月別アーカイブ: 2005年1月

神沢利子/堀内誠一『ふらいぱんじいさん』

 これは絵本というよりは絵童話。少し長めで幾つかの章に分かれています。といっても、ほとんどのページに絵が付いていて、どんどん読めます。

 主人公はフライパンのおじいさん、「ふらいぱんじいさん」。卵を焼くのが大好きで、いつも目玉焼きを子どもたちのために焼いていたのですが、ある日、「おくさん」が新しい目玉焼き鍋を買ってきました。そのため、卵を焼かせてもらえなくなった「ふらいぱんじいさん」は旅に出ます。ジャングルや海でいろんな動物たちに出会いさまざまな体験をした「ふらいぱんじいさん」ですが、そのうち足が曲がってしまい、小さな島の砂浜に打ち上げられてしまいます。「ふらいぱんじいさん」はどうなってしまうのか……といった物語。

 この絵本(絵童話)、うちの子どもはだいぶおもしろかったようで、最初は「半分ぐらい読んで残りは明日」と言っていたのですが、結局、終わりまで一気に読みました。どうなるんだろうと先が気になる展開です。読み終わると、うちの子どもは「ふぅー」と息を付いていました。

 老いたものが自分の居場所を探し見つけるというモチーフは他の絵本でもけっこうあると思うのですが、この物語では、「ふらいぱんじいさん」が最後に見つけたその居場所が実に印象深いです。なんとも暖かな気持ちになります。

 考えてみれば、料理は命を育むと同時に、しかし他の生き物の命を奪うことでもあるでしょう。その道具のフライパンがたどりついた新しい世界とは、まさに命を育むことだった……。いや、そんなに難しく考える必要はない、おもしろいお話なのですが、いろんな含意が込められているように感じました。

 絵は太い輪郭線とカラフルな色彩が軽やかで楽しい雰囲気。夜や嵐の画面の描きなぐったような筆致もよいです。よく見ると、いろんな台所道具から雲や波といった無生物の多くにも目と口が付いています。こういうところにも、もしかすると、生きていることをめぐる物語のモチーフが表れているかもしれません。

 神沢さんの「あとがき」では、この童話を書くに至ったきっかけが語られているようです。「ようです」というのは、ウソかまことか不明なため。南の島での神沢さんと「フライパンじいさん」の出会いです。

 この絵本(絵童話)、おすすめです。

▼神沢利子 作/堀内誠一 絵『ふらいぱんじいさん』あかね書房、1969年

ルース・スタイルス・ガネット/ルース・クリスマン・ガネット『エルマーのぼうけん』

 この本、毎日少しずつ読んでいって、今日、読み終わりました。なかなかおもしろかったです。うちの子どもにとっても、けっこうドキドキワクワクだったようで、「少し恐いねえ」とか言いながら(うちの子どもはだいぶ恐がり^^;)、楽しく聞いていました。

 とくに「エルマー」が「どうぶつ島」に渡ってからは、各章ごとに次々と危機が訪れ、それを「エルマー」があっと驚く創意工夫で突破していきます。次はどうなるんだろうと物語に引き込まれていく感じ。物語の最初の方では、「エルマー」が出発する前にリュックサックに詰め込んだ荷物が一つ一つ挙げられていたのですが、それが生かされているんですね。これもおもしろい趣向です。うちの子どもに一番受けていたのは、表紙にもなっているライオンのエピソード。あの三つ編みとリボンが笑えます。でも妙に似合っています。

 それにしても、「エルマー」、実に聡明で賢い子ども、いや、たいしたものです。どんな問題にも臨機応変に対応して前に進んでいく……。もちろんファンタジーなのですが、こういうところは見習いたいくらい。

 ところで、うちの子どもは物語を読み終わると、「あとがきも読んで!」と言っていました。というのも、以前読んでいた「ルドルフ」シリーズにはどれも「あとがき」が付いており、そのイメージが頭にあったようです。『エルマーのぼうけん』には「あとがき」はなかったのですが、そのかわり、「この本をよんだ人に」と見出しのついた続巻の案内がありました。それを一通り読むと、「じゃあ、次はエルマーの2巻を読もう!」とうちの子ども。

 考えてみれば、『エルマーのぼうけん』のラストは、まさにこれから大冒険がはじまるような終わり方でした。「エルマー」と「りゅう」はまだ出会ったばかりです。「どうぶつ島」を脱出した二人(?)を待ち受けているのは何か。第2巻が楽しみです。ぜひまた読んでみようと思います。

▼ルース・スタイルス・ガネット 作/ルース・クリスマン・ガネット 絵/渡辺茂男 訳/子どもの本研究会 編『エルマーのぼうけん』福音館書店、1963年