「絵本の周辺」カテゴリーアーカイブ

講談社がコンビニで絵本を販売(その2)

 先日のエントリー、「講談社がコンビニで絵本を販売」でふれたコンビニでの絵本販売ですが、YOMIURI ONLINEの9月11日付けの記事、絵本はコンビニで : 出版トピック : 本よみうり堂 でも取り上げられています。

 記事によると、すでに2004年末に講談社はコンビニで絵本の販売を始めているそうです。写真も掲載されていますが、回転式の専用棚を用意しているとのこと。

 出版社側の事情としては、先のエントリーでも紹介したのと同じく、絵本販売の新規ルートの開拓ですね。今回の記事では、コンビニ側の事情として、昼間の売上増とイメージアップの2点が挙げられています。実際、幼稚園の近所や病院内のコンビニでは絵本がよく売れているとのこと。なるほどなーと納得です。

 また、記事では、これまで絵本販売の中核を担ってきた中小書店の減少により、ここ数年、絵本の売り上げが伸び悩んでいることが記されていました。

 思うのですが、中小書店が減少していった背景要因には、郊外型の大規模書店の進出やネット書店利用の拡大と並んで、コンビニの普及もあったように思います。つまり、通常の書籍については大規模書店やネット書店にお客を取られ、雑誌やマンガについてはコンビニにお客を取られるという構図です。

 そうしてみると、コンビニも一つの要因となって絵本の販売ルートが縮小していき、それに対応するために、コンビニで絵本を販売していくというわけで、なんだか皮肉な展開にも思えてきました。

 あと、今回の記事で注目されるのは、コンビニの販売時点情報管理システム(POS)で売れ筋を分析し、販売絵本を入れ替えていくという点。コンビニですから、絵本の販売実績もシビアに解析されていくわけですね。

 ある意味、当然の販売戦略と言えます。しかし、ちょっとどうかなーと感じるところもなきにしもあらず。

 通常の書店であれば、販売実績だけでなく、いわば絵本の「質」を重視して棚をつくることもあると思います。売れるかどうかはともかく、この絵本を読んでほしい・読ませたいという思いで絵本を置くこともあるでしょう。これに対し、コンビニの場合には、すべて「売れる」絵本でおおわれる傾向が強い気がします。もちろん、スペースが限られていることもあるでしょうが、しかし、POSで分析して売れる絵本だけで棚をつくるとなると、そこには絵本に対する「思い」が入り込む余地はあまりなくなるように感じます。

 まあ、考えすぎかもしれませんね。でも、せっかくだから、おまけ付き絵本だけじゃなく、もうちょっとスタンダードな絵本も置いてほしいところです。コンビニにとっても、そのほうがイメージアップになると思うのですが、どうでしょう。

ポプラ社の中国法人書店

 中国の対外放送を行う中国国際放送局(サイトは中国国際放送局)、8月26日付けの記事、蒲蒲蘭絵本館 china radio international。ポプラ社の中国法人が2005年10月に北京にオープンした書店を紹介しています。書店の名前は「KID’S REPUBLIC蒲蒲蘭絵本館(ポプラ絵本館)」。

 写真も何枚か掲載されていますが、なかなか良い雰囲気ですね。中国語はもちろん、英語や日本語の絵本も揃っているとのこと。週末には読み聞かせなどの子ども向けイベントが開かれているそうです。

 ウェブサイトもあります。蒲蒲兰绘本馆です。当然、中身は中国語ですが、かわいいデザインですね。ただ、かなり重いです。

 また、ポプラ社のサイト会社概要のページを見ると、関連会社として「北京蒲蒲蘭文化発展有限公司」が挙げられています。

 で、それはともかく、上記の記事で一番驚いたのは、中国ではいわゆる「絵本」はこれまで存在しなかったという記述。うーむ、そうだったのか!

