この絵本の主人公「うさこ」は、本当にとぼけていますね。お小遣いはすべててんぷらに使ってしまうし、メガネは落とすし……。うちの子どもも「草つみ、忘れてるやん」と突っ込んでいました。それにしても、不思議な物語。結局、「うさこ」にとって「おばけ」は存在しなかったわけで、主要な登場人物(?)のやとりがまったくありません。「おばけ」なんだから当たり前かな。
▼せなけいこ『おばけのてんぷら』ポプラ社、1976年
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せなけいこ『おばけのてんぷら』
山へ草つみに行った「うさこ」、「こねこくん」が食べていたお弁当の天ぷらを少し分けてもらいます。これがとてもおいしいので、材料を買ってきて家で自分でも作っていると、いいにおいに誘われ、山の「おばけ」が「うさこ」の家に忍び込んでくる、という物語。「おばけ」と「てんぷら」の取り合わせがまず、すごい。ふつう思いつきません。また、「おばけ」も「うさこ」も、なんだかとぼけていて、それがおもしろく、また愛らしいです。天ぷらをつまみ食いしている「おばけ」の実においしそうな顔、目がたれています。「うさこ」は「おばけ」が入ったころもを、「おや、なんだろう!ぴょんぴょん はねてるわ。いやに いきの いい やさいね。まあ いいや これも あげましょう」なんて言って油に入れてしまいます。そんな野菜、ないって!誰か言ってやれよっていう感じです(^^;)。いや、この間の抜け方がよいです。
▼せなけいこ『おばけのてんぷら』ポプラ社、1976年