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岸田典大さんの絵本パフォーマンス

 クリップしていた記事、札幌テレビ放送のSTVニュースで取り上げられていた「絵本パフォーマー」岸田典大さん。以前、北海民友新聞の記事にも掲載されていました。

 STVニュースでは映像も見ることができます。自作自演、オリジナルの音楽に合わせて絵本を読む、というか「歌う」パフォーマンス。子どもたちから手拍子まで起きています。うーむ、すごい! これ、一回ぜひ実地に見てみたいですね。

 実は今年の8月にわが家のアイドル(?)飯野和好さんによる『ねぎぼうずのあさたろう』浪曲調読み聞かせをじっさいに見ることができたのですが(そのうち必ず記事にする予定です^^;)、それに匹敵するかも。

 検索してみたら岸田さんのウェブサイトもありました。絵本パフォーマー・岸田典大のHP~絵本パフォーマンスは絵本と音楽の新しい世界です。詳しいプロフィールに「絵本パフォーマンス」の説明、今後のライブスケジュール、ライブの感想、BBSや日記(RSS付き)まであります。非常に充実した内容。

 ウェブサイトでの「絵本パフォーマンス」の説明は次の通り。

市販の絵本にオリジナル音楽をつけて、ステージパフォーマンスとして行なっているのが、『絵本パフォーマンス』です。

 なんとなく、飯野和好さんが言われていた「芸能」としての読み語りを思い出しました。これについては絵本を知る: 『飯野和好と絵本』(その3)に書きました。

 ウェブサイトからリンクされているそら色ステーションでも岸田さんのパフォーマンスとインタビューを視聴できます(リンク先のページの一番下にあります)。いや、ほんとにすごい! 歌っているというか、もうラップですね。北海民友新聞の記事だと、なんと『ぐりとぐら』はヒップホップ調(!)になっているそうです。おもしろいなあ。

 思ったのですが、これはもう歌って踊れますね。いや、じっさい踊れそうです。考えてみれば、踊りたくなる絵本ってありますよね。それを実現してしまっている……。絵本の読み聞かせは声に出して聞くというところで体感的なものですが、さらにその先に行けそうです。身体全体で絵本を感じ取る、なんてこともおかしな話ではないでしょう。この点にかかわって、ウェブサイトでは次のように書かれていました。

従来の読み聞かせのイメージとはがらりと変わっているのではないでしょうか。紙芝居的で、ミュージカルチックで、ボードビルっぽい読み聞かせ。

 ページをめくりながら子どもに静かに読んでいくといったいわば読み聞かせに関する私たちの常識を完全に打破していて、なんというか実に痛快です。いや、絵本パフォーマンスの方が実は絵本の本質に迫っているのかもしれません。

 絵本パフォーマンスの絵本LISTのところを見ると、スズキコージさんの『サルビルサ』や『ウシバス』、長谷川集平さんの『トリゴラス』、片山健さんの『どんどん どんどん』に長新太さんの『キャベツくん』、センダックさんの『かいじゅうたちのいるところ』にスタイグさんの『みにくいシュレック』、等々とすごいラインナップ。うーむ、『サルビルサ』と『トリゴラス』と『どんどん どんどん』、これはぜひとも見て聞いて感じてみたいです。

 ライブの様子については、岸田さんのウェブサイトからリンクが張ってあるきっかけ空間 BRICOLAGE – ブリコラージュ –にとても詳しくリポートが掲載されていました。本当に楽しそうです。

やぎゅうげんいちろう『はなのあなのはなし』

 これはおもしろい! 鼻の穴の仕組みやはたらきなどを扱った科学絵本。表紙も裏表紙も見返しも、穴、穴、穴……。本文では興味深い事実がいろいろ説明されています。うちの子どもといっしょに互いの鼻の穴を見せ合いながら読んでいきました。画面と比べながら「お父さんの鼻の穴はこんな感じ!」。

 他人の鼻の穴をしげしげ見ることなんて、ふつうはないので、なかなか楽しいです。それで、なんとなく分かるなあと思ったのは、次の一文。

ぼくも おじいさんになったら、
あれぐらいの はなのあなに
なるんだろうか?
どきどきしてしまう。

 たしかに自分も小さいころ、父や祖父の鼻の穴を見て何かを感じていたような気がします。とくに鼻毛とかね。考えてみれば、小さな子どもの視点からすると大人の鼻の穴は下からのぞけますし、割と見えやすいですね。

 あと、うちの子どもがおもしろがっていたのは、アザラシやカバなどは鼻の穴を空けたり閉じたりできるというところ。ゴリラの鼻水の話や、鼻の穴のなかに朝顔の種を入れておくと芽が出るというところにも大受けしていました。これ、本当の話なのかな。いや、ありそうな気がします。

