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ウィリアム・スタイグ『ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく』

 ネズミの歯医者さん「ソト先生」とその奥さんで助手の「デボラさん」がアフリカに行き、ゾウの「ムダンボ」の虫歯を治療するという物語。途中で「ソト先生」がアカゲザルの「ホンキトンク」にさらわれたりしますが、最後は無事に虫歯を治します。

 小さなネズミと大きなゾウの対比が、なかなかユニーク。困り切った顔の「ムダンボ」が大きく口を開け、飲み込まれそうに小さな「ソト先生」と「デボラさん」が処置しています。いわば、大きなものと小さなものの力関係の逆転です。「ムダンボ」の虫歯を削って何で詰め物をするかも、なるほどなーのアイデア。

 それはともかく、この絵本の隠れたモチーフは、おそらく夫婦愛。「ソト先生」と「デボラさん」の夫婦は仕事上のパートナーでもあり、互いを尊敬し合い愛し合っていることが伝わってきます。

 たとえば「ホンキトンク」にさらわれたとき、二人は何よりお互いを心配し合います。「ソト先生」が閉じこめられた檻から脱出するときも、「デボラさん」に会いたいという一念で死にものぐるいの力を出すわけです。そして、ラストページ、「ソト先生」の言葉が最後の締めなのですが、これがまた二人の仲の良さを表していて、ちょっとよい感じです。

 そういえば、とびらの前の一番最初のページには、「ソト先生」と「デボラさん」が並んで写っている額縁入り写真(?)がさりげなく描かれていました。

 原書”Doctor DE SOTO goes to Africa”の刊行は1992年。

▼ウィリアム・スタイグ/木坂涼 訳『ねずみの歯いしゃさんアフリカへいく』セーラー出版、1995年

アンソニー・フランス/ティファニー・ビーク『ともだちからともだちへ』

 今日は2冊。1冊目は『ともだちからともだちへ』。「ともだち」と記されていますが、それだけでなく、人が人といっしょに生きていることのかけがえのなさを描いているように思いました。この絵本、おすすめです。

おひるのあと、クマネズミは また、てがみをかいたひとを
さがしに でかけました。だれかが じぶんを たいせつに
おもってくれているって、なんだか いいきもちです。
そのことを かんがえていると、だんだんと せかいじゅうのひとが、
じぶんを たいせつに おもってくれているような きもちになるのです。

▼アンソニー・フランス さく/ティファニー・ビーク え/木坂涼 やく『ともだちからともだちへ』理論社、2003年