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ステファニー・ブレイク『うんちっち』

 主人公は「うさぎのこ」。この子はたった一つの言葉しか言えませんでした。それが、なんと「うんちっち」。お母さんやお父さんやお姉さんが何と言っても、「うんちっち」としか答えません。そんなある日、「うさぎのこ」は「オオカミ」に食べられてしまいます。さあ、いったい「うさぎのこ」はどうなってしまうのか……。

 いやー、これはおもしろい! 最近、読んだ絵本のなかではベストの1冊です。なによりおかしいのが「うんちっち」という言葉。うちの子どもはまず、これに大受けでした。やっぱりねー、汚いものは楽しいんですよね。子どもは、こういう大人が嫌がるような言葉、眉をひそめるような言葉を言いたがるところがあります。この絵本での「うんちっち」の連呼(?)には、大人のつまらない良識を笑い飛ばしてしまう、そんなパワーを感じます。

 そして、ストーリーも実に秀逸。いきなり「オオカミ」に食べられちゃうところにびっくりしました。恐ろしいというのではなく、呆気にとられる感じです。ちなみに、うちの子どもは冷静に一言、「まるのみだね」。

 この急展開のあとも「あっ!」と驚きの物語。もちろん、「うさぎのこ」はちゃんとお父さんやお母さんのもとに帰ってきます。そして、大爆笑のラスト。うちの子どもも大受けでした。どういう結末なのかは、ぜひ読んでほしいと思います。いや、実にすばらしい(?)絵本です。なんというか、突き抜けたおもしろさ!

 いや、考えようによっては、少々乱暴なストーリーとも言えます。どうして「オオカミ」の「おいしゃさん」が「うさぎ」で、しかも、その「おいしゃさん」が他ならぬ「うさぎのこ」のお父さんなのか?とかね。でも、この絵本には、そんなことはお構いなしの力強さがあります。

 それから、主人公の「うさぎのこ」や「オオカミ」の描写も、とてもユーモラス。「うさぎのこ」は、まん丸な眼で、前歯が1本抜けた口を開け、後ろに手で組んで「うんちっち」。単純にかわいいとか愛らしいのではなく、どことなく不気味なところが魅力です。

 ところで、この絵本は、左ページに文字、右ページに絵という作り。左ページの文字はかなり大きく印刷されており、うちの子どもでも読めそうなくらいです。

 で、「うさぎのこ」が言い続ける「うんちっち」なんですが、よーく見ると、一箇所だけ、文字の配置が他と違っています。それは、「オオカミ」が「うさぎのこ」に「ぼうやをたべても いいかい?」とたずねたところ。「うさぎのこ」はもちろん、「うんちっち」と答えるのですが、この「うんちっち」だけ、「うん」と「ちっち」の間にわずかにスペースが空いています。つまり、「うん ちっち」と文字が並べられているわけです。そして、めくった次のページでは、「オオカミ」が「うさぎのこ」をぺろりと食べてしまう。

 なるほどなーと、何だか感心してしまいました。たぶん原書でも、同様な文字配置になっているんでしょうね。要するに、「オオカミ」にとっては、「うん」(つまり「食べていいよ」)と言ったのと同じというわけです。「オオカミ」にとってそのように聞こえたということか、それとも実は「うさぎのこ」自身、「うん」と「ちっち」の間にブレイクを入れて答えたのか……。いやー、なんだか深読みできそうです(^^;)。

 あと、おもしろいなと思ったのは、文字の左ページと絵の右ページの背景色。多くの見開きでは左ページと右ページの背景色が違っており、しかもかなりコントラストの強い配色。背景色のみならず、描かれているものの多くも、眼がチカチカしてくるような強烈な色合いです。

 そんななかで、左ページと右ページの背景色がほとんど同じ見開き画面が幾つかあります。すべてがそうだというわけではありませんが、物語のポイントになるところ、「あっ!」と気持ちが引き込まれるところが、そういう画面構成になっていると思いました。

