横溝英一『はこねのやまの とざんでんしゃ』

 今日は2冊。この絵本で描かれるのは箱根登山鉄道。箱根湯本駅から強羅駅まで、114と112の2両連結の電車が走ります。単線であるためすれ違いの待ち合わせが必要であることや、急な坂を上ったり急なカーブを走るための様々な工夫(特別のブレーキやスイッチバックや水タンク)の説明があり、なかなか興味深い。いろんなお客さんと車掌さんのやりとりも人間味にあふれています。絵はとても写実的。季節は秋なのですが、途中の美しい紅葉と、山を登るにつれて木々の葉が減っていく様子もていねいに描かれています。巻末には地図も付いていました。読んでいると、ぜひ一度、箱根登山鉄道に行ってみたくなります。1993年には「かがくのとも傑作集」として単行本化。この絵本、おすすめです。
▼横溝英一『はこねのやまの とざんでんしゃ』「かがくのとも」1989年11月号(通巻248号)、福音館書店、1989年

アネット・チゾン、タラス・テーラー『動物たちのかくれんぼ』

 以前読んだ『三つの色のふしぎなぼうけん』と同じく「まほうの色あそび」シリーズの1冊。「ハービィ」とイヌの「アンジェロ」は、アフリカ(?)に出かけて昆虫採集。帰ってからその写真のスライドを友だちに見せていくという設定です。今回も、紙のページの間に彩色した透明なビニールのページがはさんであり、それがおもしろい効果を生んでいます。いわゆる隠し絵ですね。ビニールのページをめくるといろんな動物が現れます。今度は何が出てくるんだろうと楽しめます。
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『動物たちのかくれんぼ』評論社、1984年

竹内通雅『だまちゃん』

 ネコ(?)がいろんな動物たちの体のいろんな部分がどんどん自分にくっつけていくというストーリー。ウサギの耳、ブタの鼻、ニワトリの口、タヌキのしっぽにタコの足、カニのハサミと、どんどん付け加わっていきます。
 しかも、このネコ、かなり乱暴。相手がいやがっていていも、無理矢理、交換します。エリック・カールさんの『ごちゃまぜカメレオン』と少し似ていますが、描写はもっとダイナミック。手書きのセリフ文字もたくさん描き込まれ、そこにもネコの傍若無人ぶりが現れています。
 後半になると、今度は立場が逆転し、シカやライオンやタカなどが自分からネコにたてがみや角や翼などをあげていき、ネコは困った顔。なんとも妙ちきりんな怪物ができがります。
 そして、驚きのラスト。「えっ、そうだったのか!」とびっくりしました。これはなかなかすごい。もう一度よくみてみると、とびらのページやラストの前のページにそれとなくヒントが描かれているんですね。でも、表紙が少し謎。うーむ、何か含意がありそうでないような……。
▼竹内通雅『だまちゃん』架空社、2004年

久保喬/駒宮録郎『かしのきホテル』

 いろんな鳥や虫たちが泊まっている、森のなかの「かしのきホテル」。ちょっとしたことをきっかけに、泊まっているみんなが「もみじホテル」や「かばのきホテル」「くりのきホテル」に移ってしまいます。しかし、台風が来ると若い木々はとても耐えられず、結局、鳥や虫たちはどっしりとした「かしのきホテル」に戻ってくる、といった物語。「かしのきホテル」と他の木々のホテルは、常緑樹と落葉樹の対比。細くひょろっとした他のホテルと比べて、高く大きな「かしのきホテル」はなかなかりっぱ。安心感が違いますね。
▼久保喬 作/駒宮録郎 絵『かしのきホテル』フレーベル館、2002年

あべ弘士『どうぶつえんガイド』

 今日は2冊。昨日に続いて『どうぶつえんガイド』。ようやく読み終わりました。今日おもしろかったのは、アザラシ。アザラシは水に浮かんで眠ることができるのですが、眠っているうちにだんだん沈んでいき、水槽の底でそのまま10分くらい眠るとのこと。

