「絵本」カテゴリーアーカイブ

佐藤さとる/田中清代『いってかえって星から星へ』

 この絵本では、ページのつくりに仕掛けがあります。ふつうに読んでいってラストページに来たら、くるっと逆さまにし、今度は逆に最初のページへと読み進んでいきます。つまり、同じ絵に2つの異なる文が付いており、全体として宇宙人(ミツバチ星人?)が地球にやって来てそしてまた宇宙に帰っていく様子が描かれているわけです。なかなかユニーク。宇宙から地球へ、地球から宇宙へという移動が、絵本の回転とページのめくりに定着していて、おもしろいです。

 佐藤さとるさんと田中清代さんのあとがきも興味深い内容でした。この絵本、おすすめです。

▼佐藤さとる 文/田中清代 絵『いってかえって星から星へ』ビリケン出版、2000年

やぎゅう げんいちろう『あしのうらのはなし』

 ラストは『あしのうらのはなし』。今日はつちふまずの説明のところで自分の足の裏を確かめたりしました。やぎゅうさんの描く人物は、みんな鼻の穴がりっぱだなあと、変なところに感心しました。

▼やぎゅう げんいちろう『あしのうらのはなし』福音館書店、1982年

くろだ かおる/せな けいこ『ゆうれいとすいか』

 またまた『ゆうれいとすいか』。この絵本の幽霊はぜんぜん怖がられていなくて、それがまたおかしいです。

やい やい、なに しやがる。ひとさまの すいかを
たべやがって! ゆうれいとして はずかしくないのか!
おう、べんしょうしてもらおう!

なんて言われて、しくしく、泣いています。

▼くろだ かおる 作/せな けいこ 絵『ゆうれいとすいか』ひかりのくに、1997年

白川三雄『みんなではしろう』

 今日は4冊。この絵本は、三輪車や自転車、ローラースケートやキックボードなど、いろんな乗り物にのったみんな(人間も動物も!)が公園に集まりいっしょに走るというストーリー。公園に集まるまでの描写がおもしろいです。画面の中央、奥に向かって道が続き、そこをみんなが順々に追いかけるようにして奥へ走っていきます。画面の視点は固定されていて、みんなが横を追い抜いていくような感覚になります。

▼白川三雄『みんなではしろう』「こどものとも年少版」2002年6月号(通巻303号)、福音館書店、2002年

武田正/梶山俊夫『さるとびっき』

 この絵本では、地の紙の肌色と黒以外の色は、ごく一部にしか使われていません。そのため、たとえば「さる」と「びっき」が作るお餅の白や「さる」の顔やおしりの赤、季節の移り変わりを表す一筆の緑や茶が、印象深く鮮烈です。それがこの絵本の魅力の一つと思います。

▼武田正 再話/梶山俊夫 画『さるとびっき』「こどものとも(年中向き)」福音館書店、1982年

たむら しげる『ロボットのくにSOS』

 今日は2冊。「ルネくん」と「フープはかせ」と「ゼンマイロボット5ごう」が「ロボットのくに」を救うという物語。この絵本はうちの子どもの大のお気に入りで、もう何十回も読んでいます。全体にわたってコマ割りがされ、またセリフはフキダシになっており、絵本というよりマンガといった方がよいかも。セリフが割と多いので、読み聞かせも大変。でも、ロボットや恐竜など、子どもの好きなものがいろいろ登場します。うちで持っているのは「こどものとも」ですが、1996年に「こどものとも傑作集」として単行本化されています。

▼たむら しげる『ロボットのくにSOS』「こどものとも」1991年1月号(通巻418号)、福音館書店、1991年

いとう ひろし『レーザーこうせんじゅうビービー』

 レーザー光線銃ビービーをおもちゃ屋さんで見つけた「ぼく」。でもお母さんは買ってくれません。そこで、バナナを光線銃に見たてて遊びます。イヌやタバコのおじさんを退治(?)していく様子がおかしいです。最後は「おにいちゃん」との対決。兄弟遊びの描写は、いとうさんの他の絵本にもたしかあって、うちの子どもに教えてもらいました。さすが、よく覚えている(^^;)。

▼いとう ひろし『レーザーこうせんじゅうビービー』童心社、1998年

辻村益朗『かいぶつ ぞろぞろ』

 2冊目はまたまた『かいぶつ ぞろぞろ』。この絵本では、ネーデルランドと日本、それぞれの古い地獄絵が載っていて比較できるようになっています。うちの子どもは、どちらかというとネーデルランドのものが恐いと言っていました。ヨーロッパの地獄絵は恐怖の描写が徹底しているかもしれません。日本のものは、もちろん恐いは恐いのですが、なんとなくユーモラスなところがあります。

▼辻村益朗 構成・文『かいぶつ ぞろぞろ』福音館書店、2004年

くろだ かおる/せな けいこ『ゆうれいとすいか』

 今日は3冊。やっぱり夏といえば幽霊。この絵本の幽霊は、井戸で冷やしていたスイカを食べたばかりに人間の言うことをきかなければならなくなります。せなさんの他のおばけ絵本と同じく、とてもユーモラスな描写。うちの子どもに一番うけていたのは、たくさんの蚊を退治する場面でした。幽霊がどうやって蚊をパチン、パチンとつぶしていくのか、これは見ものです。

▼くろだ かおる 作/せな けいこ 絵『ゆうれいとすいか』ひかりのくに、1997年

瀬川康男『ぼうし』

 なんといったらいいのか、すべてが圧倒的に構築された絵本。何一つとしてゆるがせにしないで徹底的に作り込まれているように感じます。カラーとモノクロ(?)の組み合わせの妙、場面転換のリズム、独自な味わいの字体、幾何学化され抽象化された輪郭、画面に広がっていく不思議な文様、……実に美しい。私がえらそうに言えることではありませんが、まさに一級の芸術作品と思います。しかも、それだけではありません。なおかつユーモラスなところがまたすごい! この絵本、おすすめです。

▼瀬川康男『ぼうし』福音館書店、1987年