 当たり前といえば当たり前ですが、色の配置について非常に確信的というか、作り込まれている気がします。

 ところで、今回、子どもと一緒に読むとき「うんちっち」という言葉のイントネーションを少し工夫してみました。あんまり抑制をつけないで、詰まったような感じで、平板に言ってみたのです。我ながら、なかなかおもしろい効果。うちの子どもにかなり受けました。曰く「うんちっちは、全部、その言い方で言って!」。いや、受けてよかったです(^^;)。

 原書”Caca boudin”の刊行は2002年。この絵本、おすすめです。

▼ステファニー・ブレイク/ふしみ みさを 訳『うんちっち』PHP研究所、2005年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフとイッパイアッテナ』

 またまた『ルドルフとイッパイアッテナ』。うちの子どもの大のお気に入りで、去年からもう3回か4回くらい読んでいます。5歳児が読むには難しいところがあると思うのですが、当人は何度読んでもおもしろいみたいで、実に楽しそうに聞いています。

 しばらく前から少しずつ読んできて、今日は第19章、「期待と失望、そしてまた希望」でした。岐阜で飼いネコだった主人公の「ルドルフ」が、ひょんなことから東京にやってきて、そこで「イッパイアッテナ」や「ブッチー」といった仲間に出会う物語。最初は故郷の町の名前(つまり岐阜)も分からなかったのですが、「イッパイアッテナ」の指導のもと文字が読めるようになり、ついに自分のふるさとの名前と場所を知ります。ところが、岐阜はとても遠く、ネコ一匹が帰ることはほとんど不可能。「ルドルフ」は深く失望するのですが、真っ赤な日の出を見るうちに勇気がわいてきます。

日の出だ。

新しい一日が始まる。

まぶしいのをがまんして、ぼくは、のぼりかけた太陽を正面から見すえた。しばらく見ていると、ほんのすこしずつ、太陽がのぼっていくのがわかる。じりじり暗い空気をおしあげていく。そうだ、ああいうふうに、なにがなんでものぼろうとするものは、だれも、おしとどめることはできないのだ。

かならず帰るんだ。そう心にかたく決心することがだいじなんだ。帰れないかもしれないなんて、思ってはいけないのだ。ぼくは、だんだん勇気がわいてきた

 付けられている挿絵は、日の出をじっと見すえる「ルドルフ」の黒い後ろ姿。ここを読んでいて、少し、ぐっときました。

 実は4月から仕事の内容が変わって、格段に忙しくなりました。とにかく目の前の案件をさばいていくだけで、本来自分がすべきことにあまり時間をかけられません。いや、やりがいはあるのですが、でも、なんというか忙しさに埋没しているだけのような気もします。少し立ち止まって、自分の仕事を広い視野で俯瞰する必要があるなあと感じていたのです。

 そんななかで、上記の箇所を読んで「ああ、そうだよなあ」と思ったわけです。何が大事なのかをよく考えて、それを見失わず追い続ける……。

 いやまあ、いい歳をしたおじさんが、あまりに単純で、おバカなんですが(^^;)、でも、たまには、こんなシンプルで熱い気持ちも必要だなと思うのです。

▼斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフとイッパイアッテナ』講談社、1987年

「丸の内ブックカフェ」

 クリップしている東京新聞の記事、飲食しながら絵本が読める「丸の内ブックカフェ」。この取り組み、朝日新聞でもasahi.com: 「絵本の面白さ知って」丸の内ブックカフェ開催中-文化・芸能の記事で取り上げられていました。

 東京、丸の内周辺のカフェ22店が4月16日から5月1日まで、飲食しながら絵本が読める「丸の内ブックカフェ」になるそうです。4月23日の「子ども読書の日」にちなんで、文化庁と大手町・丸の内・有楽町再開発計画推進協議会が共催、朝日新聞社が協力しているとのこと。

 発案者は文化庁長官の河合隼雄さん。「カフェでお父さんたちが読んだらおもろいやないか」ということで始まったのだそうです。カフェに置かれる絵本は計12冊。河合さんや谷川俊太郎さん、斉藤由貴さん、阿川佐和子さんらがセレクト。手にとって自由に読むことができます。お父さん向けの絵本ガイドも用意され、5月1日までは近くの丸善や冨山房書店などの3つの店舗ですぐに購入できるそうです。いや、これは、すごいですね。

