。この絵本、おすすめです。

▼佐々木マキ『まちには いろんな かおが いて』「こどものとも」1997年9月号(通巻498号)、福音館書店、1997年

市川宣子/矢吹申彦『きょうりゅうが すわっていた』

 6歳のバースディにお父さんが子どもに話す「きみが うまれたときの はなし」。恐竜(ブロントサウルス?)がまちに現れ、その恐竜の赤ちゃんと同時に「きみ」が生まれたという不思議な物語です。みたところ、木の板(?)のようなものに絵が描かれていて、独特の風合いがあります。

▼市川宣子 作/矢吹申彦 絵『きょうりゅうが すわっていた』「こどものとも」2000年12月号(通巻537号)、福音館書店、2000年

甲斐信枝『あしながばち』

 1984年に刊行された「特製版かがくのとも」の一冊。あしながばちの子育ての様子がていねいに描き出されています。非常におもしろい。はじめて知ったことがたくさんありました。子どもはもちろん、大人も十分、楽しめます。とくに感銘を受けたのが、あしながばちの生と死。累々たる死が生とともにあることに厳粛な気持ちになります。裏表紙も必見です。絵本の表現力は本当にすごいなとあらためて思いました。この絵本、おすすめです。

▼甲斐信枝『あしながばち』福音館書店、1975年

マーゴット・ツェマック『ありがたいこってす!』

 ユダヤの民話をモチーフにした絵本。9人家族で小さな家に住んでいる男は、家のなかがあまりにせまくて、うるさくけんかばかりしていることにがまんできなくなり、ラビのところに相談に行きます。ラビの意外なアドバイスとその結末がおもしろいです。気になったのは主人公の言葉が少しなまっているところ。原文がそうなのかもしれませんが、類型的すぎるというか、違和感がありました。

▼マーゴット・ツェマック/わたなべ しげお 訳『ありがたいこってす!』童話館、1994年

なかえよしを/上野紀子『それいけ!ねずみくんのチョッキ』

 おかあさんが編んでくれたおそろいのチョッキを「ねみちゃん」に届けようとする「ねずみくん」、ところがネコに追いかけられます。その追いかけっこと「ねずみくん」を助ける動物たちの様子を、仕掛け絵本で描いています。紙面を広く効果的に活用していて、おもしろいです。

▼なかえよしを 作/上野紀子 絵『それいけ!ねずみくんのチョッキ』ポプラ社、1997年