 この絵本、科学とはいっても難しいところはぜんぜんなく、非常に身近なところから分かりやすく、ユーモラスに説明しています。しかも、すごいと思うのは、それが科学の基本的な発想法をよく伝えているところ。たとえば最初の方のページでは、いろんな人の鼻の穴を比較してみたり、また人間と動物の鼻の穴を比べたりしています。考えてみれば、比較というのはおそらく科学にとってとても重要な手法と言えるでしょう。その比較の考え方をこれだけ興味深く表しているのは、すばらしいと思います。

 終わりの方では、鼻の穴の他にも身体にはいろいろな穴があり、それらはとても大事であることが説明されていました。うーむ、なるほどなあと納得の結論です。穴という点から自分の身体を見直すのは、とても新鮮でなおかつ重要なんじゃないでしょうか。

 それはそうと、以前も思ったのですが、他の絵本でもやぎゅうさんが描く人物はみんな鼻の穴がりっぱなんですね。鼻の穴というテーマは、やぎゅうさんにぴったり。いや、そんなことを言ったら失礼かな(^^;)。

▼やぎゅうげんいちろう『はなのあなのはなし』福音館書店、1981年(「かがくのとも傑作集」としての刊行は1982年)

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーのぼうけん』

 昨日で「ルドルフ」シリーズはひとまず読み終えたので、今日からは「エルマー」シリーズ。定番と言っていいかと思います。少しずつ読んでいきます。

 期待に違わず、なかなかスリリングな導入。ただ、最初はなにせ「とうさんのエルマー」の回想というかたちをとっているので、うちの子どもには少し分かりにくかったかも。物語のなかで語り手が変わっていくような感じなのですが、最後はもう一度、元の語り手に戻るのだろうか、それとも現在のお話につながるのかな。

 この本は絵本というよりは児童文学ですが、挿し絵がすばらしい。表紙のライオンのイラストとその色合いは見ているだけでワクワクしてくるよう。本文の挿し絵はモノクロですが、動物たちの様子がユニークに描写されており、冒険の雰囲気が伝わってきます。

 表紙と裏表紙の見返しには、物語の舞台となる「みかん島」と「動物島」の詳しい地図が付いていました。物語のエピソードも書き添えられています。これも、たのしい仕掛けです。

 この本、うちの子どもはたいへん惹き付けられたようで、『ルドルフといくねこくるねこ』を読んでいるときから、早く読みたいなあとだいぶ気になっているようでした。いや、その気持ち、よく分かります。「エルマー」シリーズは私も読んだことがなかったので、これから楽しみです。

 原書の刊行は1948年。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーのぼうけん』福音館書店、1963年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフといくねこくるねこ』

 再び読んでいたこの本、今日ようやく読み終わりました。最後の対決はなかなかの盛り上がり。2回目ですが、子どもともども楽しみました。うちの子どもは、登場するネコのセリフの一つに大受け。読んだあと何度も思い出し笑いしていました。トイレのなかで一人で「アハハハ!」と笑っているので、なんだかおかしい(^^;)。

 それはともかく、「ルドルフ」シリーズ、第4弾も出るのかなあ。第2弾から第3弾が刊行されるまで、だいぶ時間がかかっています。もしかすると第4弾が出るころにはうちの子どもも一人で本を読めるようになっているかも……。それはそれで少しさみしかったりして。でも、これだけ魅力的なキャラクターと物語ですから、第4弾、ぜひ期待したいと思います。

▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフといくねこくるねこ』講談社、2002年

五味太郎さんデザインの廣榮堂「元祖きびだんご」

 先日、岡山に出張したですが、岡山駅でおみやげを探していて見つけたのが廣榮堂の「元祖きびだんご」。店員さんの話では、岡山で数ある「きびだんご」のなかでも廣榮堂のが一番とのこと。買って帰って家族みんなで食べました。けっこうおいしかったです。それはともかく、注目はパッケージ。なんと五味太郎さんオリジナルのパッケージデザインなんですね。

 廣榮堂のウェブサイトはこちら。安政3年(1856年)創業とのこと。「元祖きびだんご」のページを見ると、いろんな種類があります。そのすべてが五味さんオリジナルのパッケージ。「桃太郎」の登場人物をモチーフにして、それ以外のキャラクターも加えられています。

 箱のなかに入っている説明書きのしおりや、一つ一つのきびだんごの包み紙にも、五味さんのイラストをあしらったオリジナルのデザイン。昔話の自由で楽しい雰囲気が出ていて、「きびたんご」という商品によく合っていると思います。