 なんとなく思ったのですが、これが事実だとすると、ポプラ社はかなり戦略的に中国に進出していると言えますね。少々うがった見方かもしれませんが、絵本という一つの文化を中国に持ち込み定着させることができたなら、これは巨大な市場になる気がします。日本とは比較にならない規模かと思います。

 三カ国語の絵本を扱っているのも、一つには北京在住の日本人を念頭に置いているのでしょうが、それ以上に、中国には従来なかった絵本文化を広めていく目的が大きいでしょう。

 実際、この試みは、記事を読むかぎりではある程度うまくいっているようです。口コミで来店者が増えているとのこと。

 ただ、おそらく、絵本出版社の中国進出はポプラ社以外にも試みられているかと思います。確実なことは分かりませんが、日本の出版社にはそれほど広がっていないとしても、アメリカやヨーロッパの出版社はだいぶ入っているのではないでしょうか。すでに厳しい競争があるのかもしれません。

経済産業省が「キッズデザイン賞」を創設

 NIKKEI NET、8月24日付けの記事、経産省が「キッズデザイン賞」・安全への配慮表彰。経済産業省が、子どもの安全や発育に配慮した製品や絵本、取り組みなどを表彰する「キッズデザイン賞」を創設するそうです。2007年度に第1回の作品を表彰し、以後、毎年実施とのこと。表彰事業の実際の運営は、「キッズデザイン協会」が行うとあります。

 最近は思いもかけない子どもの事故が起こっていますし、なかなか有意義な取り組みですね。ただ、記事中、一点、気になったのが、具体的な表彰対象として「倫理観をはぐくむ絵本」も想定しているというところ。子どもがケガをしにくいデザインのテーブルやイスはともかく、「倫理観をはぐくむ」ことのどこが「デザイン」に関係するのだろうと疑問に思いました。また、どんな倫理観なのかという点で、少々、あやういものも感じました。

 そこで、関連サイトを検索。

 まず、METI/経済産業省の報道発表のページに当該のプレスリリースがありました。「キッズデザイン賞」の創設について 報道発表(METI/経済産業省)です。PDFファイルで詳しい資料も閲覧できるようになっています。

 ざっと見てみましたが、NIKKEI NET の記事にあるような「倫理観をはぐくむ絵本」なんて記述はどこにも見あたりません。また、表彰対象に「絵本」は明記されておらず、そのかわりに「書籍」が入っています。しかし、これは、「商品デザイン:玩具、遊具、書籍、食品などのプロダクトデザイン」という表彰対象カテゴリーの一例として挙げられています。

 「プロダクトデザイン」ですから、基本的にはモノとしてのデザインと理解するのが自然ですよね。実際、小さな子ども向けの絵本は、紙の厚さや角の処理、使用するインクなど、安全であるために様々に工夫されていることがあります。この意味でのデザインが表彰の対象になるわけで、「倫理観をはぐくむ」といったような直接、内容にかかわってくるものではないと思われます。

 商品デザイン以外にも、建築デザイン、環境デザイン、コミュニケーションデザイン、リサーチデザインが対象になっていますが、いずれも倫理観を問題とするようなものではないでしょう。あえて関連を探すなら、特別賞のテーマ例として、「ジャパンバリューデザイン (日本的価値の提案に優れたもの)」が入っているくらいでしょうか。でも、これも「倫理観」というのは無理がありますね。

 念のため、今回の事業を主催・運営するキッズデザイン協会のサイトも検索してみました。KIDS DESIGN ASSOCIATIONです。サイト内のKIDS DESIGN AWARDにキッズデザイン賞の説明がありましたが、ここも基本的に経済産業省のページと同じ内容になっており、「倫理観をはぐくむ」といったような記述は見あたりませんでした。

 うーむ。NIKKEI NETの記事は何をもとに書かれたのかな? ちょっと謎です。経済産業省の担当者からそのような話を聞いたとか……。あるいは、8月24日に開かれたという「キッズデザイン賞創設シンポジウム」でそういう議論があったのか……。まあ、細かい話しではありますが、ちょっと違和感が残ります。

 それはともかく、上記の関連サイトに資料が掲載されていますが、キッズデザイン賞の受賞作品に付与される「キッズデザインマーク」、非常に斬新ですね。グラフィックデザイナーの佐藤卓さんがデザインされてます。佐藤さんご自身の主旨説明がPDFファイル等で読めますが、「優しく子どもを守る形をつくるのではなく、敢えて危険や不完全さを可視化」したとのこと。

 「子どもの安全安心と健やかな成長発達につながる生活環境の創出を目指したデザイン」として優れていると表彰されたものに対し、「危険や不完全さを可視化」したマークを付けるわけです。かなり大胆。表彰された側がマークの付与を敬遠したりしないかなと要らぬ心配をしてしまいます。

 でも、表彰されたからOKというわけではなく、子どもを取り巻くあらゆる「もの」「こと」を常に問い直し見直す必要があり、その作業に終わりはない……そうした意味で、このマークはたしかにぴったりかもしれません。

