アネット・チゾン、タラス・テーラー『三つの色のふしぎなぼうけん』

 こちらもおもしろい。この絵本は「まほうの色あそび」というシリーズの1冊。主人公の男の子「ハービィ」とイヌの「アンジェロ」が、青、黄、ピンクの3色を使って、いろんな色の付いたさまざまな動物たちを描いていきます。紙のページの間に色の付いた半透明なセロファンがはさまれており、セロファンのページと紙のページを重ねることで、別々の色の付いた動物たちを重ね合わせることができます。たった3色なのに、重ねることで別の色とそして別の動物(!)が鮮やかに浮かび上がってきます。

色は、どこからきたんだろう。ハービィは
どの色も、青と黄色とピンクからつくった。
そして、この三色のこい色とうすい色を使って、
でっかい花をかいたよ。

色の仕組みを学ぶことができます。学ぶというよりは、色と形を重ねて新しい色と形を生み出す、それを自分でやってみることの視覚的な驚きとおもしろさ。この絵本、おすすめです。
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『三つの色のふしぎなぼうけん』評論社、1984年

赤羽末吉『おへそがえる・ごん ぽんこつやまの ぽんたと こんたの巻』

 今日は2冊。この絵本は「おへそがえる ごん」の冒険物語。カエルの「ごん」には押しボタンのようなおへそがあって、それを押すと口から「ぱく ぱく ぱく」と雲が出てくるのです。しかも、おへそにゴミがたまったときのために、耳かきならぬ、おへそかきまで持っている。いやー、おもしろい。で、友だちになった人間の子ども「けん」といっしょに、この雲でもって、乱暴な人間たちや、たぬきの「ぽんた」ときつねの「こんた」が化けた怪物たちを退治していきます。物語は昔話ないし時代劇のかたちをとっていますが、ユーモラスな描写がてんこ盛りで実におかしいです。うちの子どもにも大受けしていました。
 巻末の説明によると、1986年に福音館書店から刊行された『おへそがえる・ごん 第1巻』を、著者のご遺族の了解を得て再構成して出版したものとのこと。「ちひろ美術館 コレクション絵本」の第4巻です。「再構成」というのは途中のコマ割りみたいになっている部分かな。「再構成」される前のオリジナルも読んでみたいです。物語の続きがあるようなので、今度、図書館で探してみようと思います。この絵本、おすすめです。
 [↑後日、確認してみたら、やはり左記のとおりに大幅に変わっていました。はっきり言ってオリジナルの方が何倍もよいです。何のために再構成したのか、理解に苦しむほどです。これについてはまた別のエントリーで書きます。]
▼赤羽末吉『おへそがえる・ごん ぽんこつやまの ぽんたと こんたの巻』小学館、2001年

長新太『ねむる』

 まくら、ふとん、トイレ、牛乳パック、カップ、服、テレビ、掃除機、靴、クルマ、ビル、山、そして地球も、みんな眠ります。主人公の「ぼく」はこう言っています。

ぼくは いろいろなものは、
みんな いきている とおもう。
だから ねむることもある。

なるほど。そんなバカなと思わずに、「ぼく」の言うとおりにまわりのものを見直してみると、少し楽しくなるかも。画面で使われているのは、黄と青と黒の3色のみ。輪郭線が2色で二重になっていたり、またずらして色が付けられたりしています。目がチカチカしそうですが、とても不思議な感覚になります。ラストページは必見。長さんならではのむすびです。
▼長新太『ねむる』文溪堂、2002年

トミー・ウンゲラー『エミールくん がんばる』

 主人公の「エミール」は大きなタコ。サメに襲われていた「サモファせんちょう」を助け、それが縁で地上にやってきます。どんな楽器もたちまち弾けて、8本の手でハープ(?)とドラムとチェロを同時に操り、ドビッシーの「うみ」を演奏したりします。海の監視員をしたり、警察船を助け悪者を捕まえたりと大活躍。緑色で口がなく、ちょっとなさけない顔をしていて、愛嬌もあります。見開き2ページの左上と右下、左下と右上といったように、斜めに空間を広くとった絵の配置もおもしろい。原書の刊行は1960年。
▼トミー・ウンゲラー/今江祥智 訳『エミールくん がんばる』文化出版局、1975年

堀内誠一『ほね』

 今日は3冊。人間や動物の骨の仕組みと機能を解説した科学絵本。読みながら自分たちの手の骨や筋肉、あるいは肋骨をさわって、説明を確かめたりしました。サインペンで描いたような、カラフルで軽やかな彩色がきれいです。
▼堀内誠一『ほね』福音館書店、1981年

