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森山京/片山健『おべんともって』

 「くまのこ」が林で働いている「おとうさん」のところにお弁当を持っていく物語。途中、「きつねのこ」や「さるのこ」、「たぬきのおじさん」「うさぎのおばあさん」に出会います。「おとうさん」といっしょにお弁当を食べたあとは林のなかを探検。最後に「おとうさん」と家に帰ります。

 季節は秋。赤とんぼが飛び交い、林の木々もすっかり色づいて地面にはたくさんの落ち葉。「くまのこ」が林のなかで出会う「のねずみのこ」や「りすのこ」も冬ごもりの準備に大忙しの様子です。

 『たのしいふゆごもり』もそうですが、片山さんの描くクマの子どもは本当にかわいいです。表情が豊かなわけではないのですが、ちょっとしたしぐさや身振りがいろんなことを伝えています。お弁当を食べたあと「おとうさん」と「くまのこ」が草原に寝ころんで話をしたり、「くまのこ」が落ち葉の山で遊んだり落ち葉のふとんで寝ている様子は、実に気持ちよさそう。

 絵は、色づいた林の描写はもちろんですが、なにより空の色の変化が美しい。途中まではさわやかな青空。落ち葉のなかで寝ている「くまのこ」を「おとうさん」が起こす画面では林の木々の合間に空がのぞいており、ここではすでに濃い青とうすい紫。そしてページをめくると、真っ赤な夕焼けです。空も地面も林もまわりがすべて赤に染まり、常緑樹の緑も赤い空にあたかも溶け込んでいくかのような描写。

 今日は「おとうさん」の声のところだけ低く太い声で読み聞かせをしたのですが、うちの子どもにだいぶ受けました。

▼森山京 文/片山健 絵『おべんともって』偕成社、2004年