 表彰によって安住したりせず、なおいっそう前進し続けること。今回の賞に限らず、一般的に、なんらかの受賞に対するマークのデザインとして考えても、これはとても新しい気がします。

講談社がコンビニで絵本を販売

 8月23日付け、NIKKEI NET:企業 ニュースの記事、講談社、コンビニで絵本販売・独自商品も出版

 講談社が、今年中に大手コンビニ約7000店に専用の棚を設置し、絵本の販売を強化するそうです。常時24作品を用意し、独自商品も出版するとのこと。すごいですね。

 今回の計画の背景について、記事では、中小書店の減少に対する新たな販路の開拓を挙げています。しかし、中小書店が減っていることはだいぶ以前からの傾向でしょうし、なんとなくですが、他にも理由がある気がします。

 一つは、出版社側の事情のみならず、コンビニ側にも絵本販売への積極姿勢があるのではないかという点。地域のコンビニ出店が飽和状態にあり、コンビニ業界の成長が鈍化していることは、以前から新聞でも報道されていたと思います。そのため、これまでとは違った戦略が試みられている気がします。

 たとえば、8月22日付けの北國新聞の記事、金大にカフェ風店舗 サークルKサンクス 石川に個性派コンビニ続々 ローソンは緑地併設店にあるように、従来はあまり見られなかったような場所に出店したり、店舗の設計を変えたりすることもその一例でしょう。

 同様に、7月2日付けのNIKKEI NET:企業 ニュースの記事、ローソン、高齢者向けにコンビニ改装・全体の2割に、7月1日付けの神戸新聞の記事、高齢者向けのコンビニ開店 淡路市内にあるように、高齢者という従来はコンビニの中心的な顧客ではなかった世代にターゲットを拡大する試みも行われているようです。

 こういった店舗戦略の流れのなかに今回の絵本販売も入ってくる気がするのですが、どうでしょう。

 実際、「高齢者向けコンビニ」を計画しているローソンは、その一方では、現在、ハッピー子育てプロジェクトを推進しています。その趣旨は、子育てを応援するコンビニ、コンビニを子育て中の母親のコミュニケーションの場にすることとされています。子どもや子育て中の母親が使いやすい店舗の立地やレイアウト、「思わず来店したくなるサービス」や商品の開発が目指されています。計画では、「高齢者向けコンビニ」と同様に(?)、モデル店で検証をおこない、多店舗展開を目指すようです。

 このコンセプトからすると、絵本の販売は、まさにぴったり趣旨に合いますよね。絵本の販売は、コンビニにとっても、新しい顧客を開拓するうえでポイントが高いのではないかなと思います。

 そういえば、ローソンの「ハッピー子育てプロジェクト」のキャラクターは、ミッフィー。ミッフィーの絵本といえば、講談社ですよね。ただの偶然ではないと思うのですが、ちょっと考えすぎでしょうか。

 でもまあ、ローソンでミッフィーの絵本を買えるのは、それはそれでよいかなと思います。ただし、上述の講談社の絵本販売の記事によると、販売されるのは、模型やミニカーを付けた絵本とのこと。うーむ。どうせなら、そんなギミックものではなくて、正統な(?)絵本にしてほしいところです。

 しかし、それではコンビニで売れないのかもしれませんね。なんだか絵本が置かれている現状を象徴しているような気もしてきます。

父親を取り込む子育て雑誌

 1ヶ月以上前の記事ですが、asahi.com、4月28日付け、asahi.com: 小学生持つパパ向けの雑誌、続々登場 – 教育。最近、次々と創刊されている子育て雑誌を取り上げています。大きな特徴の一つは、父親を読者に取り込もうとしている点であること。

 取り上げられているのは、プレジデント Family日経Kids+AERA with Kids Vol.1edu(エデュー)。こうして並べてみると、たしかに、ここ半年くらいで急に増えましたね。

 この手の雑誌が一つのジャンルを形成しつつある背景として、asahi.com の記事では、主に2点を挙げています。一つは、子どもをめぐる現在の状況の厳しさ。そして、もう一つは、企業広告の受け皿。これは実際に紙面を見れば一目瞭然ですね。記事なのか広告なのか判然としないページが非常に目に付きます。

