月別アーカイブ: 2004年10月

デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』

 今日は2冊。この絵本、うちの子どもはかなり気に入ったようです。今回もまた、主人公の男の子と雲たちの会話をいろいろ作り、読み聞かせをしました。当然ながら、毎回、言葉遣いや表現が変わり、それに応じて絵のニュアンスも変わってきて、なかなか新鮮です。今回うちの子どもといっしょに発見したのは、主人公の男の子のオーバーコートのポケットには、物語の最初から紙と鉛筆が入っていて、そこにはどうも魚の絵が描いてあること。伏線が張ってあって、おもしろいです。こういうところもこの絵本の魅力かなと思います。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年

佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルのサーカス』

 「ムニエル」は、今回、サーカスでいろいろ魔法を披露するのですが、やっぱり一番驚くのはゾウですね。「だんちょうも、ムニエルも、これには ゾーッとしました。」なんて、ちと「さむい」駄洒落まで付いています。
 ちょっと思ったのですが、佐々木さんの絵は、動きのあるものを静止画で切り取っていて、それが独特の浮遊感というか、間のおもしろさを生んでいます。あ、そうか。たとえばマンガだったら、動きのあるものにはいろいろ線が描き込まれ、そのスピードやベクトルを表すわけですが、佐々木さんの絵にはそれがほとんどありません。だから、空中に浮いているような止まっているような微妙な表現になるのかなと思います。
 というか、これは、佐々木さんの絵本に限らず、絵本一般の表現とマンガの表現の大きな違いの一つなのかもしれません。
▼佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルのサーカス』絵本館、2000年

片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』

 今日は2冊。これからだんだん秋が深まっていきますが、この季節にぴったりなのが『たのしいふゆごもり』。久しぶりに読みました。やはり、すばらしい。
 一番最初の見開き2ページ、色づいた秋の森が画面いっぱいに広がっています。ため息の出る美しさです。子グマが暖炉の前でぬいぐるみを抱いて眠っている様子は、何度読んでも、なんとも言えないほどかわいく愛らしい。その前のページでは初雪が描かれているのですが、これがまた、最初は窓の外にそれとなく描き込まれ、ページをめくると見開き2ページいっぱいに静かに雪が降りてきます。この画面の流れにもため息が出ます。そして、ラスト、お母さんが眠ってしまったあと、ベッドのなかで子グマだけがぬいぐるみといっしょに起きているのですが、めくった次のページに描かれるのはぐっすりと眠る子グマ。閉じた裏表紙には、すっかり雪が積もっている様子が描写されています。最後の最後まで時間が流れていき、ゆっくりと眠りにつく冬ごもりが、ページをめくるというアクションのなかで浮かび上がってくるように感じます。
 ところで、読んでいて子どもといっしょに気付いたのですが、一番最初の秋の森を描いた画面やまた魚とりの画面には、川のほとりに小さく動物が描き込まれています。他の動物たちも冬ごもりの準備でしょうか。また、よーく見ると、クマの親子が住んでいる大きな木には煙突が付いており、それには目と口が描かれています。なんだか笑っているよう。
 うちの子どもが今日、興味を持ったのは綿つみの場面。「この綿にさわってみたいなあ」と興味津々でした。
▼片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』福音館書店、1991年

安野光雅『さかさま』

 今日は1冊。トランプの家から出てきた兵隊たちが、どちらがさかさまなのか、けんかをするお話。たとえばエッシャーのそれのように、どの絵も、部分的に上下が逆転し、空間がねじれていて、おもしろい。見開き2ページを180度回転させながら読んでいきました。なんだかアタマがくらくらしてきます。ラストページは地球。まるい地球のうえにいるから、誰もがみんな上下さかさまってことかもしれませんね。
 ところで、うちの子どもが気が付いたのですが、どのページにも必ずジョーカーが登場します。「あ、ここにいる!」とそのつど見つけて楽しみました。あと、裏表紙が必見です。まさに「さかさま」。この絵本、おすすめです。
▼安野光雅『さかさま』福音館書店、1969年

デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』

 今日は、ラストページに描かれている、主人公の男の子の部屋に注目。うちの子ども曰く「お魚ばっかりだねえ」。たしかに、魚介類をモチーフにしたいろんなものが部屋に飾ってあります。なるほど。主人公の男の子は魚介類ファン(?)で、だから、魚介類のかたちの雲を描いたというわけですね。とすると、一番最初のページで、男の子がバスの窓に指でなぞって魚を描いていたのも理解できます。いろいろ伏線が張ってあって、おもしろいです。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年

ジョン・バーニンガム『ショッピング・バスケット』

 今日は2冊。お母さんにおつかいを頼まれた「スティーブン」、ところが途中でいろいろな動物たちが品物をよこせと言ってきます。それを切り抜けていく物語。どの動物もけっこう乱暴で、なんというか、まちなかでカツアゲをしているような描写。「スティーブン」の肩に手をおいて顔を近づけ、すごんでいます。うーむ、こういうのって私が中学生のときにもいたなあ。これに対し「スティーブン」はいつも沈着冷静、創意工夫で突破していきます。でも、結局は、買ったばかりの品物を一つずつなくしていくのですが……。
 基本的に見開き2ページで動物たちが「スティーブン」にすごんでいる場面が描かれ、めくった次の見開き2ページで「スティーブン」がそれをどう切り抜けたのかが描写されています。緊張と解放が交互に現れ、次はどうなるんだろうと楽しめます。最初の方のページには「スティーブン」が動物たちに出会う場所があかじめ描写されており、また一つずつなくなっていく品物もそのつど描かれていて、これもおもしろい作り。あ、カツアゲなんて書きましたが、絵はとてもユーモラスで、恐いということはないです。原書の刊行は1980年。
▼ジョン・バーニンガム/青山南 訳『ショッピング・バスケット』ほるぷ出版、1993年、[表紙デザイン:羽島一希]

