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島田ゆか『ぶーちゃんとおにいちゃん』

 「バムとケロ」「かばんうりのガラゴ」に続く、島田さんの新作です。今回の主人公は、イヌの兄弟、「ぶーちゃん」と「おにいちゃん」。「ぶーちゃん」は「おにいちゃん」が大好きで、いつも「おにいちゃん」のまねばかり。そんな二匹のやりとりが描かれていきます。

 「バムとケロ」や「ガラゴ」のシリーズと比べると、かなり小さめの造本。でも、画面の情報量はこれまでと同様か、あるいはそれ以上かも。画面の端々に、たくさんのサブストーリーが浮かび上がってきます。うちの子どもと一緒に、ページを行きつ戻りつして楽しみました。「あ、こんなところに!」「あ、ここにいる!」「これも違ってる!」……。

 島田さんの他のシリーズに登場するキャラクターもたくさん出てきます。あと、無生物だと思っていたものが、よーく見ると生き物だったり、すみからすみまで楽しめます。変な例えですが、スルメのように噛めば噛むほどに味わえる絵本(^^;)。

 と同時に、この絵本では、兄弟二人の人物像が秀逸。なんだか自分の子どものころを思い出しました。私も兄弟二人なのです。自分の失敗をごまかそうとする「おにいちゃん」の様子など、「あー、こんなことあったなあ」と実感できます。

 うちの子どもも二人ですが、そのうち、こんなふうに、きょうだいだけの世界を作っていくんだろうなと思いました。

▼島田ゆか『ぶーちゃんとおにいちゃん』白泉社、2004年、[装幀:高橋雅之(タカハシデザイン室)]

島田ゆか『バムとケロのおかいもの』

 「バムとケロ」、あらためて説明の必要のない大人気シリーズです。うちではこの『バムとケロのおかいもの』を持っていて、シリーズの他の絵本は図書館から借りて読みました。うちの子どもも大好きです。

 このシリーズの魅力は、なによりディテールの楽しさ。

 ページごとに「あっ!」というディテールがたくさん描き込まれており、何度読んでもあきません。『バムとケロのおかいもの』でも、市場にお買い物に行くというメインストーリーに加えて、サイドストーリーが幾つもあります。それらは画面のあちこちに散りばめられており、あれこれ見つけて楽しめます。そういう細部について、読み聞かせのとき子どもといろいろ話ができるのもよいですね。

 それから、登場する日用品や小物がとてもおしゃれ。この点も人気の理由の一つと思います。作者の島田さんは、もともとパッケージデザインなどをされていたとのこと。ファッション雑誌に載っていてもおかしくないくらい、洗練されている気がします。いわゆる「おしゃれ」とは無縁な生活を送っている私にとっては、ちょっとこぎれいすぎるというか、こういうのは苦手なのですが、好きな人にとってはたまらない魅力かなと思います。

 あと、バムとケロ以外のキャラクターもシリーズのなかで共通していて、これも読んでいて楽しめます。しかも、島田さんのもう一つのシリーズ「カバンうりのガラゴ」ともキャラクターが重なっています。「バム」と「ケロ」は「ガラゴ」シリーズのなかにも少しだけ登場しますし、たしか「ガラゴ」も「バムとケロ」シリーズのどこかに出ていたと思います。うちの子どもに教えてもらったのですが、『バムとケロのおかいもの』には、「ガラゴ」シリーズに出ていたキャラクターが何匹も登場しています。

 だんだんとキャラクターが増えていき、それぞれのサイドストーリーが加わり、絵本のなかの世界が広がっていく、そんな印象があります。

 全体の物語は、どちらかと言うと、ほほえましくなごめるものですが、これに対し、サイドストーリーや小物やキャラクターなど画面の情報量はとても多く、非常に濃密に作り込まれています。この落差のおもしろさが「バムとケロ」シリーズの特徴ではないでしょうか。

 もう一つ注目したいのが、島田さんの作風の変化です。「バムとケロ」シリーズを最初から順番に読んでいくと、少しずつ描き方やタッチが変わってきていることが分かります。かなり微妙な違いなのですが、たとえば芝生や草原の描写一つとっても、第一作と現在とでは違うと思います。それはサイドストーリーの描き込みにも言えて、はじめはいまほどディテールが細かくないような気がするのですが、どうでしょう。徐々にいまの作風が完成されていった様子を見て取ることができ、これもおもしろい点かなと思います。

▼島田ゆか『バムとケロのおかいもの』文溪堂、1999年