 それはともかく、子育て雑誌のターゲットが父親であることの意味合いは、なかなか微妙だなと思いました。

 ポジティヴに見るなら、これまで育児に関わってこなかった父親の育児参加を後押しするものと言えますし、asahi.com の記事に書かれているように、仕事で忙しい父親にとっては、育児書を読むよりも雑誌の方が手に取りやすいかもしれません。どうしたらよいか分からないという育児の不安に応えてくれる貴重なメディアです。

 しかし、ネガティヴに見るなら、父親もまた「よき父親」のモデルに追い込まれる気配がなきにしもあらず……。というのも、こういう雑誌が推奨する父親は、本当に素晴らしいパパばかり。子どものためにいろんなことがスマートに出来る父親、子どもが喜ぶことを出来る父親、子どもの将来のことをきちんと考えてそのために必要なことをちゃんと出来る父親です。掲載されている写真もオシャレできれい、ちょっとワイルドな部分がありながら優しいというイメージ。とくに『日経Kids+』なんて、毎号、表紙はお父さんと子どものツーショットです。現役の父親の目からみても、あまりにまぶしすぎる……。

 これは母親の場合もそうだと思うのですが、「よき父親」の水準が高すぎると、息切れしてきそうですす。ただでさえ、最近は、家庭の教育力(しかし、教育力とは何?)がやたらと強調されている世の中です。たぶん、そのこともこの手の雑誌の背景にあると思いますが、しかし、目次を見ているだけで、なんだか疲れてきます。そんなに何でもかんでも出来る父親なんて、あまりいないと思うのですが……。

 このまま進むと、職場では業績主義に追いまくられ、家庭では子育て雑誌を片手にあれこれ悩む、そんな父親の姿も、あながち空想ではないかもしれません。あれもやらなきゃ、これやらなきゃと頑張りすぎて、それが子どもへの過度な要求に転化するなんてことも、ありえない話しではない気がします。

 子育てにおいて、もう少し肩の力が抜けるような、息が楽に出来るような、そんな社会であってほしいと願うのですが……。

 いやまあ、ちょっと考えすぎでしょうか? むしろ、父親の育児参加のきっかけになるというポジティヴな側面の方が大きいかな。うーん、なんだか分からなくなってきました……。

荒井良二さんによる「あいのて」ライブペインティング

 以前のエントリー、「絵本を知る: 荒井良二さんがNHK教育「あいのて」の美術を担当」で、荒井良二さんがNHK教育「あいのて」のスタジオセットをライブペインティングしたことに触れました。このときの様子が、「あいのて」の音楽監修を務められている野村誠さんのブログに書かれています。野村誠の作曲日記:[コラボ][子ども]子どもプロジェクトwith荒井良二さんです。

 読んでいて、ちょっと感動しました。ライブペインティングは、なんと10時間(!)にもわたって続き、その間、自然に野村さんたちとの「セッション」が生まれたそうです。ぜひ、リンク先の野村さんの文章を読んでみてください。美術と音楽という異なる表現様式でありながら、その相互作用から思いがけない何かが生まれてくる……すごいなあと思います。

 野村さんのエントリーの冒頭には、8月のワークショップ(?)のことが書かれています。福岡で、荒井さんと野村さんが一緒になり、子どもたちと何かを作るそうです。主催は九州大学ユーザーサイエンス機構の子どもプロジェクト。サイトは子どもプロジェクト:九州大学ユーザーサイエンス機構です。

 荒井さんと野村さんのワークショップ、どんな内容かなあ。できたら、ちょっと見に行きたいです。とはいえ、仕事がなあ……(涙)

「読み聞かせ」と著作権

 asahi.com、5月13日付けの記事、asahi.com:「読み聞かせ」に細かい注文 著作権めぐり作家ら – 暮らし。図書館や幼稚園などで行われる絵本の「読み聞かせ」や「お話会」について、著作権者への許諾の要・不要に関するガイドラインを、児童書四者懇談会が作成したとのこと。児童書四者懇談会に参加しているのは、日本児童出版美術家連盟、日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、日本書籍出版協会児童書部会。

 ガイドラインは、日本書籍出版協会からPDFファイルでダウンロードできます(ただし、ファイルのサイズが2.6Mもあるので、ダウンロードするのに時間がかかります)。

 すでに多くのブログで言及されていますが、どちらかといえばネガティブな反応が多いようです。私も、最初、asahi.com の記事を読んだとき、これはどうかなあと反発を感じました。