ときどき おきゃくさんが 「しんでるよ!」と おおさわぎをする。

おかしいです。あと、動物園にいるカラスの話も驚きました。ラクダやシカにとまりその毛を抜いて巣を作る材料にしているそうです。うーむ、痛そう。ラストページはヒト。動物たちの側からヒトを見ておしまいです。毎日少しずつ読んできましたが、この絵本、驚きの事実がたくさんあり、非常におもしろかったです。自然のなかの動物の生態というより、まさに【動物園での】動物の生態が分かるわけです。「よんでたのしい! いってたのしい!」というタイトルのうたい文句のとおり、この絵本を読んで動物園に行くと、楽しさ倍増だと思います。
▼あべ弘士 作・絵/なかのまさたか デザイン『どうぶつえんガイド』福音館書店、1995

もとしたいずみ/荒井良二『すっぽんぽんのすけ』

 今日はうちの子どものリクエストにより、ラストページから逆向きに読んでいきました。当然、ページとページの間で物語がつながらないので、なんだかおかしなことになっていきます。でも、うちの子どもは、けっこうおもしろがっていました。こういう遊びもたまにはいいかも。物体としての本のつくりを意識する、あるいは一直線に一方向に進む物語を相対化する、なんて意味もあったりして……まあ、そんな大層なことではないですね。読んでいて気が付いたのですが、この絵本、画面にいろいろおもしろい描き込みがあります。ビルの屋上でシェーをしている人とかパンダとか。イヌの忍者の刀がホネのかたちになっているのも、おかしいです。
▼もとしたいずみ 作/荒井良二 絵『すっぽんぽんのすけ』すずき出版、1999年

あべ弘士『どうぶつえんガイド』

 今日は2冊。昨日に続いて『どうぶつえんガイド』。少しずつ読んでいます。今日、1番驚いたのは、レッサーパンダ。レッサーパンダは食べ物を、好きなものから順番に、しかもそれだけを全部、そのつど食べていくそうです。つまり、最初に1番好きな笹の葉を全部食べ、次に2番目に好きなリンゴを全部食べ、そして3番目に好きなふかし芋を全部食べ……といったふうです。なんだか子どもみたいな食べ方ですね。で、食べたらすぐにうんちがしたくなり、なんと、うんちも食べた順に出てくる。最初に笹うんち、次にリンゴうんち、そして芋うんち……というわけです。ここは人間の子どもとは違う(当たり前!)。それにしても、すごいですね。この絵本、毎日楽しんでいますが、明日でたぶん読み終わりそうです。
▼あべ弘士 作・絵/なかのまさたか デザイン『どうぶつえんガイド』福音館書店、1995

あべ弘士『どうぶつえんガイド』

 昨日に続いて『どうぶつえんガイド』。今日は、サルの赤ちゃんのおっぱいの飲み方にびっくり。だっこ飲み、おんぶ飲み、肩越し飲み、逆さ飲み、ねんね飲み……サルのお母さんも大変です。あと、へぇーっと思ったのは、スカンクの臭いがおならではないということ。服についたら洗濯しても取れず、お風呂に入っても1週間は臭いが抜けないそうです。明日もまた続きを読みます。
▼あべ弘士 作・絵/なかのまさたか デザイン『どうぶつえんガイド』福音館書店、1995

ジュディ・バレット/ロン・バレット『くもり ときどき ミートボール』

 今日は2冊。「おじいちゃん」が話してくれた「カミカミゴックン」という町の不思議な物語。なんと「カミカミゴックン」では、日に3度、朝ご飯と昼ご飯と夕ご飯のときに食べ物が空から降ってくるのです。住人たちは毎食、空から降ってきたものを食べます。スープやジュースの雨、マッシュド・ポテトやグリーン・ピースの雪、ハンバーガーの嵐……実に奇想天外なお話。とともに、何が降ってくるかは天気次第なので天気予報では食べ物予想が放送され、外出時にはみんな食器一式を持ち歩くとか、町の衛生局が大忙しであったりとか、なかなかリアルに説明されています。画面は細密な銅版画(?)で、西の山の向こうに現れるゼリーや学校をすっぽりと包むホットケーキ(メイプルシロップ付き)など、驚きの描写。原書の刊行は1978年。
▼ジュディ・バレット 文/ロン・バレット 絵/青山南 訳『くもり ときどき ミートボール』ほるぷ出版、2004年