もとしたいずみ/荒井良二『すっぽんぽんのすけ』

 「すっぽんぽんのすけ」シリーズの第1作。見た目はふつうの男の子が、真っ裸の「すっぽんぽんのすけ」になって、イヌ(?)忍者の悪者と戦います。これはおもしろい。「すっぽんぽんのすけ」になると、なぜかアタマにちょんまげが生えてきますが、姿はまさに「すっぽんぽん」で、なんだか気持ち良さそう。まちの人びとは当然のように「すっぽんぽんのすけ」に接していて、ジュースをくれたりします。忍者との戦いも、戦いとはいっても、実におかしな技。うちの子どもにも大受けでした。一番おもしろがっていたのは、「すっぽんぽんのすけ」がものすごい速さで走るところ。「はやすぎ!」。表紙も笑えます。イヌとネコの視線の先にあるのは、たぶんアレだな(^^;)。それにしても、「すっぽんぽんのすけ」、立ち姿がりりしく、いさぎよいです。この絵本、おすすめです。
▼もとしたいずみ 作/荒井良二 絵『すっぽんぽんのすけ』すずき出版、1999年

今江祥智/長新太『よる わたしのおともだち』

 以前、読んだ『なんだったかな』と同じく「黒の絵本」三部作の1冊。早寝早起きの「ひろこちゃん」は夜を知りません。そこで、「にいちゃん」や「かあさん」や「とうさん」や「なかよしの まことくん」に「よるって なあに?」と聞くのですが、みんな答えがバラバラなので、お昼寝をしっかりとって自分で確かめます。「にいちゃん」の答えは割と科学的、「かあさん」と「とうさん」の答えはファンタジー、「まことくん」の答えは自分の体感、どれも「ひろこちゃん」にとってはあまり納得がいかないわけですね。とくに「かあさん」と「とうさん」の答えが否定されているのは、おもしろいと思います。子ども向けの(ように見える)空想的なお話では実は子どもの好奇心を満たすことはできない、と。ちょっと考えすぎかもしれませんが……。それはともかく、使われている黒がとても美しい。まさに漆黒。
▼今江祥智 文/長新太 絵『よる わたしのおともだち』BL出版、2003年

あべ弘士『どうぶつえんガイド』

 今日は3冊。この絵本は、月刊科学絵本『かがくのとも』の『どうぶつえんガイド』(91年4月号)、『フクロウのよるは おおいそがし──どうぶつえんガイド』(92年5月号)、『カメは おうちを しょっている──どうぶつえんガイド』(93年11月号)の3つをまとめ、さらに追加して単行本化したもの。動物園でのたくさんの動物たちの生態がそれぞれ見開き2ページに描かれています。作者のあべさんは旭川市旭山動物園に勤務されていたとのこと。ページのたくさんの書き込みを読んでいくと、動物の生態について、へぇーっと驚きの事実を知ることができます。うちの子どもも興味しんしん。一番びっくりしたのは、フラミンゴのピンク色の話。あと、トラやコウモリなど、おしっこネタもおもしろい。文書の量がだいぶ多いので、今日は途中まで。明日また読みます。この絵本、おすすめです。
▼あべ弘士 作・絵/なかのまさたか デザイン『どうぶつえんガイド』福音館書店、1995

A・P・セイヤー、J・セイヤー/R・セシル『いちは かたつむり、じゅうは かに』

 「あしで かぞえる かずの ほん」とサブタイトルが付いています。数の絵本ですね。1からはじまって10まで数え、そのあとは20、30、……といって100まで数えます。この絵本のおもしろいところは、何の足を使うのかということ。なんと、1は、かたつむりなんです。で、奇数は、かたつむりと他の動物(人間やイヌ)を足して表現しています。いやー、すごいアイデア。あとは昆虫やクモやカニが登場。2桁の数字については、2種類の数え方を描いていて、足し算の考え方もそれとなく示しています。ラストの100は、あっと驚くオチがあって、おもしろい。原初の刊行は2003年。
 ところで、奥付をなにげなく見ていて少し驚いたのですが、Printed in China と記されていました。もしかするとコスト削減などの理由から中国で印刷しているのでしょうか。印刷業界も国内の空洞化が起こっているのかなと思いました。じっさい、どうなんでしょう。
▼A・P・セイヤー、J・セイヤー 文/R・セシル 絵/久山太市 訳『いちは かたつむり、じゅうは かに』評論社、2004年

