「絵本を知る」カテゴリーアーカイブ

映画『あらしのよるに』が公開されたそうです

 映画の『あらしのよるに』が今日(12月10日)から公開だそうです。公式ホームページは映画「あらしのよるに」オフィシャルサイト:: 映画「あらしのよるに」オフィシャルブログ ::まであります。MovieWalker には木村裕一さんのインタビューも掲載されていました。MovieWalker レポート 【単独インタビュー】人気絵本「あらしのよるに」が遂に映画化!原作・脚本を手掛けたきむらゆいちが、作品の面白さを語る

 インタビューでも語られていますが、今回の映画は、木村さん自身が脚本も手がけられたとのこと。木村さんにとってははじめての映画脚本だそうです。『あらしのよるに』はファミレスで書いていたという裏話もあります。このあたりについては、公式サイトにもインタビューが掲載されていました。MovieWalkerのインタビューから一部を引用します。

だから、10年かけて描いてきた7巻のお話を一度全部壊して、大事な要素を拾い集める作業をしました。その結果、子供が読んだらオオカミとヤギのお話でも、大人が読んだら民族の違いの話とか、戦争の話とか、恋愛の話にも解釈できる、そういういろんな見方ができるところが、この作品の面白さだと気付いたんです。

 なるほどなあと思いました。たしかに、「あらしのよるに」のシリーズには多面的な要素があるように思います。

 でも、正直言って、私はこの映画、あまり興味がわいてきません。なぜなら、キャラクター造形や絵柄が、原作のあべさんの絵とは、あまりにもかけ離れているからです。

 「あらしのよるに」シリーズは、絵本だと私は認識しています。もちろん、どちらかといえば文章主体ですし、ストーリーが抜群に面白いのですが、でも、あべさんの描く絵の魅力も非常に重要な要素だと思うのです。省略の効いた禁欲的な線と色、緊張感のある画面構成、とても抑制されているがゆえに逆に多くのことがじんわりと伝わってくるような絵です。

 これに対し、映画の方は、とりあえずネットで見るかぎりでは、原作の絵が持っていたテンションがすっかり抜けてしまっている気がしました。お子様向けといっていいかもしれません。なんだか、ひいてしまいます。

 語弊があるかもしれませんが、今回の映画化では、原作のあべさんの絵はあまり、というか、ほとんど考慮されていないように思います。公式サイトのインタビューをみても、あべさんの絵にふれたものは見あたりません。

 もちろん、あの絵をそのままアニメにすることは不可能でしょうし、公式サイトのインタビューでも杉井ギサブロー監督や木村裕一さんが語っているように、絵本は絵本、映画は映画、別のものと考えればよいのでしょう。

 でもなあ、「あらしのよるに」は、やっぱり、あのあべさんの絵があったからこそだと思うんだけどなあ……。あべさんは今回の映画をどう見られているのかなあ……。

 しかし、こんなことは、映画をちゃんと見てから書け!って感じかもしれませんね。

スズキコージさんのワークショップ

 スズキコージさんのワークショップを紹介した記事を二つ。一つは、四国新聞社、11月7日付けの記事、香川県のニュース:家族連れら手作り仮面で街をパレード。もう一つは、大分合同新聞社、11月7日付けの記事、大分合同新聞社

 まず、11月3日に、香川県高松市の市美術館にて開催された「仮面ワークショップ」。記事によると、段ボールやひも、木の枝、古布など身近な素材を使って仮面や衣装を手作り。出来上がったら、みんなで仮面や鎧やドレスを身につけて、丸亀町内や兵庫町商店街を練り歩いたそうです。もちろん、パレードの先頭はスズキコージさん。

 これ、いいですねー。写真が載ってないのですが、ものすごく、あやしかったでしょうね(笑)。スズキコージさんの写真コラージュ絵本に、『みんなあつまれ』「こどものとも年少版」2003年9月号(通巻318号)というのがあるんですが、そこに描かれるのが、まさにパレードです。高松では、ラッパや太鼓、笛、マラカスといった楽器を鳴らして練り歩いたそうですが、商店街のなかにいつの間にか、あのスズキコージ・ワールドが出現したわけです。なんだか痛快です。

