月別アーカイブ: 2005年7月

沢田俊子さん、『もじゃもじゃペーター』との出会い

 産経新聞、読書欄、7月31日の記事、Sankei Web 読書 【この本と出会った】童話作家・沢田俊子 『もじゃもじゃペーター』(07/31 05:00)。童話作家の沢田俊子さんが、ハインリッヒ・ホフマン『もじゃもじゃペーター』との出会いを語られています。

 『もじゃもじゃペーター』、実は私はまだ読んだことがありません。いろんな方が言及されていますし、一度は読みたいと思っているのですが、(沢田さんも語られているとおり)かなり強烈な内容なんですね。私一人ならいいんですが、子どもと一緒に読めるかなあという疑問が少し。まあ、あまり気にする必要はないかなとは思っています。

 それはともかく、沢田さんのお話で非常に印象深いのは、絵本を買ってくれていたお母さんのエピソード。これはぜひ読んでみて下さい。戦後の社会において、たとえ貧しいとしても、可能なかぎり子どもに絵本を与える、ほんの少しでも文化に触れさせる。沢田さんのお母さんの愛情が感じられるように思いました。

 沢田俊子さんのサイトは、沢田俊子のホームページ。日記や童話作家になるまでの経緯なども掲載されています。

絵本カーニバル2005山都町

 熊本日日新聞、7月30日付けの記事、くまにち.コム:一般:絵本カーニバル 400冊の“絵本の森”楽しんで 山都町で開幕

 熊本県上益城郡山都町大平の「道の駅清和文楽邑」で「絵本カーニバル2005山都町」が始まったそうです。会期は7月30日から8月7日まで。約400冊の絵本をキーワードやカテゴリーで分けて展示した「絵本の森」が設置され、自由に手に取れるようになっているとのこと。他にもさまざまなワークショップや講演会が予定されるそうです。

 「絵本カーニバル」というと、たしか去年は東京で開催されていました。そのサイトは、絵本カーニバル。左記のサイトでも、去年の「絵本カーニバル2004」の案内しか掲載されていないようですし、今年は東京ではやらずに地方開催のみなのかな。

 それはともかく、「絵本カーニバル2005山都町」の会場は、なんと道の駅。うーむ、これはおもしろい。いや、道の駅、私もけっこう好きなのですが、農産物の直売やレストランなどは馴染みがあるものの、「道の駅」で絵本のイベントというのは、かなり珍しいのではないかと思います。この「道の駅清和文楽邑」の説明は、道の駅 清和文楽邑にあります。九州では唯一の専用劇場文楽館があり、江戸時代から伝わる文楽人形芝居が上演されているそうです。文化施設としての性格もあるんですね。

 それから、もう一つ気になったのは、このイベント、九州大学の研究機関・ユーザーサイエンス機構の「子どもプロジェクト部門」が主催していること。「九州大学ユーザーサイエンス機構」のサイトは、Kyushu University User Science Institute。説明を読んでもいまいち分かりにくいのですが、どうやら、一般の人びと(ユーザー)の感覚により即した研究や技術開発を進めていこうという主旨のようです。

 えー、上記のまとめ、あまり自信ありません、すいません。だって、サイトを見ても、何がやりたいのか分かりにくいです。なんだか、このユーザーサイエンス機構のサイトそれ自体、もっとユーザーの感覚に即してほしいです(なんてね)。

 で、このユーザーサイエンス機構のプロジェクトの一つに「子どもプロジェクト」があります。九州大学 ユーザーサイエンス機構 USI | プロジェクトの説明によると、「子どもをユーザーとする育成の場、ミュージアム、病院など、子どもの問題の総合的な研究開発」だそうです。

 この「子どもプロジェクト」のウェブログは、Kodomo Project。まだあまり記事がありませんが、いろいろ企画が動いているみたいです。8月24日から9月4日まで九州大学で開催される企画では、1000冊の絵本による「絵本カーニバル2005in 福岡」も同時開催されるそうです。「地球(テラ)へ―子どもたちと」インゴ・ギュンター展 地球108の顔、これが本来の企画ですが、なかなか面白そうですね。