 ウェブサイトでは五味太郎さんと廣榮堂代表取締役の武田さんの対談も載っていました。五味太郎さんに依頼した経緯なども触れられています。

 五味太郎さんのお話でなるほどなと思った点が2つ。1つは子どものまわりにあるものこそデザインをよく考えないといけないということ。この点で日本はかなり遅れていていい加減であることが指摘されています。一例として通信簿のデザインが挙げられていました。うーむ、これはたしかにそうですね。子どもにとって、あたかも自分のすべてを数値化してしまうような、とんでもなく乱暴なもの。そのデザインをほんのちょっとでも神経を使って丁寧に作れば、違った世界が開けるんじゃないかということ。

 もう1つは、おとぎ話の同時代性を図るということ。五味さんのデザインでは「桃太郎」のもともとのキャラクター以外も取り入れられているのですが、その理由が説明されています。おとぎ話はそもそも語り継がれるものであり、したがって、そこでは常に新しい要素がミックスされ、いつも同時代であり続ける。逆に言えば、おとぎ話を「名作」として固定化した時点で、それはもはや「おとぎ話」ではなくなっており、その本来のポテンシャルを喪失してしまうということかなと思いました。読み継がれる、語り継がれる、というのは、すでに出来上がったものをそのまま受け継ぐことではなく、常に同時代においてアレンジし再生していくこと。

 なんと、廣榮堂にはこのパッケージに対してファンレターが届いているそうです。すごいですね。

ロブ・ルイス『はじめてのふゆ』

 小さな地ネズミの「ヘンリエッタ」。生まれた春にお母さんが死んでしまったので、ひとりぼっちで暮らしています。そんな「ヘンリエッタ」にはじめての冬が訪れるというストーリー。

 ひとりぼっちで、しかもはじめての冬。だから、「ヘンリエッタ」は冬ごもりをどうしたらよいのか知りません。仲間たちが、食べ物を集めておかないといけないことを教えます。そこで、「ヘンリエッタ」は、食べ物置き場を掘り、木の実や草の実を集めるのですが、なにせはじめてなので、なかなかうまくいきません。仲間たちに助けてもらってやっと食べ物が集まるのですが、うれしくてパーティを開いたばかりに全部、食べてしまいます。さあ、いったいどうなるかが物語のオチ。

 あっと驚く結末、と同時に、なんだかとぼけていておかしいです。いや、考えてみれば、このオチは間違っているわけではないんですね。でも、いったいどうなるんだろうと心配したあとに、ヘナヘナと脱力した感じ。

 仲間との友情も描かれているのですが、多くの画面は「ヘンリエッタ」一匹だけが登場します。微妙な表情からは驚きや困惑や喜びがよく伝わってきます。いろいろ困難があっても、めげずに木の実や草の実を集めていて健気。とくに、そのまなざしがよいです。

 絵は、粒子が粗いというか、かすれてざらっとした色合いが美しい。秋から冬にかけての自然の移り変わりが繊細に描かれています。黄色く色づいた森や赤い夕焼けに照らされた畑の様子は非常に鮮やかな彩色。冷たい雨にけむる森や雪が降りはじめた景色もよいです。葉がすべて落ちて細かな枝だけになった木々の描写も、冬の雰囲気をよく伝えていると思いました。

 もう一つ、おもしろいと思ったのが「ヘンリエッタ」が住んでいる穴ぐらのなかの家具調度類。よく見ると、人間の道具がいろんなかたちでアレンジされているんですね。こんなところにこんなものが、といった楽しさがあります。

 ところで、うちの子どもは、これまで、ひらがなをときどき思い出したように覚えていたのですが、今日は表紙のタイトルを自分で読んでいました。分からないところは、ひらがなの表を見て確認。だいぶおもしろかったらしく、本文の一部も、たどたどしいながらも自分で少し読んでいます。うちの子ども曰く「読んでみるとおもしろいねえ」。成長したなあ。

 原書"Henrietta’s First Winter"の刊行は1990年。奥付によると、この絵本は、第1回外国絵本翻訳コンクール最優秀賞受賞作に加筆し出版したものだそうです。

▼ロブ・ルイス/船渡佳子 訳『はじめてのふゆ』ほるぷ出版、1992年、[装幀:小林健三]

パット・ハッチンス『ぎんいろのクリスマスツリー』

 クリスマスを前に「りす」は自分の木を一生懸命飾り付けるのですが、なかなか気に入りません。そのうち夜になると、木の一番上の枝の真上に美しい銀色の星が出て、輝くクリスマスツリーになります。「りす」は大喜び。ところが、次の日、起きてみると、もう銀色の星はありません。いったい誰が取ってしまったのだろうと探しに出かける物語。