 こういう試みを見ると、やっぱり絵本は本当に流行っているんだなあとあらためて実感しますね。従来、絵本がなかった空間にどんどん絵本が入ってきている、そんな印象を受けます。

 その結果として、河合さんが言われているように、日頃あまり絵本に接する機会のないお父さんやサラリーマンの方々が絵本に目を開かれるのなら、それはとても有意義と思います。これをきっかけに、自宅でもお父さんが絵本の読み聞かせを始めるようになるかもしれませんね。

 ただ、一つ気になるのは、こういう取り組みが主に大人に向けてなされていること。上記の河合さんの言にもありますが、絵本をカフェに置いて誰に読んでもらいたいのかといえば、あくまで大人。これで本当によいのかなと少し疑問もわいてきます。

 たとえば、今回の試みに参加したカフェに親子連れが気楽に入っていけるのかどうか。そのカフェで小さな子どもたちが絵本に楽しく接したり、あるいはお父さんやお母さんと一緒に絵本を読めるのかどうか……。もしそうではないなら、いったい、このカフェに置かれている絵本とは何なのだろう? 何かズレているような……。

 まあ、ちょっと考えすぎかもしれません。でも、カフェという空間は、なかなか小さな子ども連れでは入りにくいことが多いんですね。だから、せっかくカフェに絵本を置くなら、そこが同時に子どもたちも楽しく過ごせる場であってほしいと思います。もしかすると、「丸の内ブックカフェ」でも、そういう工夫をしているところがあるのかもしれませんが……。

 あと、今回の試み、共催している文化庁大手町・丸の内・有楽町地区 再開発計画推進協議会のウェブサイトには、とくに情報が見あたりませんでした。私の検索の仕方が悪いのかもしれませんが、参加しているカフェの所在地や連絡先、そこに置かれている絵本の一覧、また誰がどんな絵本をセレクトしたのか、といったことくらいは知りたいところです。まあ、まだ始まったばかりなので、そのうち情報が掲載されるかもしれません。

【追記(2005年5月4日)】

 上記で関係サイトに情報が掲載されていないと書きましたが、どうやら、私の勘違いのようです。この間に情報掲載ページを見つけました。大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会と文部科学省が推進している「丸の内元気文化プロジェクト」のサイト、Marunouchi.comのイベント開催実績一覧のページ、Marunouchi.comです。今回の実施店舗とおすすめ絵本の取り扱い書店のリストが載っていました。

 「丸の内ブックカフェ」は5月1日までなので、もう終了していますが、店舗と書店のリストを引用しておこうと思います。

<丸の内ブックカフェ実施店舗>

  • エクセルシオールカフェ(丸の内トラストタワー店、丸の内ビル店)
  • スターバックスコーヒー(KDDI大手町ビル店、新大手町ビル店、丸の内三菱信託銀行ビル店、JR東京駅日本橋口店、丸の内ビル店、丸の内三菱ビル店、丸の内新東京ビル店)
  • タリーズコーヒー(大手町日本ビル店、丸の内古河ビル店、パシフィックセンチュリープレイス丸の内店)
  • チェーロ(東銀ビル)
  • 三菱電機 DCROSS(三菱電機ビル)
  • フラッグスカフェ(三菱電機ビル)
  • ガストロパブ クーパーズ(三菱ビル)
  • 相田みつを美術館内(東京国際フォーラム)
  • Marunouchi Cafe(新東京ビル)

<お薦めの絵本の取扱書店>

  • 冨山房書店(丸の内MY PLAZA)
  • 丸善(丸の内オアゾ丸の内本店、丸ビル店)

 もしかすると、継続して絵本を置いているカフェもあるかもしれませんね。期間中の反響やその後についても知りたいところです。

長新太『おばけのいちにち』

 「おばけのいちにち」とはいっても、夜の「おばけ」ではありません。この絵本に描かれるのは、朝から夜までの明るい昼間の「おばけ」。

 朝の歯みがき、スーパーで買い物、同じ「おばけ」のお客様とおしゃべり、読書に運動に洗濯と、「おばけ」の日常が長さん一流のナンセンスで描写されていきます。クスクス笑いたくなってくる感じ。