「赤ちゃん絵本を考える」を作成:京庫連

 京都新聞、7月29日付けの記事、京都新聞 電子版:幼児の絵本 350冊紹介 京庫連、冊子を作製 研究成果まとめる

 京都府内の「子ども文庫」のネットワーク「都家庭文庫地域文庫連絡会」(京庫連)が、2歳以下の幼児向け絵本を紹介する冊子「赤ちゃん絵本を考える」を制作されたそうです。絵本ボランティアや図書館司書の方が2年前から毎月一度、絵本の勉強会を開いており、その成果として、約350冊の「赤ちゃん絵本」を15のジャンルに分けて意見や感想をまとめたものとのこと。

 非常に素晴らしいと思うのは、実際に読み聞かせをした経験をふまえて、率直に評価を記しているところ。絵本ガイドというと、基本的にはポジティヴな意見しか載らないと言えますが、この冊子は違います。問題があるところ、おかしいところは、厳しく指摘しているそうです。

 赤ちゃん絵本やその読み聞かせがある種ブームになっているなか、こういう取り組みはとても重要なのではないかと思います。できたら私もぜひ読んでみたいです。

「韓国絵本展」 逗子文化プラザホール

 在日本大韓民国民団中央本部、民団新聞、7月27日付けの記事、mindan:夏休みこどもフェスティバル「韓国絵本展」

 アジア絵本ライブラリーを開設している絵本作家の和歌山静子さんが、今年6月に開館した逗子文化プラザホールで、「韓国絵本展」を開かれるそうです。韓国の絵本に加えて、日本の絵本の韓国語版など、123タイトル。記事では、和歌山さんがアジアの絵本を集めるに至った経緯やこれまでの取り組みについても詳しく記されています。

 和歌山さんのアジア絵本ライブラリーのサイトは、和歌山静子 アジア絵本ライブラリー。韓国、中国、台湾、日本の絵本が合計412タイトル、集められており、貸し出しも行っているとのこと。

 今回の絵本展については、逗子文化プラザホール逗子文化プラザホール>催しの案内(自主事業)/8月に情報が載っていました。「世界中のこどもたちが 103」絵本原画展と同時開催です。8月11日から20日まで。

 去年、アートン韓国の絵本のシリーズから何冊か読んだのですが、非常におもしろかったです。物語はもちろんですが、絵がとても魅力的。伝統を感じさせると同時にかなりラディカルで、すごいです。

外国絵本のキャラクターを商品化する動きが加速

 産経新聞、7月27日付けの記事、Sankei Web 産経夕刊 【暮らしと経済】いま、はやりもの 外国絵本キャラクター(07/27 15:00)。リードを引用します。

外国の子供向け絵本に登場するキャラクターを商品化する動きが加速している。豊かな色彩や物語のおもしろさに裏打ちされ、子供や親世代、さらには若い女性が注目したのがきっかけで、商品群がどんどん拡大している。グッズ人気が絵本の知名度を押し上げるなど相乗効果も手伝い、今後も新しいキャラクター発掘競争が激化しそうだ。

 具体例として挙げられているのは、「リサとガスパール」シリーズ、「ぞうのエルマー」シリーズ、『ラチとらいおん』。「リサとガスパール」の場合、関連商品を扱う企業は36社、バッグに子供服に食器類など、様々な商品が開発されているそうです。「ぞうのエルマー」の商品化も今年中に30社に拡大するとのこと。うーむ、すごいですね。このあたりにも、近年の絵本ブームが現れているような気がします。

 記事にも書かれていますが、こういう商品を購入するのは、もちろん子どもではなく、若い女性。なんとなく、おしゃれで品のよい小物として消費されているような印象を受けるのですが、どんなものでしょう。

 あるいは、これも記事に書かれていますが、子どものときに読んだ絵本のキャラクターを懐かしむということもあるでしょうね。それだけ長期にわたって受け継がれてきた絵本ですから、キャラクターの力に普遍性があると言えるかもしれません。