松谷みよ子/片山健『したきりすずめ』

 今日は2冊。日本の伝統的昔話「したきりすずめ」の絵本です。「したきりすずめの おやど」に行くまでが苦労の連続。うーむ、こんなお話だったかな、細かいところは私も忘れていたので、けっこう新鮮でした。昔話とはいっても、いまの子どもたちは接する機会があまりないかもしれませんね。うちの子どもも、「したきりすずめ」のお話ははじめて知ったようでした。それはともかく、この絵本では、「ばあさま」が実に恐いです。もう見るからに意地悪そうで憎たらしく描かれています。で、ラストで「おおきなつづら」から化け物が出てくるシーンも、なかなか強烈。うちの子どもは「ばあさまが退治されてよかったねえ」なんて言ってましたが(^^;)。よく見ると「したきりすずめ」にはりっぱな眉毛が付いています。
▼松谷みよ子/片山健『したきりすずめ』童心社、1995年

長田弘/あべ弘士『あいうえお、だよ』

 この絵本、やはり文と絵の相乗作用がすばらしい。うちの子どもは今日は、ゴリラの背中の絵に注目していました。黒く大きくりっぱな背中です。ラストページの「ねえ、みんなも みんなの すきになれる 世界を つくってみない?」という呼びかけには、「好きになれる世界っていったら、それは恐竜の世界でしょう。だって、恐竜に会えるから」なんて言っていました。うーん、そうか。ただ、「世界」という言葉の意味がまだよく分からなかったようです。いや、お父さんもよく分かっていないんだけどね。とはいえ、この絵本は、具体的な何かではなく、「世界」そのもの、より正確には徹頭徹尾ことばとともにある「世界」を目の前に差し出してくれる、そんな気がしました。
▼長田弘/あべ弘士『あいうえお、だよ』角川春樹事務所、2004年

ヘレン・ウォード/ウエイン・アンダースン『ドラゴンマシーン』

 思ったのですが、この物語には、ある意味で、少年の成長と通過儀礼を描いているようなところがあります。自分なかの「ドラゴン」を最終的になくしていく、そんなイニシエーションが、あの「ドラゴンマシーン」に乗っての旅だったんじゃないか。「ドラゴン」たちがいたずらばかりしていること、幻想的で実に美しい「ドラゴンマシーン」の飛翔、そして「ドラゴン」がいなくなると同時に自分もからっぽになり「ドラゴンマシーン」の上で地平線を呆然とみている「ジョージ」、家に戻ってからのお祝い、……こうした一連の画面からは、少年が何かを捨てて成長する過程が示されているようにも思えます。とともに、一匹のイヌ(?)をプレゼントされたラストページは、捨て去りながらしかし実は私たちのそばには変わらず「ドラゴン」がいることを暗示しているようで、少し楽しくなります。それにしても、「ジョージ」が作る「ドラゴンマシーン」、かっこいいんだな、これが。うちの子どもは今日は「ドラゴン」たちの足跡に注目していました。意外なところにも付いていました。
▼ヘレン・ウォード 作/ウエイン・アンダースン 絵/岡田淳 訳『ドラゴンマシーン』BL出版、2004年

せなけいこ『おばけのてんぷら』

 この絵本の主人公「うさこ」は、本当にとぼけていますね。お小遣いはすべててんぷらに使ってしまうし、メガネは落とすし……。うちの子どもも「草つみ、忘れてるやん」と突っ込んでいました。それにしても、不思議な物語。結局、「うさこ」にとって「おばけ」は存在しなかったわけで、主要な登場人物(?)のやとりがまったくありません。「おばけ」なんだから当たり前かな。
▼せなけいこ『おばけのてんぷら』ポプラ社、1976年

長谷川義史『どこどこどこ いってみたーい』

 今日は4冊。最後に残っていたワニ、なかなか見つからなくて、私も子どももお手上げだったのですが、妻が発見しました。さすが。これで、表紙・裏表紙・見返し・本文、すべて見つけました。やったー! なんだか、とてもすっきりした気分です(^^;)。それにしても、この絵本、家族みんなでだいぶ楽しみました。もしかして、第三弾もあるかなー。このあたりは作者の長谷川さんの気力と体力しだいでしょうか。
▼長谷川義史『どこどこどこ いってみたーい』ひかりのくに、2004年