 ただ、PDFファイルをダウンロードして読んでみると、部分的にはそんなにおかしな内容ではないと思いました。営利使用の場合には許諾が必要であるという当然の原則をまず挙げているわけで、これはそれほど異論はないでしょう。しかも、観客から1円でも料金を取ったらダメというわけではなく、会場費や交通費、お弁当代、資料代、お菓子・ジュース代を徴集することは認めているわけです。グレーゾーンは残るでしょうから、そのあたりの判断の難しさはあるにせよ、割と妥当な線引きではないかと思います。

 その一方で、かなり大きな問題をはらんでいるのが、非営利であっても原本に少しでも改変を加えるなら、すべて許諾が必要としている点。具体的には10の利用形態が許諾を要するものとして挙げられています。引用します。

  1. 絵本・紙芝居の拡大使用(弱視者用も同じ)
  2. ペープサート
  3. 紙芝居
  4. さわる絵本
  5. 布の絵本
  6. エプロンシアター
  7. パネルシアター
  8. パワーポイント
  9. OHP
  10. その他、いかなる形態においても絵本の絵や文章を変形して使用する場合

 これは少々、杓子定規すぎると思います。なにせ弱視者用に拡大するのもダメ……。なんだかなあ。ここまで規制する必要が本当にあるのかなと疑問に思えます。

 ちょっと考えてみても、ある程度の大きさの会場で絵本の読み聞かせをするとなると、子どもたちに絵本が見えにくいケースが多々あると思います。私も子どもと一緒に図書館の読み聞かせ会に参加することがありますが、近くまで寄らないとよく見えません。小さな判型でも優れた絵本はたくさんありますが、それをそのまま読み聞かせしようとしても、子どもに見えなくては意味がありません。この点からすると、拡大使用(パワーポイントやOHPも含めて)はある程度認められてよいと思うのですが、どうでしょう。

 ペープサートや紙芝居、さわる絵本、等についても、子どもたちに絵本の世界に親しんでもらう一つのやり方と考えれば、ある程度は認められてよいと思います。もちろん、その場合には、出所を明示する必要があるでしょう。

 うがった見方かもしれませんが、「読み聞かせ会」で面白かった絵本を自宅用に購入することもあるでしょうし、絵本作家や出版社の情報を知る契機でもあります。ボランティアで行われている「読み聞かせ会」は、著作者や出版社にとって無料の広告媒体とも言えます。

 また、直接的な利益に結びつかなくても、そもそも「読み聞かせ会」や「お話会」は、子どもたちが絵本と出合う貴重な機会です。絵本の面白さ、楽しさを知るチャンスをもっと大事にしてよいと思うのですが……。

 ガイドラインの1ページの末尾には次のように記されていました。

絵本や児童文学作品の作り手と渡し手が、共に手を携えて作品世界の楽しさを子どもたちの心に届けられるよう、この手引きを活用されることを願っています。

 もちろん、作品の改変を無制限に許すことは決してできません。しかし、「作品世界の楽しさを子どもたちの心に届け」るためには、もう少し配慮があってよいと思います。

絵本ダイアリー

 4月25日付け、asahi.com の記事、asahi.com: 子の成長映す絵本日記 読み聞かせやりとり記録 – こどもの本。絵本の読み聞かせをを記録する日記帳が話題になっているそうです。グランまま社から刊行された『絵本ダイアリー』です。読んだ絵本のタイトル、子どもの反応、やりとり、親の感想などを書いていく日記とのこと。

 グランまま社のサイトは、絵本の樹美術館&グランまま社top新刊情報 絵本ダイアリーに詳細が載っています。実際のページの画像も掲載されています。編者は、絵本ナビ パパ’s絵本プロジェクトの田中尚人さん。

 田中さんの編者コメントには、『絵本ダイアリー』が生まれた経緯も記されていました。2人目のお子さんに読んだ絵本のことは大学ノートに記録しているそうですが、1人目のお子さんは記録しておらず、それをとても悔しく思ったのがきっかけとのこと。

 考えてみれば、自分の子どもと一緒に絵本を読むことは、本当に貴重な時間です。絵本を読んで、一緒に笑ったりしんみりしたり話をしたりすることは、子どもにとっても、親にとっても、かけがえのない体験です。それを記録した日記帳は、まさに宝物になると思います。