 純日本製の絵本で、こんなふうに商品化が進んでいるものは何かあるのでしょうか。私はちょっと思い浮かばないのですが、なんとなく海外絵本に片寄った現象のような気もします。

「ノッポさんと一緒にあそぼう」 瑞穂市図書館分館

 中日新聞、7月27日付けの記事、ノッポさんの遊びに子ら夢中 瑞穂市図書館分館1周年行事。「ノッポさん」で知られる高見映さんによる「ノッポさんと一緒にあそぼう」が岐阜県瑞穂市図書館分館で開催されたそうです。

 写真も載っていますが、まさに、あの「ノッポさん」。いやー、私も小さい頃、見てました、「できるかな」。この記事を書きながら、テーマソングがアタマの中で鳴っています。子どものときのテレビ記憶の深層に焼き付いています。

 今回の企画、参加した子どもたちはもちろんですが、保護者の方たちも大喜びだったのではないでしょうか。参加した方の様子、「『ノッポさんが言葉を発してびっくりしたけど、雰囲気は変わっていなかった』と声を弾ませていた」というのは、なんだか、ものすごく共感できます。

 ところで、高見さんは絵本もたくさん描かれているんですね。以前読んだことがありました。今回の催しでも高見さんの絵本をみなさんで読まれたそうです。

 瑞穂市図書館分館の案内は、瑞穂市/暮らしの情報/主要公共施設/施設一覧/市図書館分館。分館とはいえ、なかなかりっぱな施設。居心地がよさそうです。とくに「おはなし室」が外からガラス越しに見えて、隔離されていないのがいい感じです。

スズキコージ ワールド 滋賀県能登川町立図書館

 7月27日付けの中日新聞の記事、大胆な色使い魅力 能登川で絵本作家スズキコージ作品展。滋賀県能登川町立図書館で、スズキコージさんの作品展「スズキコージ ワールド」が開催されているそうです。8月28日まで。

会場には、見学者の前で音楽を流しながら描いた「ライブペインティング」と呼ばれる大作六点や絵本の原画、陶器の動物や家などを展示し、スズキさんのユニークな作品世界を紹介している。

 おもしろそうですね。とくに「ライブペインティグ」、これはぜひ見てみたいです。去年、スズキコージさんの巨大な作品(布?に描いたもの)を見る機会があったのですが、本当にすごい迫力と美しさで、絵本とは違った魅力がありました。

 能登川町立図書館は、博物館などと一緒になって、能登川町総合文化情報センターのなかにあるようです。ウェブサイトは、能登川町総合文化情報センター総合文化情報センターだよりのページをみると、先週の21日と22日にはスズキコージさんのワークショップも開催されたようです。どんな感じなんだろう。こちらも、一度は参加してみたいです。

太田大八『だいちゃんとうみ』

 夏の絵本を代表する名作。とても評判がよいのでずっと気になっていたのですが、今回はじめて読みました。本当に途方もなく美しい絵本。ページをめくりながら、感嘆のため息しか出ません。

 物語は、夏休みに従兄弟の「こうちゃん」の家に遊びに行った「だいちゃん」の一日。川エビをすくいに行ったり、海で釣りをしたり、潜ったり泳いだり、浜辺でご飯を食べたりと、楽しい水遊びの様子が描かれています。

 なにより印象深いのは、海や川の水面の色合い。陰影に富み、光と影にゆらめく水面は、底の深さまで感じさせます。ときとところによって表情を変えていく水の描写が、実に美しい。とりわけ浅瀬に足を入れている画面は、水底の砂に波の影や魚の影、足の影が重なり、「だいちゃん」と一緒になって、ゆらゆら揺れる海水を感じることができます。本当に自分の足を浅瀬に入れているような感覚。

 もう一つ、すごいと思ったのは、夜明け前の暗がりから明るい昼、夕暮れ、夜へと、画面全体にわたって夏の一日の光の移り変わり、明暗が非常に繊細かつ鮮やかに描き出されているところ。空の色、海の色、山の色、そして空気の色、すべてが少しずつ変化していき、一つ一つの画面にその瞬間の夏の光が写し取られています。