 「りす」は「あひる」「ねずみ」「きつね」「うさぎ」に出会うのですが、みんな何かを隠していて、あやしいなあと疑います。もちろん、誰も銀色の星を取っているわけはありません。ラストはすべての疑問が解けて、楽しいクリスマス・イブ。みんなでお祝いし、「りす」の銀色のクリスマスツリーも明るく輝きます。

 動物たちの毛並みは、ハッチンスさん独特の様式化された線描き。そして、なにより「りす」のクリスマスツリーが色鮮やかで美しいです。オレンジと緑と黄色で飾られ、上空には白く輝く大きな星。

 また、夜の描写が非常におもしろいです。画面を黒くあるいは暗くするのではなく、もくもくとわき上がる雲のような模様を青で描き、それによって辺りが見えなくなったことを表しています。なかなか新鮮な表現。

 そして青くなった画面のなかで、まるで舞台のカーテンを開くかのようにして、銀色のクリスマスツリーが現れます。じっさい物語のラストで青く彩色された部分は雲を表しており、雪が降りはじめると雲が割れて銀色の星が光り輝くという描写。「りす」はささやくように「クリスマス おめでとう みなさん!」と言います。この「ささやくように」というのが画面にとても合っていると思いました。いわばクリスマスの奇蹟。

 原書"The Silver Christmas Tree"の刊行は1974年。この絵本、おすすめです。

▼パット・ハッチンス/渡辺茂男 訳『ぎんいろのクリスマスツリー』偕成社、1975年

たむらしげる『ランスロットのきのこがり』

 「ランスロット」と「モンジャ」がきのこ狩りをするのは、実に巨大なきのこの森。思い出したのですが、たむらさんの『ロボットのくにSOS』にもよく似た場面が出てきます。こちらは地下に広がるきのこの森でしたが、やはり巨大なきのこ。考えてみれば、通常では考えられないくらい大きなものに囲まれるという情景は、たむらさんの他の絵本でもけっこう見られるような気がします。

 それはともかく、カバーにたむらさんの説明があったのですが、「ランスロット」のアンテナ、赤く変わったんですね。「パブロくん」が塗ってあげたとのこと。ちょっと、おしゃれかも。

▼たむらしげる『ランスロットのきのこがり』偕成社、2004年、[ブックデザイン:高橋雅之(タカハシデザイン室)]

クリス・バン・オールスバーグ『ジュマンジ』

 今日もうちの子どもは読む前に、「画面を絶対に近づけないで!」と言っていました。よっぽど恐いんだな。それでも、この絵本は大好き。今回「ジュディ」と「ピーター」が「ジュマンジ」に到達して危機を脱したあとで、うちの子ども曰く「ジュマンジのゲーム、やってみたいなあ」。恐いんじゃないの?と聞いてみたら、でもやってみたいとのこと。なんとなくこの気持ち、分かるような気がします。(ちゃんとゴールにたどり着けるなら)ドキドキハラハラの最高のゲームかもしれませんね。

 ところで、うちの子どもは「ジュディ」と「ピーター」がジュマンジのゲームを抱えて公園から出ていく画面に注目していました。二人を見送るように騎馬像の後ろ姿が描かれているのですが、うちの子どもの考えでは、この騎馬像があやしいとのこと。つまり、ジュマンジのゲームを作ったのは騎馬像なんじゃないか。なぜなら、馬に乗っているしハトがまわりを飛んでいるし、動物たちがまわりにいるから。それに、途中で出てくる案内人はこの馬に乗っている人なんじゃないか……。うーむ、なかなかおもしろい解釈。画面では騎馬像は公園を出ていく二人を後ろからじっと見下ろすような描写になっており、たしかにあやしい雰囲気があります。いずれにせよ、ジュマンジを作ったのは誰か、いったい誰が公園に置いたのかは一つの謎ですね。

▼クリス・バン・オールスバーグ/辺見まさなお 訳『ジュマンジ』ほるぷ出版、1984年

上田真而子/斎藤隆夫『まほうつかいのでし』

 途中で帰ってくる魔法使いの先生、太陽を背にして全身黒々としているのですが、よく見ると、どうやらヒゲがあるようです。うちの子どもが気が付きました。うーむ、なかなか恐いです。

 あと、斎藤さんの絵でおもしろいな思ったのは、左右対称になっている部分がけっこうあること。文様のような表現や幾何学的な単純化された線とも相まって、何か秩序のある画面になっていると思います。それは魔法使いという物語のモチーフと呼応しているような気がします。

▼上田真而子 文/斎藤隆夫 絵『まほうつかいのでし』福音館書店、1992年