わたなべしげお/かとうちゃこ『ぶつかる!ぶつかる!』

 こちらの絵本も、うちの子どもが小さいときに、セリフを覚えてしまうくらい何十回も読んでいます。今日はだいぶ久しぶりに読みました。イノシシの「いのっぺちゃん」が自転車に乗って走り、いろんな動物たちにぶつかりそうになりながら(何回かは本当にぶつかります)、自転車の乗り方や交通ルールを学んでいくという物語。このようにまとめると、なんだかしつけ絵本のようですが、教育的要素はそれほど強くありません。むしろ、クレヨンのような画材であたかも殴り書きのように激しく描き出された絵が、実に躍動感にあふれていて、純粋に楽しめます。ゾウやサイ、キリン、ワニ、ゴリラと、登場する動物たちも、かたちが崩れるのもおかまいなしに、ぐいぐいと描かれ、画面からはみ出しそうな勢いです。この絵本を毎日のように読んでいたころのうちの子どもの大のお気に入りは、電車の画面。

ごうごうと おとを たてて、
まんいんでんしゃが とおります。

ここが大好きだったんだよと話をしたら、うちの子どもはまったく覚えていませんでした(^^;)。
▼わたなべしげお さく/かとうちゃこ え『ぶつかる!ぶつかる!』「こどものとも」1995年6月号(通巻471号)、福音館書店、1995年

たむらしげる『きりのカーニバル』

 この絵本は、うちの子どもが小さいときから、もう何十回も読んでいます。「きりふりやまに ひのでを みにいく」「ルネくん」とロボットの「ランスロット」、途中で深い霧に迷い、「ゴンゴ族」と出会います。向こうがまったく見えない霧のなかから現れ、そしてまた消えていく、深い霧というシチュエーションだからこその不思議な邂逅がよいです。「ゴンゴ族」のカーニバルの描写は、ほとんどモノクロのような彩色、そのあとの「きりふりやま」での日の出の場面は鮮やかな黄と緑で描かれており、色の移り変わりがたいへん美しいです。
▼たむらしげる『きりのカーニバル』「こどものとも」1995年12月号(通巻477号)、福音館書店、1995年

おおたけしんろう『ジャリおじさん』

 今日は3冊。「はなの あたまに ひげのある ジャリおじさん」がピンクのワニといっしょに道を歩いていく物語(?)。「ジャリおじさん」はなかなかあやしい格好なのですが、他にも「タイコおじさん」とか「あおい おおおきな かみさん」など、不思議なキャラクターがいろいろ登場。「ジャリおじさん」の「こんにちは」は「ジャリジャリ」で、語尾には必ず「~ジャリ」が付くところは、読んでいるこちらも口癖になりそう。うちの子どももときどき「ジャリジャリ」と口に出しているくらいです。作者の大竹伸朗さんは現代美術作家で、これがはじめての絵本のようです。現代美術だから難しいということはなく、紙を部分的にコラージュして彩色された画面がとてもおもしろい。うちで持っているのは「こどものとも」版ですが、1994年に単行本化されています。この絵本、おすすめです。
▼おおたけしんろう『ジャリおじさん』「こどものとも年中向き」1993年8月号(通巻89号)、福音館書店、1993年

車光照ほか/松岡享子『いつも いっしょ どうぶつとくらすアジアのこどもたち』

 ヒヨコ、イヌ、ネコ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、ゾウ、そして水牛と、いろんな動物たちとアジアの子どもたちの生活のなかでのふれあいを写し取った写真絵本。写真は、ユネスコ・アジア文化センター主催の第16回ユネスコ・アジア太平洋写真コンテストの応募作品だそうです。中国、ベトナム、バングラディシュ、パキスタン、モンゴル、インド、タイ、ネパール、インドネシアと、各国の全部で22人の方の写真が掲載されています。遊んでいる写真、働いている写真、寝ている写真、動物とのいろんな関係が描かれています。とても、ほほえましい。なかには、頭のノミをサルに取ってもらっている写真もありました。
▼車光照ほか 写真/松岡享子 文『いつも いっしょ どうぶつとくらすアジアのこどもたち』「こどものとも」1994年2月号(通巻455号)、福音館書店、1994年

平山暉彦『へんてこロボットのぼうけん』

 この絵本もうちの子どもの大のお気に入りで、もう何回も読んでいます。うちの子どもは本当にロボットが好き。子ども部屋の机の下に落ちて忘れられてしまった、ビー玉、画鋲、コンパス、窓の取っ手、積み木、みんなで一つに合体してロボットになり、机の下から明るい世界に脱出するという物語。コンパスが足、ビー玉が目、といったふうにそれぞれを生かしたユーモラスなロボット。絵は割と写実的に描かれていて、アメリカの郊外の住宅地のような舞台設定です。
▼平山暉彦『へんてこロボットのぼうけん』「こどものとも年中向き」2003年3月号(通巻204号)、福音館書店、2003年