 見開き2ページの中央に、主人公の「おばけ」の家が置かれ、基本的にそのまわりで物語が進んでいきます。おかしいのは、この「おばけ」、顔も足もない、全身緑色ののっぺらぼう。水滴を上下逆にしたようなかたちです。恐いことはまったくなく、むしろポップでかわいいくらいです。

 そして、その「おばけ」のなんとも普通の、しかしどこか奇妙な日常が実にユーモラス。うちの子どももゲラゲラ笑っていました。とくにおもしろがっていたのは、「おばけ」の歯ブラシと野球の練習。あと「おばけ」のパンツにも大受けでした(^^;)。

 長さんの絵本を読むといつも思うことですが、いったい、どこからこんな発想が飛び出してくるんだろうというくらい、アタマがクラクラしてきます。いや、もちろん、それが楽しくて長さんの絵本を手に取るわけですが(^^;)、なんだか良質のトリップのようなものかもしれませんね(なんていうと失礼かな)。

 それはともかく、この絵本で、おもしろいなと思ったのは、「おばけ」の家のまわりに描き込まれている生き物たち。近くに小さな池があって、魚やカエルやザリガニが見え隠れしています。蝶や鳥も飛んでいます。ネコもやってきて「おばけ」とけんかをするんですが、それ以外は、とても平和でのどかなんですね。これも「おばけ」とのギャップがあって、おもしろいです。

 あと、ラストページも必見。たいへん美しい夜の訪れです。

▼長新太『おばけのいちにち』偕成社、1986年

長谷川摂子/荒井良二『へっこきあねさ』

 これはおもしろい! 大工の「あんにゃ」と「ばあさ」の二人暮らしの家に嫁に来た「あねさ」、実はたいへんな屁の持ち主だったという物語。

 まずは音がすごい。品のない話で恐縮ですが、「ぷっ」とか「ぶっ」とか「ぶぶっ」とか、そんな半端なものではありません。

どっばーん!
だっばーん!
でっぼーん!

辺り一面に響き渡る、文字通り破格の音なのです。たとえば大砲をどかーんと撃つような感じでしょうか。

 活字で組まれた文章のなかで、この屁の音だけ、手書き文字。しかも、だいぶ大きく書かれています。音の豪快さがよく伝わってきます。また、声に出してみると、これが実に開放的。うちの子どもと一緒に読むとき、かなり気合いを入れて言ってみました。うーむ、楽しいぞ!(^^;)

 さらに、屁の「かぜ」が強烈。「ばあさ」は天井まで吹っ飛ばされ、柿の木にみまえば実が一つ残らず落ちてくるし、渡し船は川の向こうまで流されます。いやはや、すさまじい。というか、たいへん便利な屁です(^^;)。

 そして、何よりも驚いたのが、この「あねさ」、屁をただぶっ放すだけではないこと。こ、これは、すごすぎる! 何がすごいのかは、ぜひ読んでみて下さい。まさに驚愕、呆気にとられること間違いなしです。

 荒井さんの絵は、「あねさ」の描き方が秀逸。だってね、気立てがよさそうな可愛い娘さんが、着物の裾をまくって、白いおしりを天に突き出し、どっかーんと屁をこいているのです。絵本のなかでこんな描写、古今東西、はじめてではないでしょうか。いや、冗談抜きで、すばらしいと思います。ある意味、絵本の世界を一つ広げたと言える気がします。

 屁そのものは、当然ながら(?)主に黄色を使って描かれているのですが、汚いということはありません。少し蛍光の入った透明感のある黄色です。この彩色は、あっけらかんとした大らかな物語によく合っていると思いました。

 ところで、屁、といえば、臭いはいったいどうなのか? 絵をよーく見ると、どうやら、やっぱり臭いようです(^^;)。

 うちの子どもは、「あねさ」の豪快なおならに、ゲラゲラ、ウヒウヒ、大受けしていました。この絵本、下ネタはダメという人には向きませんが、そうでなければ、おすすめです。

