大月ヒロ子『まるをさがして』

 福音館書店の「びじゅつのゆうえんち」シリーズの1冊。20世紀の芸術作品に描かれた「まる」が全部で14作品、集められています。巻末には、取り上げられた作品の基本情報と説明が載っていました。はじめて接する作家さんの名前もたくさんあります。

 「まる」という一見したところ単純なかたちでありながら、実に多様な表現があり、おもしろいです。大月さんのあとがきから少し引用します。

まるをかくには、とてもかんたんです。どこからかきはじめても、はじめとおわりをむすべば、ほら、できあがり。[中略]たくさんかけば、もようをつくることだってできます。まるに線をつけくわえると、人やモノのかたちにちかづきます。まるはたんじゅんですが、わたしたちに、いろいろな想像をさせてくれる、ふしぎな力をもったかたちです。

 この絵本、裏表紙には「読んであげるなら 4才から じぶんで読むなら 小学校初級から」と記されていましたが、うちの子ども(5才)にはあまりうけませんでした。文章がほとんどなく、かたちや色を楽しむことからすると、むしろ、もっと小さい子どもやあるいは赤ちゃんの方が楽しめるかもしれません。

▼大月ヒロ子 構成・文『まるをさがして』福音館書店、2004年

馬場のぼる『11ぴきのねこ ふくろのなか』

 「11ぴきのねこ」シリーズの1冊。このシリーズは、うちの子どもも大好きです。今回は、遠足に出かけた11ぴきのねこたちが、「ウヒアハ」という化け物につかまってしまい、山のお城で働かされてしまうという物語。

 「はなをとるな」「はしをわたるな」「木にのぼるな」といった立て札がポイントです。「~するな」と言われるとついやりたくなってしまったり、あるいは他の人が楽しそうにやっていると自分も試してみたくなるのが、人情というもの。そのあたりが、とてもユーモラスに描かれています。

 ところで、11ぴきのねこたちを奴隷みたいに働かせる「ウヒアハ」、なんだかお茶目です。ポーチを下げていて、しっぽにはリボンの飾りまでつけている。あんまり悪そうに見えません。よく見ると、裏表紙にも隠れていました。

▼馬場のぼる『11ぴきのねこ ふくろのなか』こぐま社、1982年

チョン・ハソプ/ハン・ビョンホ『ヘチとかいぶつ』

 今日は3冊。「ヘチ」というのは、韓国で昔から伝わってきた想像上の動物で、正義と平和を守る神、太陽の光がこの世のすみずみに届くように番をする太陽の神だそうです。巻末には、詳しい説明がありました。で、この絵本で描かれているのは、「ヘチ」と、地の底の恐ろしい怪物四兄弟、「ムンチギ大王」「プンギ大王」「トンチギ大王」「パクチギ大王」の戦い。

 ザラリとしたタッチの迫力のある絵がとても美しい。もしかすると韓国の伝統的な手法でしょうか、渋い色合いで神話の雰囲気もあります。著者紹介によると、絵を担当されたハン・ビョンホさんは、現代韓国を代表するイラストレーターの一人で、いろんな賞を受賞されています。原書の刊行は1998年。この絵本、おすすめです。

▼チョン・ハソプ 文/ハン・ビョンホ 絵/おおたけ きよみ 訳『ヘチとかいぶつ』アートン、2004年

飯野和好『わんぱくえほん』

 この絵本は飯野さんがはじめてすべてを手がけた絵本のようです。見開き2ページをひとまとまりにして、「わんぱく」な子どもたちの様子が描写されています。1981年刊行で、いまとはだいぶ作風が違いますね。なんとなくヨーロッパの雰囲気が感じられます。

 文もまだ手書き文字ではありません。そのかわりに(?)、手書きのローマ字がたくさん描き込まれています。これがまた独特の書体なんですね。手書き文字へのこだわりがうかがえて、おもしろいです。でも、このローマ字、まだ解読できないところがあります(^^;)。

 巻末の「あとがき」を読むと、この絵本の絵はわらばん紙に描かれているとのこと。なかなか味のある色合いです。あと、カバーには飯野さんの写真が載っていたのですが、これが実に若い!

▼飯野和好『わんぱくえほん──ひとつひとつのひとくちばなし』偕成社、1981年

長新太『ぼくのすきなおじさん』

 今日は4冊。いやー、この絵本はすごい。おすすめです。「ぼくのすきなおじさん」はものすごい石頭で、車も月も、巨大なダイヤモンドも、大きなピラミッドのような「オバケのしろ」(!)もそして「オバケ」も、全部あたまで「ドーン!」とぶっとばしてしまいます。見た目ははげ頭のふつうのおじさんなのに、とんでもなく固いアタマなのです。というか、驚きと脱力で、こちらのアタマのなかはぐにゃぐにゃになってきます(^^;)。そういえば、長新太さんの『ゴムあたまポンたろう』とはアタマの設定がちょうど逆ですね。ラストの文はなかなか味があります。