 ワークショップの会場になった高松市美術館のサイトは、高松市美術館美術課。記事にも記されていますが、現在、ジェームズ・アンソール展を開催していて、その関連で「仮面ワークショップ」となったそうです。アンソールさんは、仮面を絵画に多用し「仮面の画家」と呼ばれており、しかもスズキコージさんはアンソールさんのファンとのこと。スズキコージさんと仮面のかかわり、なかなか興味深いです。

 もう一つのワークショップは、11月5日、大分県中津市本耶馬渓町の「西谷ふるさと村」で開催された「オンボロバスでいこう!」。こちらは、ベニヤ板の上に段ボールを切り貼りして彩色し、「オンボロバス」を作るというもの。

 このワークショップでも、最後は、出来上がった4台のバスを連結して、みんなでパレード。もちろん、音楽付きですね。スズキコージさんとパレード、こちらも興味深い。

 えーっと、実は私、この大分のワークショップ、参加しました。そのうち、記事に書けたらいいなと思いますが、ものすごく楽しかったです。いや、実に素晴らしい秋の一日でした。

 それはともかく、今回の会場の「西谷ふるさと村」は、西谷小学校の廃校を活用し、絵本をテーマにした展示施設を併設しています。他にも、様々な地域づくりの活動拠点になっており、非常にユニークです。サイトは、西谷ふるさと村 TOPページ。近くには、お肌つるつるになる温泉もあり、機会があったら、ぜひまた行ってみたいです。

「こどものとも」の記念誌が12月に刊行

 福音館書店のこどものとも50周年記念ブログ、いつも楽しみにしているのですが、こどものとも50周年記念ブログ: 福音館からのお知らせ第10回に、たいへん楽しみな告知が載っていました。なんと、12月初旬に、これまでの「こどものとも」「こどものとも年中向き」のすべてを紹介する記念誌、『おじいさんが かぶを うえました—月刊絵本「こどものとも」50年の歩み』が刊行されるそうです。

 内容紹介を少し引用します。

本文256ページの中には、様々なジャンルの絵本の紹介、著者ごとの紹介、絵本誕生の秘密、こどものとも603作品(増刊号含む)、年中向き200作品、計803作品すべての紹介、と盛りだくさんの内容です。

 上記のうち「絵本誕生の秘密」は、「こどものとも50周年記念ブログ」に掲載されているエッセイとは別で、すべて違う絵本作家の方の原稿になるそうです。これは本当におもしろそう。今から実に楽しみです。256ページということで割とコンパクトですが、どんな造本になるかも注目ですね。

 ウェブログで連載しているエッセイも書籍にまとめるといいんじゃないかなと思いますが、どうでしょう。

 ともあれ、今回の記念誌、期待して待ちたいと思います。

伴奏付きの読み聞かせ

 asahi.com 8月31日付けの記事、asahi.com : マイタウン秋田 – 朝日新聞地域情報:「グループかぜ」代表谷京子さん読み聞かせ。秋田市で読み聞かせ等の活動をしている「グループかぜ」が取り上げられています。

 おもしろいのは、読み聞かせに伴奏を付けるという取り組み。絵本も紙芝居も絵を見せられる人数には限りがあるため、もっとたくさんの子どもに楽しんでもらおうと始めたのだそうです。物語を語りながら、その場面をイメージした音楽を演奏。「語りと伴奏」がグループのスタイルとのこと。

 なるほどね。絵がなくても、音楽があることで、格段に想像の幅が広がりますね。もしかすると、曲はオリジナルなのかな。

 もう一つ、非常に納得したのが、次のこと。

 「ただ、どの子も歌や読み聞かせが好きとは限らない。そんな子が会場でつらい思いをしないよう気を使う」と谷さん。

 これは、たしかにそうなんですよね。歌が苦手な子どもは結構いると思います。いや、私自身、歌はちょっと苦手です。音楽や歌が付くと、自分が歌っていなくても、なんだか恥ずかしくなります。引いてしまうというか、さめてしまうというか……。

