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斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフとイッパイアッテナ』

 またまた『ルドルフとイッパイアッテナ』。うちの子どもの大のお気に入りで、去年からもう3回か4回くらい読んでいます。5歳児が読むには難しいところがあると思うのですが、当人は何度読んでもおもしろいみたいで、実に楽しそうに聞いています。

 しばらく前から少しずつ読んできて、今日は第19章、「期待と失望、そしてまた希望」でした。岐阜で飼いネコだった主人公の「ルドルフ」が、ひょんなことから東京にやってきて、そこで「イッパイアッテナ」や「ブッチー」といった仲間に出会う物語。最初は故郷の町の名前(つまり岐阜)も分からなかったのですが、「イッパイアッテナ」の指導のもと文字が読めるようになり、ついに自分のふるさとの名前と場所を知ります。ところが、岐阜はとても遠く、ネコ一匹が帰ることはほとんど不可能。「ルドルフ」は深く失望するのですが、真っ赤な日の出を見るうちに勇気がわいてきます。

日の出だ。

新しい一日が始まる。

まぶしいのをがまんして、ぼくは、のぼりかけた太陽を正面から見すえた。しばらく見ていると、ほんのすこしずつ、太陽がのぼっていくのがわかる。じりじり暗い空気をおしあげていく。そうだ、ああいうふうに、なにがなんでものぼろうとするものは、だれも、おしとどめることはできないのだ。

かならず帰るんだ。そう心にかたく決心することがだいじなんだ。帰れないかもしれないなんて、思ってはいけないのだ。ぼくは、だんだん勇気がわいてきた

 付けられている挿絵は、日の出をじっと見すえる「ルドルフ」の黒い後ろ姿。ここを読んでいて、少し、ぐっときました。

 実は4月から仕事の内容が変わって、格段に忙しくなりました。とにかく目の前の案件をさばいていくだけで、本来自分がすべきことにあまり時間をかけられません。いや、やりがいはあるのですが、でも、なんというか忙しさに埋没しているだけのような気もします。少し立ち止まって、自分の仕事を広い視野で俯瞰する必要があるなあと感じていたのです。

 そんななかで、上記の箇所を読んで「ああ、そうだよなあ」と思ったわけです。何が大事なのかをよく考えて、それを見失わず追い続ける……。

 いやまあ、いい歳をしたおじさんが、あまりに単純で、おバカなんですが(^^;)、でも、たまには、こんなシンプルで熱い気持ちも必要だなと思うのです。

▼斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフとイッパイアッテナ』講談社、1987年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・タリスマン・ガネット『エルマーと16ぴきのりゅう』

 この間に少しずつ読んでいた「エルマー」シリーズの第三巻、読み終わりました。「どうぶつ島」と「カナリヤ島」の冒険から家に帰った「エルマー」。「りゅう」もまた家族の待つ「そらいろこうげん」に戻るのですが、15匹の家族たちは人間に追いつめられ危機に陥ってしまいます。「エルマー」は助けを求めてきた「りゅう」に再会し、一緒に「そらいろこうげん」に向かう、という物語。

 今回もまた「エルマー」は創意工夫で「りゅう」の家族たちを救い出します。文中では、第一巻や第二巻と同じく、作戦に必要なアイテムがいろいろ細かく描写されていました。これをどう活用するんだろうと読み進めていくと、なかなか手の込んだ、しかも楽しい計略。けっこう緊迫する場面もあり、うちの子どもは集中して聞いていました。

 この描写の細かさ、とくに数字の細かさは、「エルマー」シリーズの特徴の一つですね。第二巻では「エルマー」の食べる「みかん」の数がそのつどカウントされていましたが、第三巻では食べ物に加えて、「りゅう」の家族の数や「エルマー」の持つお金もきちんと計算されています。几帳面というか、救出のための周到な準備とも相まって、ある種の合理性を表しているような印象を持ちました。

 しかし、「エルマー」、やっぱり食べ過ぎのような……。いくら大冒険のあととはいえ、一度にあんなに目玉焼きを食べて大丈夫なんだろうか(^^;)。

 ところで、今回登場する「りゅう」の家族は、なかなかユニーク。数ページにわたって続く挿絵では、「たいそう」の楽しいポーズをとった「りゅう」たち一匹一匹がきちんと描かれています。「たいそうのめいじん」の「りゅう」というのも、おもしろい。うちの子どもは、「りゅう」たちの模様と本文中の説明を照らし合わせていました。楽しい趣向です。

 荒々しいと思われている「りゅう」が実はそうではないこと、人間の都合によって恐そうなイメージが作り上げられているだけであること、このあたりの説明も考えてみれば意味深ですね。当たり前と思われていることがただの思い込みであり、しかもそれは実は誰かの利益となるために捏造されたもの……こういう類の事例は身の回りにたくさんあるかと思います。

 それはともかく、へぇーっと思ったのは、第三巻になってはじめて「りゅう」の名前が明かされること。あらためて気が付いたのですが、たしかに第一巻と第二巻では名前が書かれていませんでした。恥ずかしくて言えなかったのだそうです(^^;)。

