スザンナ・グレッツ『雨の日のうちゅうせんごっこ』

 「テディベアのえほん」シリーズの1冊。5匹のテディベアの雨の日の一日が描かれています。5匹それぞれのキャラクターがはっきりしていて、また色で区別されるところは、「バーバパパ」シリーズなどとも共通。うちの子どもには、ひたすら食べることばかり考えている「ウィリアム」がうけていました。私にとっておもしろかったのは、間違いなく活字中毒者の「チャールズ」。朝ご飯も食べずに、コーンフレークの箱の文字を読んでいます。いや、身につまされます(^^;)。

▼スザンナ・グレッツ/各務三郎 訳『雨の日のうちゅうせんごっこ』岩崎書店、1984年

アネット・チゾン、タラス・テイラー『バーバパパのなつやすみ』

 「講談社のバーバパパえほん」シリーズの1冊。夏休みを南の島ですごすバーバパパ一家。へーっと思ったのは、バーバパパの子どもたちが大げんかをするところ。けんかもするんですね。これまで、とても平和的で仲がいいという印象があったので、意外でした。ペンキの色をきっかけにして仲直りするのも、おもしろいです。

▼アネット・チゾン、タラス・テイラー さく/やましたはるお やく『バーバパパのなつやすみ』講談社、1995年

イングリとエドガー・パーリン・ドーレア『ひよこのかずはかぞえるな』

 家のにわとりが生んだ卵をまちに売りに行く「おばさん」の物語。卵を売ってどうしようかと、道々、取らぬ狸の皮算用。「おばさん」の夢はどんどんふくらんでいきます。その暴走ぶりが実におかしい。合理的な計算とファンタジーが同居しています。夢の結末もなかなか味があります。表紙と裏表紙の見返しもウィットに富んでいて、この絵本、おすすめです。

▼イングリとエドガー・パーリン・ドーレア さく/せた・ていじ 訳『ひよこのかずはかぞえるな』福音館書店、1978年

V.グロツェル/G.スネギリョフ/松谷さやか/高頭祥八『むらいちばんのりょうしアイパナナ』

 アジア・エスキモーの昔話をもとにした絵本。おばあさんと二人暮らしの男の子、アイパナナ、食べ物がなくなったある冬の日、ネズミの母親の魔法(?)でたくましい青年に成長します。アジア・エスキモーの衣服や家が描かれていて、興味深いです。全体的に紙面の白が強調されるような彩色で、冬のキーンとした寒さが感じられます。

▼V.グロツェル/G.スネギリョフ 再話/松谷さやか 文/高頭祥八 画『むらいちばんのりょうしアイバナナ』「こどものとも 年中向き」1997年2月号(通巻131号)、福音館書店、1997年

片山健『コッコさん おはよう』

 片山健さんのコッコさんシリーズの1冊。もとは1986年発行、うちでは1995年発行の第2刷を持っています。コッコさんシリーズは多くが単行本になっていますが、これはまだ単行本化されていないようです。

 この絵本で描かれているのは、朝の訪れ。ニワトリや森の鳥たちが目覚め、空の色が変わっていき、「おとなりの おばあちゃん」が起き、「おにいちゃん」も起き、そして最後に「コッコさん」が起きます。朝のゆっくりとした変化が、繊細な彩色で描き出されています。空の色の変化、木々の色の変化が、たいへん美しい。カーテンのすきまから入ってくる光の描写もすばらしいです。

 「コッコさん」と「おにいちゃん」の寝相は、うちの子どもみたいでかわいいなと思いました(親ばか^^;)。この絵本、おすすめです。

▼片山健『コッコさん おはよう』「こどものとも 年中向き」1995年6月号(通巻111号)、福音館書店、1995年

おざわとしお/佐藤芙美『かぜのかみとこども』

 日本の昔話をもとにした絵本。きまぐれな風の神さまにおいてけぼりにされてしまった子どもたちの物語。最後は家に戻ることができます。おもしろいのは、風の神さまが3人登場するのですが、一見ふつうの人間のように描かれていて、輪郭が白や他の色で縁取られているところ。なんとなく神秘的な雰囲気がただよっています。

▼おざわとしお 再話/佐藤芙美 絵『かぜのかみとこども』「こどものとも」1999年10月号(通巻523号)、福音館書店、1999年

斎藤孝/つちだのぶこ『えんにち奇想天外』

 斎藤孝さんとつちだのぶこさんが組んだ「声にだす ことばえほん」、『おっと合点承知之助』に続く第2弾。今回は、おじいちゃんと子どもたちが縁日に出かけるというストーリーのなか四字熟語で会話が進んでいきます。つちださんの絵は細部にわたってユーモラス。うちの子どもは「神出鬼没」の忍者を探して楽しんでいました。おもしろいし、たぶん売れるのでしょうが、でも私としては、文も絵もつちださんが描いた絵本を読みたいです(^^;)。

▼斎藤孝 文/つちだのぶこ 絵『えんにち奇想天外』ほるぷ出版、2004年

武田正/梶山俊夫『さるとびっき』

 山形の昔話をもとにした絵本。原話の語り手もおられて、山形県小国在住の川崎さんという方だそうです。最初は1982年に刊行され、その後、「こどものとも(年中向き)」1993年10月号で第2刷が発行されました。うちで持っているのはこの第2刷。「さる」とカエルの「びっき」が田んぼを作るというストーリーで、なぜサルのほっぺたとおしりが赤いのか、その由来がおもしろく語られています。

 物語はもちろん、梶山さんの絵がまたすばらしい。シンプルな線がユーモラスに「さる」と「びっき」を描き出し、肌色の地の紙面に限定された色使いで季節の移り変わりが表現されています。この絵本、おすすめです。

▼武田正 再話/梶山俊夫 画『さるとびっき』「こどものとも(年中向き)」福音館書店、1982年

筒井頼子/林明子『あさえとちいさいいもうと』

 この絵本、最初は1979年に刊行され、うちで持っているのは2001年に発行された第3刷です。「ちいさいいもうと」の「あやちゃん」といっしょにお留守番をする「あさえ」。ところが、家の前で遊んでいるうちに「あやちゃん」がいなくなってしまいます。「あさえ」はあちこち探すのですが……といったストーリー。

 林さんの絵は、小さな子どもの表情やしぐさを繊細に的確に描写していて、ため息が出ます。絵の視線はほぼ「あさえ」の目の高さにおかれ、画面からはみ出すトラックや塀や大人の大きさが、「あさえ」の不安を表しています。そして「あやちゃん」を懸命に探す「あさえ」の姿は、言葉や表情ではなく、徹底してアクションの連続で描き出されています。それも後ろ姿(!)。本当にすごい。ラストシーンもすばらしく、この絵本、おすすめです。

▼筒井頼子さく/林明子え『あさえとちいさいいもうと』「ものがたりえほん36」福音館書店、1979年

E・H・ミナリック/モーリス・センダック『こぐまのくまくん』

 今日はこの1冊だけ。4つの物語から「くまくんの つきりょこう」と「くまくんの ねがいごと」を読みました。「くまくん」にたいする「かあさんぐま」のやさしくおだやかで機知に富んだ受け答えには、本当に感心します。というか、私にはとうてい無理……

▼E・H・ミナリック ぶん/モーリス・センダック え/まつおか きょうこ 訳『こぐまのくまくん』福音館書店、1972年