 私もブログのかたちで絵本のレビューを書いていますが、子どもを中心に、というよりは絵本を中心にした内容。子どもの反応ややりとりも少しは書いていますが、それほど多くありません。またブログを始めたのは、子どもの年齢がだいぶ上がってからなので、絵本を読みはじめた当初のことはかなり忘れています。

 それに、ブログは公開が前提になるので、あまり個人的なことを書くのはそぐわない気がします。以前はそうでもなかったのですが、だんだん、抵抗を感じるようになってきました。

 今からでも、絵本日記、付けてみようかな。

 ただ、手書きだと、私の字の汚さがネック。自分以外ほとんど判読不可能な位です(^^;)。また、手書きで書く時間をどうやって捻出するかが一苦労かも。いやまあ、日頃の時間の使い方を見直せば、そのくらいの時間は大丈夫かな。手書きの良さもあると思いますし、少し試してみようと思います。

百貨店が子供用品売り場をてこ入れ

 YOMIURI ONLINE の3月17日付けの記事、百貨店 「子供向け」拡充 : ニュース:育児ネット:教育 子育て : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)。近鉄百貨店や松坂屋、阪急など、関西の百貨店で子供用品売り場をてこ入れする動きが続いているそうです。

 冒頭部分を少し引用します。

景気が回復し、少子化で子供が減っても、両親や祖父母が子供1人にかけるお金は増えると予想されており、3世代にわたる家族連れでの来店を促す狙いもある。

 なるほど。少子化が進んでも、いや、少子化が進むからこそ、子ども(孫)はかわいいというところでしょうか。うがった見方をするなら、4人の祖父母に孫1人となると、かけるお金の額も変わってくるでしょう。

 いずれにせよ、紹介されている百貨店の取り組みは、すごいです。ベビーサロンに「育児用品コンサルタント」、おもちゃ売り場の拡大、子ども専用(!)の美容室。神戸阪急では、「有料」の遊び場を設け、神戸大学発達科学部の協力のもと、学生による絵本の読み聞かせや人形劇のイベントも開くそうです。うーむ。

 考えてみると、現在、孫が出来る世代は、相対的に余裕のある世代なのかも。記事に記されているように「大人になってもファンになってもらいたい」という中長期戦略があるにせよ、やはり、百貨店の主たるねらいは、祖父母のサイフかなと思います。

 で、子ども、あるいは孫のために百貨店に来てもらって、ついでに(?)他の売り場にも足を運んでもらう。三世代で1日、店内を回遊するなら、これは大きいでしょうね。

 こういう戦略上で、絵本はどう位置づけられるか、ですが、絵本は高いとはいってもたかが知れてますし、一度にそう何冊も買えるものではないでしょうから、金額的にはそれほど大きくない気がします。

 ただ、おもちゃよりは絵本の方が、祖父母のサイフもゆるむかな。たとえば知育系の絵本とか、あるいは読み聞かせのイベントのなかで絵本の教育的意義に焦点をあてたりすると、効果的だったり。

 絵本は、子どもが自分で買うものではなく、親や祖父母が買うものですから、子どもがどう思うかよりも、親や祖父母にどうアピールするかがポイントになる、と言えるかも。

 なんてね。ちょっと考えすぎかもしれませんね。

片山健さんの表紙 富士ゼロックスの広報誌『グラフィケーション』142号

 今日、届いた富士ゼロックスの広報誌、GRAPHICATION グラフィケーションの最新号(142号)、片山健さんが表紙の絵を担当されています。冬の野外(?)で遊ぶ子どもたちの姿が描かれています。のびやかで暖かで、なかなか、よい感じです。

 GRAPHICATION、1年くらい前から送ってもらっているのですが、毎号、非常に興味深い特集で、楽しみにしています。今回の特集は「子どもたちは、いま…」。片山健さんの表紙と呼応しています。また、連載の執筆陣も、粉川哲夫さん、平井玄さん、結城登美雄さん、池内了さん、他と、かなり強力です。

 あと、GRAPHICATION の表紙は毎号、いろんな方が担当されているのですが、絵本作家の方も割とよく描かれています。たとえば、ここ1年くらいだと、スズキコージさん、ささめやゆきさん、山口マオさん。

 これだけの内容を備えたメディアが、原則無料で購読できるのは、本当に驚きです。ずっと刊行し続けてほしい広報誌です。関心のある方は、ぜひ、上述のサイトをのぞいてみて下さい。バックナンバーの表紙や目次も見ることができます。