 あと、「エルマー」と「りゅう」の友情もなかなか印象的。とくに再会の場面と最後のお別れの場面。文中では実にさらりと描かれているのですが、ともに困難を乗り越えてきた仲間です。その絆が、付けられた挿絵や、またとくに表紙のイラストによく表れているように感じました。

 「エルマー」シリーズ、これでおしまいと思うと少し残念です。うちの子どもも「続きがあるといいのにねえ」と言っていました。「エルマー」と「りゅう」、また脇役の「ねこ」や「りゅう」の家族、まだまだいろんな物語が待っていそうな印象なのです。でも、これでおしまい。

 原書”The Dragons of Blueland”の刊行は1951年。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・タリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーと16ぴきのりゅう』福音館書店、1965年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーとりゅう』

 「エルマー」シリーズの第2巻、読み終わりました。第1巻は危機また危機の冒険物語でしたが、今度は宝探し。「どうぶつ島」を脱出した「エルマー」と「りゅう」は家に帰る途中ひどい嵐にあい、小さな島に降り立ちます。そこは逃げたカナリヤたちが住んでいる「カナリヤ島」。「エルマー」は、カナリヤたちがかかっている「しりたがりのでんせんびょう」を直すという物語。

 この「しりたがりのびょうき」、ナンセンスでおかしいのですが、なんとなく分かるような。誰かが秘密にしていると、こちらも知りたくなってくる、そういう心理はたしかにあります。

 ところで、今回うちの家族の大疑問は「エルマーはみかんを食べ過ぎなんじゃないか?」。というのも、「エルマー」、たまにはキャンデーも食べていますが、ほとんど、みかんしか食べていません。しかも、一回に19個とか11個とか15個とか、ありえない数。数字がきちんと記録されているのも、なんだかおかしいのですが、それにしても、こんなにみかんばかり食べていて本当に大丈夫なんだろうかと、要らぬ心配をしてしまいます(^^;)。

 うちの子ども曰く「そうだよねえ。みかんばかり食べていると、おしっこが出るよねえ。あ、でも、エルマー、おしっこも、うんこも、してないね。なんでだろう」。うーん、鋭い! というか、まあ、「エルマー」がおしっこやうんこをしている場面を読みたいかって感じですね。

 いや、きたない話でスミマセン。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編集『エルマーとりゅう』福音館書店、1964年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーとりゅう』

 「エルマー」シリーズの第二作、今日から読みはじめました。今回も物語のはじめの方で「エルマー」の持ち物が説明されています。たぶん、創意工夫でそれを使って困難を突破していくのでしょう。どんな冒険が待っているのか、子どもともども楽しみたいと思います。

 この第二作の裏表紙には、「りゅう」がカラーで描かれていました。あらためて見るとかなり派手。相当に目立ってます。

 ところで、うちの子どもは、最初、読みはじめたとき「ページをとばしたんじゃない?」と言っていました。よく聞いてみると、どうやら本を開く方向を勘違いしていたようです。縦書きと横書きで開く方向が違うのは大人にとっては当たり前でも、子どもにとってはそうではないわけですね。本が物質であり、それにかかわって幾つものルールが作られていることを、あらためて意識させられました。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編集『エルマーとりゅう』福音館書店、1964年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーのぼうけん』

 この本、毎日少しずつ読んでいって、今日、読み終わりました。なかなかおもしろかったです。うちの子どもにとっても、けっこうドキドキワクワクだったようで、「少し恐いねえ」とか言いながら(うちの子どもはだいぶ恐がり^^;)、楽しく聞いていました。

 とくに「エルマー」が「どうぶつ島」に渡ってからは、各章ごとに次々と危機が訪れ、それを「エルマー」があっと驚く創意工夫で突破していきます。次はどうなるんだろうと物語に引き込まれていく感じ。物語の最初の方では、「エルマー」が出発する前にリュックサックに詰め込んだ荷物が一つ一つ挙げられていたのですが、それが生かされているんですね。これもおもしろい趣向です。うちの子どもに一番受けていたのは、表紙にもなっているライオンのエピソード。あの三つ編みとリボンが笑えます。でも妙に似合っています。

 それにしても、「エルマー」、実に聡明で賢い子ども、いや、たいしたものです。どんな問題にも臨機応変に対応して前に進んでいく……。もちろんファンタジーなのですが、こういうところは見習いたいくらい。

 ところで、うちの子どもは物語を読み終わると、「あとがきも読んで!」と言っていました。というのも、以前読んでいた「ルドルフ」シリーズにはどれも「あとがき」が付いており、そのイメージが頭にあったようです。『エルマーのぼうけん』には「あとがき」はなかったのですが、そのかわり、「この本をよんだ人に」と見出しのついた続巻の案内がありました。それを一通り読むと、「じゃあ、次はエルマーの2巻を読もう!」とうちの子ども。

 考えてみれば、『エルマーのぼうけん』のラストは、まさにこれから大冒険がはじまるような終わり方でした。「エルマー」と「りゅう」はまだ出会ったばかりです。「どうぶつ島」を脱出した二人(?)を待ち受けているのは何か。第2巻が楽しみです。ぜひまた読んでみようと思います。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーのぼうけん』福音館書店、1963年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーのぼうけん』

