月別アーカイブ: 2004年7月

おざわとしお/佐藤芙美『かぜのかみとこども』

 日本の昔話をもとにした絵本。きまぐれな風の神さまにおいてけぼりにされてしまった子どもたちの物語。最後は家に戻ることができます。おもしろいのは、風の神さまが3人登場するのですが、一見ふつうの人間のように描かれていて、輪郭が白や他の色で縁取られているところ。なんとなく神秘的な雰囲気がただよっています。

▼おざわとしお 再話/佐藤芙美 絵『かぜのかみとこども』「こどものとも」1999年10月号(通巻523号)、福音館書店、1999年

斎藤孝/つちだのぶこ『えんにち奇想天外』

 斎藤孝さんとつちだのぶこさんが組んだ「声にだす ことばえほん」、『おっと合点承知之助』に続く第2弾。今回は、おじいちゃんと子どもたちが縁日に出かけるというストーリーのなか四字熟語で会話が進んでいきます。つちださんの絵は細部にわたってユーモラス。うちの子どもは「神出鬼没」の忍者を探して楽しんでいました。おもしろいし、たぶん売れるのでしょうが、でも私としては、文も絵もつちださんが描いた絵本を読みたいです(^^;)。

▼斎藤孝 文/つちだのぶこ 絵『えんにち奇想天外』ほるぷ出版、2004年

武田正/梶山俊夫『さるとびっき』

 山形の昔話をもとにした絵本。原話の語り手もおられて、山形県小国在住の川崎さんという方だそうです。最初は1982年に刊行され、その後、「こどものとも(年中向き)」1993年10月号で第2刷が発行されました。うちで持っているのはこの第2刷。「さる」とカエルの「びっき」が田んぼを作るというストーリーで、なぜサルのほっぺたとおしりが赤いのか、その由来がおもしろく語られています。

 物語はもちろん、梶山さんの絵がまたすばらしい。シンプルな線がユーモラスに「さる」と「びっき」を描き出し、肌色の地の紙面に限定された色使いで季節の移り変わりが表現されています。この絵本、おすすめです。

▼武田正 再話/梶山俊夫 画『さるとびっき』「こどものとも(年中向き)」福音館書店、1982年

筒井頼子/林明子『あさえとちいさいいもうと』

 この絵本、最初は1979年に刊行され、うちで持っているのは2001年に発行された第3刷です。「ちいさいいもうと」の「あやちゃん」といっしょにお留守番をする「あさえ」。ところが、家の前で遊んでいるうちに「あやちゃん」がいなくなってしまいます。「あさえ」はあちこち探すのですが……といったストーリー。

 林さんの絵は、小さな子どもの表情やしぐさを繊細に的確に描写していて、ため息が出ます。絵の視線はほぼ「あさえ」の目の高さにおかれ、画面からはみ出すトラックや塀や大人の大きさが、「あさえ」の不安を表しています。そして「あやちゃん」を懸命に探す「あさえ」の姿は、言葉や表情ではなく、徹底してアクションの連続で描き出されています。それも後ろ姿(!)。本当にすごい。ラストシーンもすばらしく、この絵本、おすすめです。

▼筒井頼子さく/林明子え『あさえとちいさいいもうと』「ものがたりえほん36」福音館書店、1979年

E・H・ミナリック/モーリス・センダック『こぐまのくまくん』

 今日はこの1冊だけ。4つの物語から「くまくんの つきりょこう」と「くまくんの ねがいごと」を読みました。「くまくん」にたいする「かあさんぐま」のやさしくおだやかで機知に富んだ受け答えには、本当に感心します。というか、私にはとうてい無理……

▼E・H・ミナリック ぶん/モーリス・センダック え/まつおか きょうこ 訳『こぐまのくまくん』福音館書店、1972年

岸田衿子/白根美代子『おいしいもの つくろう』

 いわばお料理絵本。動物物語のなかで、朝食、昼食、夕食の計8つの料理がそのレシピとともに紹介されています。子どもだけで作るのは無理ですが、大人といっしょに作って楽しめるかも。おいしそうな料理です。

▼岸田衿子 さく/白根美代子 え『おいしいもの つくろう』「こどものとも 年中向き」1994年10月号(通巻103号)、福音館書店、1994年

内田莉莎子/小野かおる『くまのしっぽ』

 ベラルーシの昔話をもとにした絵本。しっぽを持っていなかった動物たちが、唯一しっぽを持つライオンの王様からしっぽをもらうという物語。クマのしっぽが短い理由があんなことだったとは! たくさんのしっぽが山のように積まれた画面は、なかなかシュール。

▼内田莉莎子 訳/小野かおる 絵『くまのしっぽ』「こどものとも 年中向き」1996年9月号(通巻126号)、福音館書店、1996年

吉沢葉子/斎藤隆夫『おおぐいひょうたん』

 西アフリカの昔話をもとにした絵本。ひょうたんに化けて肉を食う魔物「おおぐいひょうたん」が出てきます。はじめは、ひょうたんといっしょに遊ぶという楽しい雰囲気、ところが途中から、魔物に追いかけられる恐ろしい物語に展開します。うちの子どもはあまり恐くなかったようですが、実は私はびっくりしました。でも、おもしろいです。斎藤隆夫さんの絵もすばらしく、この絵本、おすすめです。

▼吉沢葉子 再話/斎藤隆夫 絵『おおぐいひょうたん』「こどものとも」1999年1月号(通巻514号)、福音館書店、1999年

神沢利子/片山健『いいことって どんなこと』

 《こどものとも》傑作集の一冊。雪国に訪れた最初の春の息吹を描いた絵本です。同じモチーフの絵本としては『はなをくんくん』が有名と思います。『はなをくんくん』は躍動感あふれる歓喜に満ちた描写でしたが、『いいことって どんなこと』はたいへん静謐な描写になっており対照的だなと思いました。じっさいに雪国を知る者としては、『いいことって どんなこと』の方がしっくりきます。主人公の女の子の表情(あるいは無表情)がよいです。この絵本、おすすめです。

▼神沢利子 さく/片山健 え『いいことって どんなこと』福音館書店、1993年

香山美子/遠藤てるよ『ねずみきょう』

 「日本の民話えほん」シリーズの1冊。「じいさま」を亡くした「ばあさま」、一晩泊めてあげた偽物のお坊さんにでたらめなお経を習います。この「ねずみきょう」で知らないうちに泥棒を追い払うという物語。おもしろいのは、お経を上げる画面で口から煙のようなものが描かれるところ。なんだか不思議な力がありそうです。

▼香山美子 文/遠藤てるよ 画『ねずみきょう』教育画劇、2003年