今日は2冊。主人公の少年「ウォルター」が夢に見た未来の姿、それはかっこいい自分専用の飛行機もロボットも、食べたいものがボタン一つで出てくる機械もない、荒涼とした地球だったという物語。「ウォルター」が眠るベッドはそのまま未来へと飛んでいき、ごみに埋まったまちや薬品工場の巨大な煙突の上、エベレストの頂上に建つホテルのそば、渋滞でまったくクルマが進まない高速道路やスモッグで何も見えないグランドキャニオンに降り立ちます。未来の悲しい景色は文字のない見開き2ページいっぱいに描かれ、めくったあとのページに文章が付いているという作り。ページを戻りながら読んでいきました。ある意味、ディストピアが描かれているわけですが、絵そのものはむしろ静謐で美しいとすら言えます。だからこそ逆に恐ろしい未来が真に迫ってくるかもしれません。結末は一応ハッピーエンドになっています。ただ、ちょっと教育的すぎるかなあ。ディストピアにしても物語の結末にしても、少々類型的というか、少し抵抗を感じます。原書の刊行は1990年。
▼クリス・ヴァン・オールズバーグ/西郷容子 訳『ゆめのおはなし』徳間書店、1994年
「絵本」カテゴリーアーカイブ
チョン・スンガク『くらやみのくにからきたサプサリ』
訳者の大竹さんの説明によると、「サプサリ」というのは、「鬼神を見つける狗(いぬ)」という意味の名前を持つ韓国固有のイヌだそうです。昔の韓国の人々は、サプサリの絵を家や蔵の門に貼って厄除けにしたとのこと。この絵本は、そのサプサリの由来を韓国の昔話をもとに描いたものです。天にある暗闇の国に火をもたらそうとする「火のいぬ」(のちのサプサリ)の神話。玄武、朱雀、青龍、白虎の四神も登場します。なにより絵が非常に美しい。大竹さんの説明にもありますが、基本的に五方色(赤・黒・白・青・黄)と金で描かれているのですが、鮮やかな色合いで圧倒的な迫力です。浮き彫りにした板(?)を布をおおい、そのあとで彩色してあるとのこと。たしかに画面が立体的に浮かび上がってくるよう。物語がはじまる前と後には、それぞれ見開き2ページを使い、くらやみの世界とひかりの世界が表現されていて、これも印象的です。原書の刊行は1994年。この絵本、おすすめです。
▼チョン・スンガク/大竹聖美 訳『くらやみのくにからきたサプサリ』アートン、2004
秋山あゆ子『くものすおやぶん とりものちょう』
今日は2冊。「くものすおやぶん」こと「おにぐもの あみぞう」と「はえとりの ぴょんきち」が「かくればね さんきょうだい」を追いかけている場面には、「ありがたや」の屋敷内の様子が描かれています。なかなかおもしろいのですが、うちの子どもが不思議がっているのがアリがお風呂に入っているところ。湯舟につかったり流し場で背中を洗っていたりします。たしか、アリは水が苦手だったはず……。でもまあ、そんなことに突っ込んでいたら、他にも突っ込みどころ満載できりがないですね(^^;)。
▼秋山あゆ子『くものすおやぶん とりものちょう』「こどものとも」2003年2月号(通巻563号)、福音館書店、2003年
アネット・チゾン、タラス・テーラー『家の中をのぞいてごらん』
「まほうの色あそび」シリーズ、今回、「ハービィ」はイヌの「アンジェロ」のために新しい犬小屋を作ります。どんな犬小屋がよいか参考にするため、船やまちなかのレンガ造りの家、オフィスビル、お城、動物たちが住んでいる木の家を見ていく、という物語。このシリーズの他の絵本と同じく、紙のページの間に透明なビニールに彩色したページがはさんであり、セルロイドのページをめくることで、いろんな家の中が見えてくるという趣向。ビニールのページは、めくって重なった紙のページにも合うようになっており、おもしろいです。細かく描き込まれた家の中の様子も、意外な発見がいろいろあり、楽しめます。「ハービィ」は、いろいろユニークな犬小屋の設計図を描くのですが、最後に「アンジェロ」が選んだのはどんな犬小屋だったか? ニコリとする結末です。原書の刊行は1972年
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『家の中をのぞいてごらん』評論社、1984年
F・ヤールブソワ/Y・ノルシュテイン『きつねとうさぎ』
今日は2冊。「きつね」に家を取られてしまった「うさぎ」。「おおかみ」や「くま」や「うし」が追い出そうとするのですが、「きつね」の剣幕にみんな逃げ出してしまい、どうしても追い出せないという物語。眼を大きく見開いた「うさぎ」の顔が困った様子をよく表しています。最後は「えっ!」という意外なオチなのですが、うーむ、ちょっと納得できないかも。でもまあ、そもそも「きつね」が強すぎですね。絵はとても渋い色合い。巻末の著者紹介によると、構成を担当しているユーリー・ノルシュテインさんは、国際的に著名なアニメーション作家。絵を描かれているフランチェスカ・ヤールボサワさんは、そのアニメーションの美術監督もされているとのこと。この絵本もアニメーションになっているようです。機会があったら、ぜひ見てみたいです。原書の刊行は2003年。
▼F・ヤールブソワ 絵/Y・ノルシュテイン 構成/児島宏子 訳『きつねとうさぎ』福音館書店、2003年
ジョン・バーニンガム『ねえ、どれが いい?』
やはり、おもしろい。今回も家族みんなで「究極の選択」を楽しみました。前回読んだときとは答えが変わったりします。絵はどことなくユーモラスで楽しい感じなのですが、なかには、びっくりするものも。
ねえ、どれが いい?