▼長谷川摂子 文/荒井良二 絵『へっこきあねさ』岩波書店、2004年、[装丁:桂川潤]

赤羽末吉『へそとりごろべえ』

 「おへそがえる・ごん」シリーズの第三巻『おへそがえる・ごん 3 こしぬけとのさまの巻』に登場する、かみなりの「へそとりごろべえ」。どうやらこの絵本が初出のようです。

 家宝の「へそとりき」を使って、タヌキやネズミやライオン、ゾウ、クジラ、桃太郎に鬼ヶ島の鬼、果ては関取から大仏まで、どんどん、おへそを取っていくという物語。最後は、あっと驚きのオチが待っています。

 この「へそとりき」、「おへそがえる・ごん」シリーズでもそうでしたが、まさにビールの栓抜きなんですね。なんともおかしいのですが、妙に説得力があります。少し力を込めれば、たしかに「くりんくりんと」おへそがくり抜けそう。

 また、「へそとりごろべえ」が乗っている雲は、自動車か何かのようにハンドルがついており、雷の音を出す太鼓もどうやら全自動。けっこう機械化が進んでいます(^^;)。

 それから、冒頭で「ごろべえ」は、おへそについて次のように語っていました。

おれは おへそが
だいすきだ
あまくて しょっぱっくって
こーり こり
うふふ たべたいなー

 コリコリしていて、しょっぱい……うーむ、なるほど。たしかにそんな気がしてきます。というか、口のなかに唾液がたまってきました(^^;)。

 おへそを取られた動物や人間たちは、口をぱかっと開けて間が抜けた表情。おへそがあった辺りは赤くなっています。そして、「ごろべえ」は、取ったおへそを手に持ち、舌なんか出したりして、茶目っ気たっぷりに描かれています。

 ところで、この絵本は童心社の「詩の絵本」シリーズの1冊。文中には「ごーろごろーのぴーか ぴか」「こーり こり」など同じフレーズが繰り返され、とてもリズミカル。あと、おへそを取るときの「ねいろ」が一つ一つ個性的で、こちらの表現もおもしろい。

 うちの子どもは「へそとりごろべえ」がはいているパンツに注目していました。「あ、トラのしましまパンツじゃない!」。そうなんです。縞パンは縞パンですが、トラ縞ではありません。うちの子どもは、カミナリといったらトラ縞だろうと思っていたみたいです。

 あと、うちの子どもは「へそとりごろべえ」が鬼のおへそを取るところにも反応していました。曰く「他のはよくないけど、鬼のおへそを取るのはいいよねえ」。なるほどね。なんだか共食いみたいですが、そんなふうにも考えられるかも。

 この絵本、絵も文章も楽しく、おすすめです。

▼赤羽末吉 詩・画『へそとりごろべえ』童心社、1978年

「パパとあそぼう」:お父さんの育児講座

 クリップしている朝日新聞の記事、子育て支援センターで講座 asahi.com : マイタウン熊本 – 朝日新聞地域情報。熊本市の総合子育て支援センターが、毎月第二土曜日に、父親向けの育児講座「パパとあそぼう」を開いているそうです。内容は、おもちゃ作りなどで、絵本の読み聞かせ指導もあります。

 なかなか楽しそうなのですが、参加者がとても少なく、平均2、3人にとどまるとのこと。記事で取り上げられていた4月9日はたったの1人(1組)だけです。

 まあ、土曜日とはいっても仕事が忙しく、時間がとれないお父さんが多いかもしれませんね。

 あるいは、講座の存在がまだあまり知られていないのかも。検索してみると、熊本市子育て支援ホームページがありました。ざっと見たかぎりでは、4・5月の予定表には記載されていましたが、専用ページは見つかりませんでした。せっかくなので、もう少し情報を掲載した方がよいように思います。

 また、講座の内容を少し工夫すると、参加者が増えるかもしれませんね。どちらかといえば、屋内での遊びではなく、外遊びを中心にプログラムを組むと参加しやすいかもと思いました。