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフといくねこくるねこ』

 最近は読む絵本が1冊のことが多いのですが、その理由がこれ。しばらく前にNHK教育の「テレビ絵本」で取り上げられ、それを見ていたうちの子どもは、ぜひ読んでみたいと言うので、図書館から借りてきました。毎日1章ずつ読んでいって、ようやく今日、読了。1章ずつとはいっても、絵本とは格段に文章量が多いため、これ以外に読む絵本は1冊くらいにしています。
 もともとこの本は、小学生の中学年向き。挿し絵も少ないですし、内容も幼児にとっては難しいと思うのですが、5歳のうちの子どもは楽しんで聞いています。「分からないといえば分からないけど、でも、おもしろい」と言っていました。「テレビ絵本」で一回見ているので、理解が容易なのかもしれません。
 分量が多いので、物語の最初の部分はうちの妻が昼間にも読んでいて、夜は私が担当。そのため、私も物語の全体がよく分かっていません(^^;)。読み聞かせのやり方としては、あまりよくないかもしれませんね。とはいえ、後半はほとんどすべて私が読んだので、最後のいくつかの章は、子どもといっしょにだいぶ盛り上がりました。なかなかおもしろかったです。
 この本はシリーズの三作目。で、うちの子どもは、今度はシリーズの一作目と二作目を読んでみたいと言っているので、また図書館から借りる予定です。まあ、とにかく文章量が多いので、なかなかたいへんです。
▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフといくねこくるねこ』講談社、2002年

ウィリアム・スタイグ『ザバジャバ ジャングル』

 今日は1冊。やはり謎の多い物語。「へんてとこなトリ」(どうも「フローラ」という名前らしい)はどうして「レオナルド」を助けたんだろう? 「レオナルド」はなぜ動物の裁判にかけられたんだろう? 「レオナルド」のお母さんとお父さんはどうして捕まっていたんだろう? いろいろサイドストーリーがありそうな感じです。それにしても、「レオナルド」、いつも沈着冷静、果敢に前に進んでいく姿はなんだか大人びていて、りっぱ。でも、物語のラストでお父さんやお母さんといっしょになる場面では、笑みが広がり、子どもらしい表情です。
▼ウィリアム・スタイグ/おがわえつこ 訳『ザバジャバ ジャングル』セーラー出版、1989年

もとしたいずみ/荒井良二『すっぽんぽんのすけ デパートへいくのまき』

 「すっぽんぽんのすけ」シリーズの第3弾。今回、「すっぽんぽんのすけ」は「おかあさん」と一緒にデパートに出かけるのですが、そこに現れるのが、ご存じ、イヌの忍者たち。大暴れをする忍者たちに、「すっぽんぽんのすけ」が立ち向かいます。
 第1弾はお風呂上がり、第2弾は銭湯と、これまでのところハダカなのが当たり前の舞台でしたが、今回はお客さんがいっぱいいる、まちなかのデパート。いったいどうやって「すっぽんぽんのすけ」に変身(?)するのかと思ったら、なるほどねーのアイデア。つまり、スーパーマンですね。
 でも、そうはいっても真っ裸なわけで、それに声援(?)を送るお客さんや店員さんが、なんともおかしい(^^;)。みんな当たり前に接しているんですね。
 そんななか、今回、注目なのが「係長」。いや、何のセリフもありませんし、文章中にもまったく出てこないのですが、絵のなかにだけ描き込まれている人物です。メガネをかけて七三分け、割と真面目そう。この「係長」だけは、なぜか「すっぽんぽんのすけ」が「すっぽんぽん」であることに焦りまくり、汗をダラダラ流して、表情豊かに反応しています。この「係長」のリアクションを見ているだけで、いろいろ伝わってきます(^^;)。あるいは、裏の主人公かも。
 うちの子どもは、「すっぽんぽんのすけ」の術に突っ込みを入れていました。「返しの術だけだねえ」。相手が攻撃してこないと使えないという、考えてみれば不思議な術ですね。
 あと、「すっぽんぽんのすけ」の「おかあさん」、洋服選びに夢中で、自分の息子がどうなっているのか、まったく分かっていません。いいかげん気付けよ!って感じです(^^;)。
▼もとしたいずみ 作/荒井良二 絵『すっぽんぽんのすけ デパートへいくのまき』鈴木出版、2004年

佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルのサーカス』

 今日は2冊。この絵本は「ムッシュ・ムニエル」シリーズの1冊。ひょんなことでサーカスの一員になった「ムニエル」が、いろんな魔法を見せる物語。たくさんの魔法の呪文を使うのですが、同じ呪文でも一つが成功すると別のものがおかしくなって、サーカスは大混乱。絵は以前読んだものよりもだいぶマンガ的。コマ割りやセリフのフキダシがけっこうあります。とはいえ、魔法の結果がめくった次のページに描かれており、めくったときのインパクトがおもしろいです。
▼佐々木マキ『ムッシュ・ムニエルのサーカス』絵本館、2000年