ぼくのしってる おじさんは、
こんな すごい あたまをしています。
あたまのなかみは わからないけど、
ぼくは みんなに じまんしてるんだ。
ぼくは、このおじさんが
だいすきです。

▼長新太『ぼくのすきなおじさん』童心社、1993年

2004年7月のおすすめ絵本

 だいぶ更新が遅くなっていますが、7月に読んだ絵本のなかでとくにおすすめの絵本を何冊か選んでみたいと思います。

 選書の基準は、子どもといっしょに読んでいるなかで自分がとくに感銘を受けたもの。そのため、うちの子どもが好んで読んだものとは必ずしも一致しません。私自身が「これはすごい!」「おもしろい!」と思ったものを選びます。もちろん、それは同時に、子どもといっしょに楽しめるものという意味もあります。

 というか、このあたりは、若干、あいまいですね。まあ、あまり考えすぎずに選んでいこうと思います。

 というわけで、おすすめ絵本は下記です。記されている順番は読んだ順です。ランキングではありません。それぞれの絵本の紹介記事は、この記事のうしろの「関連する記事」というセクションに一覧になっているはずです(プラグインを使って自動でリンクを貼るようにしています)。

  • 長谷川義史『どこどこどこ いってきまーす』
  • 甲斐信枝『あしながばち』
  • 神沢利子/片山健『いいことって どんなこと』
  • 吉沢葉子/斎藤隆夫『おおぐいひょうたん』
  • 筒井頼子/林明子『あさえとちいさいいもうと』
  • 武田正/梶山俊夫『さるとびっき』
  • アーサー・ガイサート『洪水のあとで──ノアたちのその後──』
  • 松谷みよ子/中谷千代子『ちいさいモモちゃん1 おばけとモモちゃん』
  • 長谷川摂子/スズキコージ『たいこたたきのパチャリントくん』
  • ジビュレ・フォン・オルファース『うさぎのくにへ』
  • 瀬川康男『ぼうし』
  • くろだ かおる/せな けいこ『ゆうれいとすいか』
  • 長新太『くまさんの おなか』

 うーむ、だいぶ多くなってしまいました。もう少し絞らないと意味ないかなあ。でも、どれもおもしろい絵本です。

 ちなみに、「ぐりとぐら」シリーズや「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズは、定番中の定番なので上記のリストからはずしました。

 来月(というか実はもう8月半ばですが^^;)も、この企画、やってみようと思います。

なかえよしを/上野紀子『また!ねずみくんとホットケーキ』

 またまた『また!ねずみくんとホットケーキ』。この絵本ではほとんどのページに時計が載っており、動物たちが「ねみちゃん」のホットケーキを早く食べたくて時計を進ませる様子が描かれています。時計の読み取り方を少しは学べるかも……いや、そんなことはないか(^^;)。

▼なかえよしを 作/上野紀子 絵『また!ねずみくんとホットケーキ』ポプラ社、2003年

ジビュレ・フォン・オルファース『うさぎのくにへ』

 今日は2冊。「かあさんうさぎ」は「よなべして」(!)、「むくむくちゃん」と「ぷくぷくちゃん」に二枚の服を縫うのですが、これがまさに、うさぎのきぐるみ。ちゃんと長い耳もしっぽもついていて、かわいいです。で、物語の最後では、このきぐるみのうさぎを森番(もちろん人間)の「おとうさん」が人間の家に連れ帰ります。

ごらんよ かあさん
きょう つかまえた
森 いちばんの すてきな もの!

▼ジビュレ・フォン・オルファース/秦 理絵子 訳『うさぎのくにへ』平凡社、2003年

変更しました

 この間、記事を整理してウェブログの名前を変更しました。

 以前の絵本のカテゴリーの記事はすべて、もう一つのウェブログ「今日の絵本」に移しました。それから、このウェブログの名前を、「歯みがき前の絵本と、それから・・・」から「絵本を知る」に変えました。2つのウェブログそれぞれの内容を整理した方がよいかなと思い、上記のようにしました。

 絵本そのもののレビューや感想はすべて「今日の絵本」に集中し、こちらの「絵本を知る」では、絵本に関する本や雑誌の感想、絵本にまつわるあれこれについて書いていこうと思います。

 いろいろ変えましたが、どうぞ、よろしく。

いとう ひろし『レーザーこうせんじゅうビービー』

 うちの子どもに教えられたのですが、この絵本には少し不思議なところがあります。たとえば、おもちゃ屋さんには「レーザーこうせんじゅうビービー」といっしょにヘリコプターなどが飾ってあるのですが、それとまったく同じものがあとの画面で飛んでいたりします。また、バナナを「レーザーこうせんじゅうビービー」に見立てて「ようかい」(実はネコ)を退治する画面では、木に眼が付いていてじっと見ています。見立て遊びやごっこ遊びがはじまると、まわりの世界も変わってくる、そんな感じでしょうか。

▼いとう ひろし『レーザーこうせんじゅうビービー』童心社、1998年