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たむらしげる『ランスロットのきのこがり』

 「ランスロット」と「モンジャ」がきのこ狩りをするのは、実に巨大なきのこの森。思い出したのですが、たむらさんの『ロボットのくにSOS』にもよく似た場面が出てきます。こちらは地下に広がるきのこの森でしたが、やはり巨大なきのこ。考えてみれば、通常では考えられないくらい大きなものに囲まれるという情景は、たむらさんの他の絵本でもけっこう見られるような気がします。

 それはともかく、カバーにたむらさんの説明があったのですが、「ランスロット」のアンテナ、赤く変わったんですね。「パブロくん」が塗ってあげたとのこと。ちょっと、おしゃれかも。

▼たむらしげる『ランスロットのきのこがり』偕成社、2004年、[ブックデザイン:高橋雅之(タカハシデザイン室)]

たむらしげる『ランスロットのきのこがり』

 この絵本は「ロボットのランスロット」シリーズの1冊。「ランスロット」とネコの「モンジャ」がきのこ狩りに行くという物語。ただ、このきのこ、ただのきのこじゃありません。顔も手足もある「チョロきのこ」。自分で走って逃げていきます。巨大なお母さんきのこが現れたりして、結局、何も捕まえられずに家に帰った「ランスロット」と「モンジャ」。でも最後はクマの「パブロくん」も加わってみんなでおいしいきのこシチューを食べます。

 「チョロきのこ」の粉から普通の(?)きのこが生えてきて、それを料理するのですが、うちの子ども曰く「このきのこ、おいしそうだねえ」。いや、たしかに身体が暖まりそうなシチュー、うーむ、湯気も出ていていい感じ。あと、大きくなったきのこがテーブルとイスになっているのも、おもしろい。「あ、ほら、テーブルとイスになってる!」と、うちの子どもにも受けていました。

 たむらさんはCGで絵を描かれていると思うのですが、偕成社から出ているこの「ロボットのランスロット」シリーズは、以前にも増して表現が微細で細密になっているように思いました。たとえば物の影やあるいは画面の焦点なども表されています。近くのものはくっきり、背景のものはぼんやりとした輪郭で描かれており、あたかも3DのCG映画の一コマのよう。見ようによっては切り絵のような趣もあって、おもしろい。とはいえ、もちろん、たむらさんの絵本ならではの楽しい雰囲気はそのままです。一つの画面で情報量を増やすところと減らすところのバランスがたぶんポイントなんじゃないかなと思いました。

▼たむらしげる『ランスロットのきのこがり』偕成社、2004年、[ブックデザイン:高橋雅之(タカハシデザイン室)]