今日は1冊。走るのがとても遅くて、これまで一度もブタを捕まえて食べたことがない「おおかみ」(食べるのは野菜と木の実だけ)、「きつねはかせ」からなんと「ぶたのたね」をもらいます。この種をまいて「はやくおおきくなるくすり」をふりかけると、「ぶたの木」の芽が出てどんどん大きくなり、ついにたくさんの「ぶたの実」がなります。りっぱな木に鈴なりになった「ぶた」「ぶた」「ぶた」……! いやー、実にシュールでインパクトのある画面です。他にも「ぞうのマラソン」など「えっ!」と驚くおかしさ。この絵本、おすすめです。
▼佐々木マキ『ぶたのたね』絵本館、1989年
月別アーカイブ: 2004年9月
ウィリアム・スタイグ『ザバジャバ ジャングル』
今日は1冊。誰も入ったことがないという「サバジャバジャングル」。主人公の「レオナルド」は、不思議な動物や植物と出会ったり、いろんな危機を乗り越えて、先を進んでいきます。この絵本、まず設定がおもしろい。最初「レオナルド」は、どうして自分がジャングルにいるのか自分でも分からず、それでも「とにかく すすまなくちゃ!」ということでどんどん歩いていきます。物語の最後になってジャングルにいる理由が明らかになるのですが、いろいろ謎が残ります。説明があまりなくて、なんだか魔法をかけられたような感じ。それはまた、先に何が現れるかまったく分からない未踏のジャングルを進む「レオナルド」と同じ境遇で、おもしろいです。絵は、濃密なジャングルの草木の合間にいろいろ生き物が描き込まれていて、これも楽しい。カラフルな色合いで草木にまぎれているので、発見があります。うちの子どもは、怪獣の化石の「おしりのあな」に受けていました。好きだねえ。原書の刊行は1987年。
▼ウィリアム・スタイグ/おがわえつこ 訳『ザバジャバ ジャングル』セーラー出版、1989年
『幸せの絵本』のウェブログ
以前の記事で取り上げた『幸せの絵本』、編者の金柿さんの紹介ウェブログを見つけました。
Making of 『幸せの絵本』
デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』
ある日、学校の課外授業でニューヨークのエンパイア・ステートビルを訪れた男の子。展望台で小さなの雲の子と出会います。雲の子に載って空に飛び立った男の子がたどり着いたのは「セクター7」、ニューヨークの周辺地域にさまざまな雲を送り出し管理する空中浮遊施設。そこで巻き起こる騒動が描かれています。
この絵本は、文字がなく絵のみ。そのため、絵を見ながら自分でストーリーと会話を考えて読み聞かせをしました。これがなかなかおもしろい。なにより絵がとても魅力的で、まるで一編の映画を見ているよう。文章を考えるのにも、まったく苦労しません。いろいろ細部を発見しながら読み聞かせに工夫することもできます。
絵は、ふわふわ浮かぶ雲の描写も表情豊かで素晴らしいのですが、心引かれるのはやはり、タイトルにもなっている「セクター7」。お城のように巨大な空中浮遊施設で、そのメカニックな造形は、ハイテクというよりは、どことなく懐かしさを感じます。プロペラや風車、人力の大きなボード、職員たちはクリップにコルクボードで鉛筆を使い、古い型の受話器にスタンド、雲のスタイルが描かれた青写真の図面……。施設の内部は古いつくりの大きな駅を思い起こさせます。こういういわば人間(?)くさい部分が物語の楽しい結末にも生きているような気がします。
カバーの著者紹介によると、ウィーズナーさんは、この絵本のために視界ゼロの日を選んでエンパイア・ステートビルを訪れたのだそうです。その日にビルの展望台にはウィーズナーさん一人だったとのこと。原書の刊行は1999年。この絵本、おすすめです。
▼デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000年
クリス・ヴァン・オールズバーグ『ゆめのおはなし』
今日は2冊。主人公の少年「ウォルター」が夢に見た未来の姿、それはかっこいい自分専用の飛行機もロボットも、食べたいものがボタン一つで出てくる機械もない、荒涼とした地球だったという物語。「ウォルター」が眠るベッドはそのまま未来へと飛んでいき、ごみに埋まったまちや薬品工場の巨大な煙突の上、エベレストの頂上に建つホテルのそば、渋滞でまったくクルマが進まない高速道路やスモッグで何も見えないグランドキャニオンに降り立ちます。未来の悲しい景色は文字のない見開き2ページいっぱいに描かれ、めくったあとのページに文章が付いているという作り。ページを戻りながら読んでいきました。ある意味、ディストピアが描かれているわけですが、絵そのものはむしろ静謐で美しいとすら言えます。だからこそ逆に恐ろしい未来が真に迫ってくるかもしれません。結末は一応ハッピーエンドになっています。ただ、ちょっと教育的すぎるかなあ。ディストピアにしても物語の結末にしても、少々類型的というか、少し抵抗を感じます。原書の刊行は1990年。
