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冨成忠夫、茂木透/長新太『ふゆめ がっしょうだん』

 冬の木の芽を拡大して写した写真絵本。1ページに1つずつ写真が配置され、その下に長新太さんの文が付けられています。

 木の芽はどれも何かの「顔」のように見え、とても「表情」豊か。うちの子どもと一緒に「これは眼だねー」「鼻みたい」「大きな耳!」「宇宙人みたいだねえ」などと、一つ一つの写真を見ながら、いろいろ話をしました。なかなか楽しいです。

 長さんの文は、まるで歌のような趣。同じフレーズが幾つかあり、そこには同じ木の芽の写真が載っています。これが全体のアクセントになっています。

 巻末には「おとなの かたへ」と題された説明がありました。「顔」に見えるところは実は落葉した葉の柄が付いていた跡で、また眼や口のように見える模様は、葉に養分を送っていた管の断面とのこと。その上にある円形ないし円錐形の部分が冬芽で、春にはそこから葉が伸びてくるのだそうです。写真一つ一つの木の名前も載っていました。

 春を待ちながら少しずつ静かに準備をしている木の芽たち。その息吹はたしかに何か歌を歌うようなものかもしれませんね。写真の木の芽の「顔」それ自体、口を開け、眼を開けて、みんなで歌を歌っているようにも見えてきます。冬のしんしんとした林のなかで、そんな木の芽たちの静かな歌声がゆっくりと流れていると思うと、寒い冬も楽しくなるかのようです。

▼冨成忠夫、茂木透 写真/長新太 文『ふゆめ がっしょうだん』福音館書店、1986年(「かがくのとも傑作集」としての発行は1990年)