 あと、それなりに意識はあっても、講座にまで出かけるのはちょっと、と抵抗を感じているお父さんが多いんじゃないかな。何となく恥ずかしいとか、あるいは、講座でわざわざ「教えて」もらわなくても大丈夫!といった意識もあるでしょう。

 でも、たとえば私のばあい、絵本はともかく、それ以外の遊びについては、正直言って、あまり自信ないです。自分の父親の世代と比べるなら、遊びのノウハウが足りないなあと感じています。だから、こういう講座はとても貴重。潜在的ニーズはかなりあると思うのですが、どうでしょう。

 それに、記事のなかで紹介されている、参加したお父さんの次の言葉も大事ですね。

参加の動機は、子供を預かることで奥さんの息抜きになればと思ったからという。

 お母さんにとって、自分の時間がほしいというのは本当に切実と思います。私なんか、ぜんぜん妻の負担を軽減できていなくてダメなんですが、お父さんがこういう講座に参加して少しでも子育てに参加すると、だいぶ違ってくると思います。

 しかしまあ、よそのことをとやかく言う前に、自分こそ、しっかりしないとね。

飯野和好さんの「出会い」

 クリップしている読売新聞の記事、好きなように描いた幼時: あのころ : 育む : 教育 : Yomiuri On-Line (読売新聞)。飯野和好さんが、小さいころから絵本作家になるまでを語られています。

 秩父でのチャンバラごっこ、中学のときの初恋、高校に1日しか行っていないことなど、生活史的背景がうかがえるのですが、とくに興味深いのが数々の出会い。中学で初恋の女性に惹かれて美術部に入ったこと、高崎市のデパートに勤めて売り場の広告を描いていたころに出入りの業者に絵の勉強を勧められたこと、セツ・モードセミナーでの長沢節さんの言葉、堀内誠一さんに言われたこと、など、いろんな人との出会いを通じて、絵本作家としての飯野さんが生まれたことが分かります。

 たとえば高崎市のデパートで出入りの業者に会わなかったら……、絵の勉強でセツ・モードセミナーに入っていなかったら……、あるいは堀内誠一さんに出会ってそのファンタジー論を読んでなかったらどうなったか。最初から絵本作家を目指していたわけではなく、いわば偶然の出会いを経て、飯野さんのいまの時代劇絵本が誕生したと言えそうです。

 もともと持っている能力や素質は大きいにしても、どんな人に出会うか、またその出会いから何を自分のものとするかが、その人の人生を決めていくのかもしれませんね。

お父さんのための書店の絵本コーナー

 クリップしている記事、パパ絵本読んで! 書店に特設売り場 職場へ配達 : 出版トピック : 本よみうり堂 : Yomiuri On-Line (読売新聞)。お父さんと絵本を結びつける取り組み、かなり広がっているようです。リードを引用します。

父親が子どもと絵本を読む機会を増やしてもらおうと、書店や父親グループが様々な取り組みを行っている。

 本文で取り上げられているのは、ご存じ、絵本ナビ パパ’s絵本プロジェクト。そして、全国に約150店舗ある未来屋書店での取り組みです。

 未来屋書店では、先日出版された「パパ’s絵本プロジェクト」の『絵本であそぼ!』(小学館)で紹介されている絵本、70~80冊をセレクト。書店の中央の目立つ場所に、父親向けの絵本コーナーを設置したそうです。掲載されている写真を見ると、表紙を前に出して絵本がずらっと並べられています。これは、すごい! 店舗の担当者の方のお話も載っていましたが、「このコーナーを設けたことで、会社帰りにスーツ姿で絵本を買っていく男性も増えた」とのこと。

 「パパ’s絵本プロジェクト」関連だと、メンバーで絵本ナビ事務局の金柿秀幸さんが編集された『幸せの絵本』についても、リブロ池袋本店や東京・浜松町のブックストア談でフェアが開催されている(された)そうです。金柿さんのウェブログ、Making of 『幸せの絵本』に記事が書かれていました。

