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デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』

 今日は2冊。この絵本、うちの子どもはかなり気に入ったようです。今回もまた、主人公の男の子と雲たちの会話をいろいろ作り、読み聞かせをしました。当然ながら、毎回、言葉遣いや表現が変わり、それに応じて絵のニュアンスも変わってきて、なかなか新鮮です。今回うちの子どもといっしょに発見したのは、主人公の男の子のオーバーコートのポケットには、物語の最初から紙と鉛筆が入っていて、そこにはどうも魚の絵が描いてあること。伏線が張ってあって、おもしろいです。こういうところもこの絵本の魅力かなと思います。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年

デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』

 今日は、ラストページに描かれている、主人公の男の子の部屋に注目。うちの子ども曰く「お魚ばっかりだねえ」。たしかに、魚介類をモチーフにしたいろんなものが部屋に飾ってあります。なるほど。主人公の男の子は魚介類ファン(?)で、だから、魚介類のかたちの雲を描いたというわけですね。とすると、一番最初のページで、男の子がバスの窓に指でなぞって魚を描いていたのも理解できます。いろいろ伏線が張ってあって、おもしろいです。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年

デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』

 ある日、学校の課外授業でニューヨークのエンパイア・ステートビルを訪れた男の子。展望台で小さなの雲の子と出会います。雲の子に載って空に飛び立った男の子がたどり着いたのは「セクター7」、ニューヨークの周辺地域にさまざまな雲を送り出し管理する空中浮遊施設。そこで巻き起こる騒動が描かれています。
 この絵本は、文字がなく絵のみ。そのため、絵を見ながら自分でストーリーと会話を考えて読み聞かせをしました。これがなかなかおもしろい。なにより絵がとても魅力的で、まるで一編の映画を見ているよう。文章を考えるのにも、まったく苦労しません。いろいろ細部を発見しながら読み聞かせに工夫することもできます。
 絵は、ふわふわ浮かぶ雲の描写も表情豊かで素晴らしいのですが、心引かれるのはやはり、タイトルにもなっている「セクター7」。お城のように巨大な空中浮遊施設で、そのメカニックな造形は、ハイテクというよりは、どことなく懐かしさを感じます。プロペラや風車、人力の大きなボード、職員たちはクリップにコルクボードで鉛筆を使い、古い型の受話器にスタンド、雲のスタイルが描かれた青写真の図面……。施設の内部は古いつくりの大きな駅を思い起こさせます。こういういわば人間(?)くさい部分が物語の楽しい結末にも生きているような気がします。
 カバーの著者紹介によると、ウィーズナーさんは、この絵本のために視界ゼロの日を選んでエンパイア・ステートビルを訪れたのだそうです。その日にビルの展望台にはウィーズナーさん一人だったとのこと。原書の刊行は1999年。この絵本、おすすめです。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年