へびに まかれるのと、
魚に のまれるのと、
わにに 食べられるのと、
さいに つぶされるのとさ。
この文に付けられた絵では、男の子の足だけがワニの口から出ていたり、サイのおしりの下でぺちゃんこになっていたりします。ちょっとドキッとしますが、とはいえ、そんなに恐くはありません。
どれなら 食べられる?
くものシチュー、
かたつむりのおだんご、
虫のおかゆ、
へびのジュース。
この質問に、うちの子どもは「でも虫を食べるところ(地域)もあるよねえ」なんてつっこみを入れていました(^^;)。
▼ジョン・バーニンガム/まつかわまゆみ 訳『ねえ、どれが いい?』評論社、1983年
荒井良二『そのつもり』
今回、うちの子どもは、リスはどうして「何もしないでこのままがいいと思います」と言ったのかなと考えていました。動物たちの提案を聞いてもリスは「そのつもり」にならなかったんじゃないかというのが、うちの子どもの意見。うーむ、どうかな。みんなが「そのつもり」になっている画面にはリスもいたような気がするけど……。この会議は何かを決めるためではなく「そのつもり」になることが目的なのでは?というのがうちの妻の意見。うーむ、そうかも……。いや、いろいろ考えてしまう絵本です。
▼荒井良二『そのつもり』講談社、1997年
アネット・チゾン、タラス・テーラー『まほうにかかった動物たち』
今日は3冊。うちの子どもは、この絵本、だいぶ気に入ったようです。やはり、ページのめくりと色彩のダイナミズムが秀逸。今回はイヌの「アンジェロ」が船酔いで気持ちが悪くなるところに注目していました。うちの子どもも船酔いはまだ知らないからかな。
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『まほうにかかった動物たち』評論社、1984年
たむらしげる『ネズミのヒコーキ』
おもちゃのヒコーキを見つけた「ネズミ」がそれに乗って飛んでいくお話。ぜんまい式のヒコーキなので、途中で止まって海に落ちたりもしますが、どんどん上昇していきます。簡単なコマ割りやフキダシもあって、マンガのようなところがありますが、見開き2ページをいっぱいに使ったページが随所に入っており、これが印象的。ヒコーキの気持ちよい飛翔を実感できます。
ところで、この絵本は、「あかねピクチャーブックス」シリーズの1冊。奥付に説明があります。
あかねピクチャーブックスは、作家の方々に色版ごとに絵を描いていただき、それを重ねて印刷する特色別版刷りという印刷の方法をとっています。
詳しいことはよく分かりませんが、これは、けっこう手間のかかる方法なんだろうなと思います。とはいえ、たしかにこの絵本は、鮮やかでくっきりとした色合いで、きれいです。
▼たむらしげる『ネズミのヒコーキ』あかね書房、1994年
佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』
今日は2冊。今回、うちの子どもは「ムッシュ・ムニエル」の魔法に注目していました。よく見ると、まちにやってきた「ムッシュ・ムニエル」のうしろでは、ピーナッツが鳥(?)になって飛んでいますし、通りの向こうのクルマもちょっと変なかたち。他にも魔法の描写が描き込まれているかもしれません。
▼佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』絵本館、2000年