「バムとケロ」、あらためて説明の必要のない大人気シリーズです。うちではこの『バムとケロのおかいもの』を持っていて、シリーズの他の絵本は図書館から借りて読みました。うちの子どもも大好きです。
このシリーズの魅力は、なによりディテールの楽しさ。
ページごとに「あっ!」というディテールがたくさん描き込まれており、何度読んでもあきません。『バムとケロのおかいもの』でも、市場にお買い物に行くというメインストーリーに加えて、サイドストーリーが幾つもあります。それらは画面のあちこちに散りばめられており、あれこれ見つけて楽しめます。そういう細部について、読み聞かせのとき子どもといろいろ話ができるのもよいですね。
それから、登場する日用品や小物がとてもおしゃれ。この点も人気の理由の一つと思います。作者の島田さんは、もともとパッケージデザインなどをされていたとのこと。ファッション雑誌に載っていてもおかしくないくらい、洗練されている気がします。いわゆる「おしゃれ」とは無縁な生活を送っている私にとっては、ちょっとこぎれいすぎるというか、こういうのは苦手なのですが、好きな人にとってはたまらない魅力かなと思います。
あと、バムとケロ以外のキャラクターもシリーズのなかで共通していて、これも読んでいて楽しめます。しかも、島田さんのもう一つのシリーズ「カバンうりのガラゴ」ともキャラクターが重なっています。「バム」と「ケロ」は「ガラゴ」シリーズのなかにも少しだけ登場しますし、たしか「ガラゴ」も「バムとケロ」シリーズのどこかに出ていたと思います。うちの子どもに教えてもらったのですが、『バムとケロのおかいもの』には、「ガラゴ」シリーズに出ていたキャラクターが何匹も登場しています。
だんだんとキャラクターが増えていき、それぞれのサイドストーリーが加わり、絵本のなかの世界が広がっていく、そんな印象があります。
全体の物語は、どちらかと言うと、ほほえましくなごめるものですが、これに対し、サイドストーリーや小物やキャラクターなど画面の情報量はとても多く、非常に濃密に作り込まれています。この落差のおもしろさが「バムとケロ」シリーズの特徴ではないでしょうか。
もう一つ注目したいのが、島田さんの作風の変化です。「バムとケロ」シリーズを最初から順番に読んでいくと、少しずつ描き方やタッチが変わってきていることが分かります。かなり微妙な違いなのですが、たとえば芝生や草原の描写一つとっても、第一作と現在とでは違うと思います。それはサイドストーリーの描き込みにも言えて、はじめはいまほどディテールが細かくないような気がするのですが、どうでしょう。徐々にいまの作風が完成されていった様子を見て取ることができ、これもおもしろい点かなと思います。
▼島田ゆか『バムとケロのおかいもの』文溪堂、1999年