 でも、そこまで配慮するのは、なかなか、すごいことですね。

尾崎秀子さんの「語り」ボランティア

 asahi.com 8月31日付けの記事、asahi.com : マイタウン秋田 – 朝日新聞地域情報:尾崎秀子さん 子どもたちに「語り」。「語り」ボランティアを20年にわたってされている尾崎さんについての記事です。尾崎さんは、農村などに伝わる物語を「おはなし会」などで子どもたちに話されているそうです。「語り」というのは、つまり、絵本などは使わないで、物語を子どもたちに語って聞かせること。

 絵本の読み聞かせとの違いを指摘されているところが興味深い。

長女の通う小学校でプロの「語り」を聴いたのがきっかけ。「絵本を読まれるのとは違い、自分の頭の中で自由に絵を描ける」魅力に感動した。

 なるほどなあ。たしかに、絵本の読み聞かせの場合には、どうしても絵に縛られるところがあると思います。その点で、「語り」は自由に想像できるわけですね。

 と同時に、絵によって逆に想像力がかき立てられるというか、絵があることで逆に想像力が広がり深まることもあるかと思います。

 まあ、どちらがよいというわけではなく、それぞれの特性があると理解すべきでしょうね。

 あと、尾崎さんのお話でおもしろかったのは、農村に伝わる物語には「ムラ社会」特有の教えが色濃く表れているということ。人と同じである方がよい、思ったことを口に出さない方がよい、といったことです。これは、たしかにそうだなあと思います。

 別の角度から言うと、こういう農村に独特の慣習をどう読み替えていくかが、昔話の再話の一つのポイントになるのかもしれません。

ポプラ社が小中学生向け文庫を10月に創刊

 NIKKEI NET の8月30日付けの企業ニュース、NIKKEI NET:企業 ニュース:ポプラ社、10月に小中学生向け文庫を創刊。「ポプラポケット文庫」というシリーズを新しく刊行するそうです。これは、「ポプラ社文庫」の後継という位置づけ。

ポプラ社文庫の表紙デザインが「今の小中学生には幼すぎる」(ポプラ社)ことから、大人が持っても違和感のないデザインにする。

 なるほどねえ。うーん、つまり、小中学生だけでなく、大人もターゲットに入っていると理解してよいようです。福音館書店が数年前に福音館文庫を始めましたが、これと同じ路線かなと思います。福音館文庫のサイトは、福音館書店|福音館文庫。左記のサイトにも、子どもだけでなく、「子どもの心をもったすべての人々」を対象していることが記されていました。たしか、福音館文庫が創刊されたときの宣伝のパンフレットも、明らかに大人(とくに若い女性)向きになっていました。

 少しうがった見方かもしれませんが、少子化を考えると、これまで以上に対象者を広げていく必要性が高まっていると言えるかもしれません。また、近年の絵本ブームや児童文学の再評価も、この傾向を後押ししていると思います。出版社にとっては、自社の歴史的蓄積を再活用できるメリットもあるでしょうね。

 ポプラ社のサイトは、ポプラ社。サイトにまだ案内は載っていないようです。

青森市がブックスタート事業をスタート

 陸奥新報、8月30日付けの記事、陸奥新報WWW-NEWS:絵本楽しみ親子で触れ合い 青森市が子育て事業。青森市で、今年度、4歳児検診時に絵本を手渡す「ブックスタート事業」を始めたそうです。4歳児検診のときに渡すので、実質的には4月以降に生まれた赤ちゃんが4ヶ月になる8月にスタートとのこと。

 ただ絵本を手渡すだけでなく、赤ちゃんとの向き合いを伝えたり、図書館が赤ちゃんの名前で図書カードを発行したりしているそうです。写真が掲載されていましたが、絵本のほかにお薦めブックリストや子育て相談窓口情報を載せたパンフレットが入った「ブックスタート・パック」というセットを渡しているんですね。これは、いろいろ役立ちそうです。

 保健所だけでなく、図書館や読み聞かせのボランティアグループも連繋しているのは、とても充実していて良いんじゃないかと思います。横のネットワークがあるのは、子育て支援という意味でも大事なポイントかもしれません。

 ブックスタートについては、特定非営利活動法人ブックスタートが、活発に活動していますね。ウェブサイトは、特定非営利活動法人 ブックスタート。サイトの説明によると、2005年3月31日時点で、全国653の自治体でブックスタートが実施されているそうです。全国の市町村数は2544なので、約4分の1の市町村が実施していることになります。すごいですね。