 昨日で「ルドルフ」シリーズはひとまず読み終えたので、今日からは「エルマー」シリーズ。定番と言っていいかと思います。少しずつ読んでいきます。

 期待に違わず、なかなかスリリングな導入。ただ、最初はなにせ「とうさんのエルマー」の回想というかたちをとっているので、うちの子どもには少し分かりにくかったかも。物語のなかで語り手が変わっていくような感じなのですが、最後はもう一度、元の語り手に戻るのだろうか、それとも現在のお話につながるのかな。

 この本は絵本というよりは児童文学ですが、挿し絵がすばらしい。表紙のライオンのイラストとその色合いは見ているだけでワクワクしてくるよう。本文の挿し絵はモノクロですが、動物たちの様子がユニークに描写されており、冒険の雰囲気が伝わってきます。

 表紙と裏表紙の見返しには、物語の舞台となる「みかん島」と「動物島」の詳しい地図が付いていました。物語のエピソードも書き添えられています。これも、たのしい仕掛けです。

 この本、うちの子どもはたいへん惹き付けられたようで、『ルドルフといくねこくるねこ』を読んでいるときから、早く読みたいなあとだいぶ気になっているようでした。いや、その気持ち、よく分かります。「エルマー」シリーズは私も読んだことがなかったので、これから楽しみです。

 原書の刊行は1948年。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーのぼうけん』福音館書店、1963年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフといくねこくるねこ』

 再び読んでいたこの本、今日ようやく読み終わりました。最後の対決はなかなかの盛り上がり。2回目ですが、子どもともども楽しみました。うちの子どもは、登場するネコのセリフの一つに大受け。読んだあと何度も思い出し笑いしていました。トイレのなかで一人で「アハハハ!」と笑っているので、なんだかおかしい(^^;)。

 それはともかく、「ルドルフ」シリーズ、第4弾も出るのかなあ。第2弾から第3弾が刊行されるまで、だいぶ時間がかかっています。もしかすると第4弾が出るころにはうちの子どもも一人で本を読めるようになっているかも……。それはそれで少しさみしかったりして。でも、これだけ魅力的なキャラクターと物語ですから、第4弾、ぜひ期待したいと思います。

▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフといくねこくるねこ』講談社、2002年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフといくねこくるねこ』

 この本、毎日1章ずつ読んできたのですが、うちの子どもはどうやら読む気がなくなってきたようで「もう読まない」とのこと。まあ2回目ですから、ちょっと飽きたのかもしれません。あるいは、もしかして私の読み方が悪いのかも……。うーむ、どうなんだろう。

 【追記:と思っていたら少したってからまた読むことになりました。好きだねえ。】

▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフといくねこくるねこ』講談社、2002年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフともだちひとりだち』

 最近もずっと絵本は毎日1冊だったのですが、その理由がこの「ルドルフ」シリーズの2冊目。毎日、少しずつ読んでいって、今日、読み終わりました。
 このシリーズは小学校中学年向きなので、5歳のうちの子どもにはけっこう難しいと思うのですが、本当に大好き。細かいところはよく分からなくても、冒険あり笑いあり涙ありのストーリーはたまらなく魅力的なようです。「おかしいねー」「どきどきするねー」と真剣に聞いています。なにせ読む量が多いので最初は私も大変だなーと思っていたのですが、だんだんおもしろくなってきました。
 なんとなく思ったのですが、このシリーズには自立というテーマが底に流れているような気がします。たとえば人に飼われていることと野良であることの区別とその意味といったことが物語のなかでたびたび出てきます。あるいは、教養がある/ないというのが一つのキーワードになっていますが、これもたぶん自立に関係しているでしょうし、ネコが文字を読んだり書いたりすることも自立の一側面を表しているかもしれません。
 で、明日からは、うちの子どもリクエストにより、シリーズの3冊目をもう一度、読んでいきます。とにかく、もう一回、読んでほしいとのこと。ほんとに好きなんだなあ(^^;)
▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフともだちひとりだち』講談社、1988年

斉藤洋/杉浦範茂『ルドルフとイッパイアッテナ』

 最近ずっと毎日読む絵本が1冊だったのは、この本を少しずつ読んでいたから。「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズの第一作です。私と妻とで交替で読んでいったのですが、なかなかおもしろかったです。ラストのイヌの「デビル」との対決は緊迫した展開で、子どもともども盛り上がりました。
 以前読んだ『ルドルフといくねこくるねこ』のときも思いましたが、このシリーズの基本はなんとなくハードボイルドですね。登場するネコたちは必要以上に甘えないし依存しない。表紙の杉浦さんの絵の通り、キッパリとまっすぐに生きている、そんな印象を持ちました。と同時に、いろいろ笑えるところも多くてユーモラス。うちの子どももだいぶ受けていました。
▼斉藤洋 作/杉浦範茂 絵『ルドルフとイッパイアッテナ』講談社、1987年