 お父さんと絵本を結びつける取り組み、個々の書店に徐々に浸透していることが分かります。お父さんにとって、絵本がどんどん身近になっていることの表れとも言えそうです。

 また、こういう取り組みは、書店にとって、たぶんメリットがあるんじゃないかなと思いました。少々うがった見方かもしれませんが、話題になりますし、なにより新しい購買者を発掘できますよね。

 上記の記事では、お父さんの職場に定期的に絵本を届ける、絵本ナビのサービス、絵本ナビ 絵本クラブも紹介されていました。現在、60人ほどが利用しているそうです。

 子どもと一緒に絵本を読むことの楽しさ・おもしろさ、これは一度知ってしまうと、もう病みつきです(^^;)。そのうち、お父さんが子どもと一緒に絵本を読むことは、別に特別なことではなく、当たり前のことになるんじゃないかな。

TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)の「タリーズ・ピクチャーブックアワード」

 先日、タリーズコーヒーに偶然たちよったときのこと。カウンターの前に見慣れない絵本が数冊、並んでいるのです。なんだろうと思い、店員さんに聞いてみたところ、「タリーズ・ピクチャーブックアワード 2004」の受賞作とのこと。説明の載っている「TULLY’S TIMES」をもらって帰りました。

 それによると、このプロジェクトは、タリーズコーヒーの経営理念の一つである「子どもたち青少年の育成を促すために、地域社会に貢献する」に基づいてはじまったそうです。「絵本を通じて若手アーティストを発掘・育成し、またその絵本を読む子どもたちへ夢や希望を与えたい」というのがプロジェクトの主旨で、2003年が第一回、2004年は二回目の開催。

 TULLY’S COFFEE のサイトを検索してみると、次のページが見つかりました。

 上記のページによると、応募資格は「プロアマ・国籍・職業については不問。年齢35歳未満」。つまり、若手の発掘ということです。このアワードから、将来の絵本作家が生まれるかもしれませんね。

 あと、審査・選考は、タリーズコーヒーの来客者約300人と保育園の園児約100人によっておこなわれたそうです。絵本の専門家による審査ではなく、一般の方や子どもたちが審査するというのは、なかなかおもしろいですね。この手の公募としては珍しいかもしれません。

 受賞作はタリーズコーヒーの店舗で販売されるほか、上記のオンラインショップでも購入できるようです。ただ、2004年の入賞5作品は、現在すべて品切れ入荷待ちの状態。かなりの人気です。上記のオンラインショップでは「作者から子どもたちへのメッセージ」も読むことができます。

 絵本の売り上げの一部は、NGO 子どもたちのための国際援助団体:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに寄付するそうです。サイトをのぞいてみると、タリーズコーヒーも協賛企業の一つに挙がっていました。

 また、「TULLY’S TIMES」に載っていたのですが、タリーズコーヒーでは、絵本やおもちゃなどを用意したキッズコーナーを設置した店舗があるそうです。首都圏を中心に2005年3月現在で12店舗とのこと。アワードの受賞作品はこのキッズコーナーにも並べられるそうです。

 以上の取り組み、企業のいわゆる社会貢献活動の一つと言えます。絵本に焦点を当てたメセナは割と珍しい気がしますが、どうなんでしょう。そのうち時間があったら調べてみたいです。

 なんとなく思ったのですが、こういったメセナが行われるようになったのも、近年の絵本ブームが一つの契機になっているのかな。絵本作家を目指す人たちがそれなりに厚みのある層をなしており、また絵本を受容する側もより関心が高まり、しかも幅が広がっていること。絵本をめぐるこうした社会状況の変化を背景にして、一般企業がメセナの対象に絵本を加えるようになったのかもと考えました。

 でもまあ、もう少し調べてみないと分かりませんね。いいかげんなことは言えません(^^;)。

 それはともかく、2004年の受賞作のラインナップでは、最優秀作品賞を受賞した池内梢さんの『プンクトとことりたち』のほか、西村博子さんの『ここだよ!』と見杉宗則さんの『どうぶつむらのうんどうかい』がおもしろそう。次の機会があったら、タリーズコーヒーで読んでみたいです。