▼クリス・ヴァン・オールズバーグ/西郷容子 訳『ゆめのおはなし』徳間書店、1994年
チョン・スンガク『くらやみのくにからきたサプサリ』
訳者の大竹さんの説明によると、「サプサリ」というのは、「鬼神を見つける狗(いぬ)」という意味の名前を持つ韓国固有のイヌだそうです。昔の韓国の人々は、サプサリの絵を家や蔵の門に貼って厄除けにしたとのこと。この絵本は、そのサプサリの由来を韓国の昔話をもとに描いたものです。天にある暗闇の国に火をもたらそうとする「火のいぬ」(のちのサプサリ)の神話。玄武、朱雀、青龍、白虎の四神も登場します。なにより絵が非常に美しい。大竹さんの説明にもありますが、基本的に五方色(赤・黒・白・青・黄)と金で描かれているのですが、鮮やかな色合いで圧倒的な迫力です。浮き彫りにした板(?)を布をおおい、そのあとで彩色してあるとのこと。たしかに画面が立体的に浮かび上がってくるよう。物語がはじまる前と後には、それぞれ見開き2ページを使い、くらやみの世界とひかりの世界が表現されていて、これも印象的です。原書の刊行は1994年。この絵本、おすすめです。
▼チョン・スンガク/大竹聖美 訳『くらやみのくにからきたサプサリ』アートン、2004
秋山あゆ子『くものすおやぶん とりものちょう』
今日は2冊。「くものすおやぶん」こと「おにぐもの あみぞう」と「はえとりの ぴょんきち」が「かくればね さんきょうだい」を追いかけている場面には、「ありがたや」の屋敷内の様子が描かれています。なかなかおもしろいのですが、うちの子どもが不思議がっているのがアリがお風呂に入っているところ。湯舟につかったり流し場で背中を洗っていたりします。たしか、アリは水が苦手だったはず……。でもまあ、そんなことに突っ込んでいたら、他にも突っ込みどころ満載できりがないですね(^^;)。
▼秋山あゆ子『くものすおやぶん とりものちょう』「こどものとも」2003年2月号(通巻563号)、福音館書店、2003年
アネット・チゾン、タラス・テーラー『家の中をのぞいてごらん』
「まほうの色あそび」シリーズ、今回、「ハービィ」はイヌの「アンジェロ」のために新しい犬小屋を作ります。どんな犬小屋がよいか参考にするため、船やまちなかのレンガ造りの家、オフィスビル、お城、動物たちが住んでいる木の家を見ていく、という物語。このシリーズの他の絵本と同じく、紙のページの間に透明なビニールに彩色したページがはさんであり、セルロイドのページをめくることで、いろんな家の中が見えてくるという趣向。ビニールのページは、めくって重なった紙のページにも合うようになっており、おもしろいです。細かく描き込まれた家の中の様子も、意外な発見がいろいろあり、楽しめます。「ハービィ」は、いろいろユニークな犬小屋の設計図を描くのですが、最後に「アンジェロ」が選んだのはどんな犬小屋だったか? ニコリとする結末です。原書の刊行は1972年
▼アネット・チゾン、タラス・テーラー/竹林亜紀 訳『家の中をのぞいてごらん』評論社、1984年
F・ヤールブソワ/Y・ノルシュテイン『きつねとうさぎ』
今日は2冊。「きつね」に家を取られてしまった「うさぎ」。「おおかみ」や「くま」や「うし」が追い出そうとするのですが、「きつね」の剣幕にみんな逃げ出してしまい、どうしても追い出せないという物語。眼を大きく見開いた「うさぎ」の顔が困った様子をよく表しています。最後は「えっ!」という意外なオチなのですが、うーむ、ちょっと納得できないかも。でもまあ、そもそも「きつね」が強すぎですね。絵はとても渋い色合い。巻末の著者紹介によると、構成を担当しているユーリー・ノルシュテインさんは、国際的に著名なアニメーション作家。絵を描かれているフランチェスカ・ヤールボサワさんは、そのアニメーションの美術監督もされているとのこと。この絵本もアニメーションになっているようです。機会があったら、ぜひ見てみたいです。原書の刊行は2003年。
▼F・ヤールブソワ 絵/Y・ノルシュテイン 構成/児島宏子 訳『きつねとうさぎ』福音館書店、2003年
ジョン・バーニンガム『ねえ、どれが いい?』
やはり、おもしろい。今回も家族みんなで「究極の選択」を楽しみました。前回読んだときとは答えが変わったりします。絵はどことなくユーモラスで楽しい感じなのですが、なかには、びっくりするものも。
ねえ、どれが いい?
へびに まかれるのと、
魚に のまれるのと、
わにに 食べられるのと、
さいに つぶされるのとさ。
この文に付けられた絵では、男の子の足だけがワニの口から出ていたり、サイのおしりの下でぺちゃんこになっていたりします。ちょっとドキッとしますが、とはいえ、そんなに恐くはありません。
どれなら 食べられる?
くものシチュー、
かたつむりのおだんご、
虫のおかゆ、
へびのジュース。
この質問に、うちの子どもは「でも虫を食べるところ(地域)もあるよねえ」なんてつっこみを入れていました(^^;)。
▼ジョン・バーニンガム/まつかわまゆみ 訳『ねえ、どれが いい?』評論社、1983年