 青森市の「ブックスタート・パック」も、この特定非営利活動法人ブックスタートのものを活用しているようです。ブックスタート・パックに紹介がありました。

安野光雅の世界展 広島市 福屋八丁堀本店

 中国新聞、8月4日付けの記事、中国新聞・地域ニュース:絵本の世界 広島で安野光雅展。広島市中区の百貨店、福屋八丁堀本店で、安野光雅さんの絵本原画展「安野光雅の世界展」が開催されているそうです。会期は8月16日まで。

 これは、アンデルセン生誕二百年にちなんだ企画で、津和野町立安野光雅美術館の所蔵作品から百点を展示しているとのこと。デビュー作の『ふしぎなえ』から昨年刊行された『旅の絵本Ⅵ』まで出品されているそうです。

 福屋というのは広島では老舗の百貨店のようですね。インターネットショッピングのサイトは福屋 – インターネットショッピング福屋八丁堀本店催しご案内に今回の原画展の情報も載っています。

 それから、島根県の津和野町立安野光雅美術館のサイトは安野光雅美術館安野光雅美術館 行事予定の「館外展のお知らせ」のところを見ると、広島以外でも、夏から秋にかけて数カ所で原画展が開催されるようです。

 それはともかく、今回の記事ではじめて知ったのですが、安野さんは80歳なんですね。そんなに高齢だとは思っていませんでした。活発に作品を発表されていますし、年齢を知って少しびっくりしました。

第11回紙芝居サミット 青少年宇宙科学館

 埼玉新聞、8月2日付けの記事、実演発表通じ交流 200人集い紙芝居サミット 浦和区。7月30、31日の二日間、さいたま市浦和区駒場の青少年宇宙科学館で、「第11回紙芝居サミット」が開催されたそうです。紙芝居グループ、朗読ボランティア、児童教育・福祉関係者が集まり、内容は講演や紙芝居の実演発表など。

 韓国やインドネシアから参加された方もいたそうです。韓国の蔡京希さんは、女子大学の日本語教育の一環として学生に紙芝居を教えているとのこと。「韓国にはない日本の素敵な文化」との言葉が引用されていました。

 なるほどなあ。どこかで読んだことがありますが、紙芝居は日本独自の文化だそうです。日本国内ではだいぶ衰退してきたと言えるでしょうが、むしろ、海外では注目されつつあるのかもしれませんね。

紙芝居の伝承と発展 駒ヶ根高原美術館

 長野日報、8月2日付けの記事、長野日報 (Nagano Nippo Web) – ニュース – 童謡の世界を絵に 駒ケ根高原美術館。長野県駒ヶ根市の駒ヶ根高原美術館で、学校の美術部に所属する中学生を対象に、童謡や小説をモチーフにした紙芝居制作が行われたそうです。約50人が参加。

 地元の女性合唱団が「春よ来い」「七つの子」「ふるさと」など十数曲を歌い、これを聴きイメージをふくらませて、9つの班に分かれ共同制作。聴いたばかりの童謡を1曲選び、歌詞の1番や2番や段落ごとに1枚の絵を描いて、それを紙芝居にまとめたそうです。

 これ、非常におもしろいワークショップですね。どんな紙芝居になるのかな。ストーリーも抽象化されたかなりユニークな作品が出来上がるのではないでしょうか。また、出来上がった紙芝居を上演するのも、楽しいかもしれませんね。モチーフに使った童謡を流しながら、あるいは合唱付きの紙芝居になるかも。

 この催しでは、さらに、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』や『杜子春』の紙芝居作りも行うそうです。こちらもおもしろい。一見、紙芝居のモチーフにはなりにくいものであるがゆえに、独創的な作品が出来るのかもしれませんね。

 駒ヶ根高原美術館のサイトは、駒ヶ根高原美術館。今回の催しは、駒ヶ根高原美術館「NPOホットコミュニティーサポート」に情報が掲載されています。NPO法人による事業なんですね。過去にも、なかなか意欲的な事業を幾つもされているようです。