 文章の付いていないラストページ、丸電球といろりの火に照らされた食卓も、自然の光とはまた違い、人工的でありながら暖かみのある色合いで、とても美しく、また親しみ深く感じました。

 それにしても、こんなふうに自然に抱かれ夏を丸ごと感じ取るなんて、今では、なかなか難しいかもしれませんね。うちの子どもたちは、夏をどんなふうに感じているんだろうと、少し考えてしまいました。

 また、この絵本に描かれているのは大家族で、しかも近隣のつながりの強さも示唆されています。こういう社会環境も、今では失われつつあるのかもしれません。

 裏表紙の見返しには、大村湾に面した物語の舞台の地図が付いていました。主人公の「だいちゃん」は、作者の太田大八さんご自身でしょうか。自伝的絵本と言えそうです。

▼太田大八『だいちゃんとうみ』福音館書店、1979年(こどものとも傑作集としては1992年)、[印刷:精興社、製本:精美堂]

スズキコージ『すいしょうだま』

 これは、すごい! 魔法使いの息子が、兄弟の助けを借りて、魔法をかけられたお姫様を救い出すという物語。

 とにかく、ど迫力の絵に圧倒されます。エネルギーに充ち満ちた筆致に、濃密な描き込み。むせかえるほどに充溢する色とかたち。これまでに読んだスズキコージさんの絵本のなかでも、ここまで鮮烈なのは、ちょっとないんじゃないかと思いました。

 物語は、冒頭からとばしています。「魔法使いの女」が登場するのですが、自分の息子たちをちっともかわいがらず、ワシやクジラに変えてしまうのです。これは恐い。

 そして、物語の中ほどに現れる「お姫様」。こちらも強烈!

顔はねずみ色をした、くしゃくしゃのばあさんで
かみの毛をもやしたようないやなにおいを、あたりにまきちらしていた。

付けられている絵は、まさに文章の通り。造形も色合いも、不穏な雰囲気を醸し出しています。もちろん、魔法のせいでこうなっているわけですが、それにしても、「お姫様」のこんな描写、他の絵本ではちょっとお目にかかれないと思います。たぶん、スズキコージさんにしか描けないんじゃないかな。絵本の暗黙のルールを壊していると言えるかもしれません。いや、もちろん、それが素晴らしいと思います。

 さらに、荒ぶる牛との戦いに、真っ赤な火の鳥、潮をぶちまけるクジラと、すさまじい冒険がこれでもかと続きます。

 とにかく熱い画面に押しまくられる感じなのですが、と同時に、そこはかとなくユーモラスなところがあるように思いました。「魔法使いの女」の最後や物語のオチは、なんとなく力が抜けています。

 この絵本は最初、1981年にリブロポートより刊行され、その後、2005年に復刊。復刊ドット・コムに寄せられたリクエスト投票により復刊したそうです。これだけ強烈な絵本ですから、リクエストが集まるのも当然のような気がしました。

▼スズキコージ『すいしょうだま』ブッキング、2005年、[印刷・製本:株式会社シナノ]

田島征三さんの「絵本の原画展」

 TKU テレビ熊本、7月23日付けのニュース、TKU News:宇城市で絵本作家・田島征三さんの「絵本の原画展」

 熊本県宇城市不知火美術館で開催されている田島さんの絵本原画展。約160点が展示され、8月21日までとのこと。

 不知火美術館は、図書館などと一緒になった複合施設、不知火文化プラザのなかにあります。この不知火文化プラザ、写真で見るかぎりでは、かなりユニークで斬新な建物ですね。熊本アートポリス事業の一環でもあるそうです。

 不知火美術館:展覧会情報を見てみると、今回は、「やぎのしずか」シリーズを中心に『とべバッタ』、『はたけのカーニバル』、『ガオ』、最新作『モクレンおじさん』から『ちからたろう』、『しばてん』に至るまで展示されているようです。とくに、木の実を使った『ガオ』の原画は、ぜひ見てみたいです。

 7月23日には田島さんの講演会も開催とのこと。