月別アーカイブ: 2006年5月

父親を取り込む子育て雑誌

 1ヶ月以上前の記事ですが、asahi.com、4月28日付け、asahi.com: 小学生持つパパ向けの雑誌、続々登場 – 教育。最近、次々と創刊されている子育て雑誌を取り上げています。大きな特徴の一つは、父親を読者に取り込もうとしている点であること。

 取り上げられているのは、プレジデント Family日経Kids+AERA with Kids Vol.1edu(エデュー)。こうして並べてみると、たしかに、ここ半年くらいで急に増えましたね。

 この手の雑誌が一つのジャンルを形成しつつある背景として、asahi.com の記事では、主に2点を挙げています。一つは、子どもをめぐる現在の状況の厳しさ。そして、もう一つは、企業広告の受け皿。これは実際に紙面を見れば一目瞭然ですね。記事なのか広告なのか判然としないページが非常に目に付きます。

 それはともかく、子育て雑誌のターゲットが父親であることの意味合いは、なかなか微妙だなと思いました。

 ポジティヴに見るなら、これまで育児に関わってこなかった父親の育児参加を後押しするものと言えますし、asahi.com の記事に書かれているように、仕事で忙しい父親にとっては、育児書を読むよりも雑誌の方が手に取りやすいかもしれません。どうしたらよいか分からないという育児の不安に応えてくれる貴重なメディアです。

 しかし、ネガティヴに見るなら、父親もまた「よき父親」のモデルに追い込まれる気配がなきにしもあらず……。というのも、こういう雑誌が推奨する父親は、本当に素晴らしいパパばかり。子どものためにいろんなことがスマートに出来る父親、子どもが喜ぶことを出来る父親、子どもの将来のことをきちんと考えてそのために必要なことをちゃんと出来る父親です。掲載されている写真もオシャレできれい、ちょっとワイルドな部分がありながら優しいというイメージ。とくに『日経Kids+』なんて、毎号、表紙はお父さんと子どものツーショットです。現役の父親の目からみても、あまりにまぶしすぎる……。

 これは母親の場合もそうだと思うのですが、「よき父親」の水準が高すぎると、息切れしてきそうですす。ただでさえ、最近は、家庭の教育力(しかし、教育力とは何?)がやたらと強調されている世の中です。たぶん、そのこともこの手の雑誌の背景にあると思いますが、しかし、目次を見ているだけで、なんだか疲れてきます。そんなに何でもかんでも出来る父親なんて、あまりいないと思うのですが……。

 このまま進むと、職場では業績主義に追いまくられ、家庭では子育て雑誌を片手にあれこれ悩む、そんな父親の姿も、あながち空想ではないかもしれません。あれもやらなきゃ、これやらなきゃと頑張りすぎて、それが子どもへの過度な要求に転化するなんてことも、ありえない話しではない気がします。

 子育てにおいて、もう少し肩の力が抜けるような、息が楽に出来るような、そんな社会であってほしいと願うのですが……。

 いやまあ、ちょっと考えすぎでしょうか? むしろ、父親の育児参加のきっかけになるというポジティヴな側面の方が大きいかな。うーん、なんだか分からなくなってきました……。

荒井良二さんによる「あいのて」ライブペインティング

 以前のエントリー、「絵本を知る: 荒井良二さんがNHK教育「あいのて」の美術を担当」で、荒井良二さんがNHK教育「あいのて」のスタジオセットをライブペインティングしたことに触れました。このときの様子が、「あいのて」の音楽監修を務められている野村誠さんのブログに書かれています。野村誠の作曲日記:[コラボ][子ども]子どもプロジェクトwith荒井良二さんです。

 読んでいて、ちょっと感動しました。ライブペインティングは、なんと10時間(!)にもわたって続き、その間、自然に野村さんたちとの「セッション」が生まれたそうです。ぜひ、リンク先の野村さんの文章を読んでみてください。美術と音楽という異なる表現様式でありながら、その相互作用から思いがけない何かが生まれてくる……すごいなあと思います。

 野村さんのエントリーの冒頭には、8月のワークショップ(?)のことが書かれています。福岡で、荒井さんと野村さんが一緒になり、子どもたちと何かを作るそうです。主催は九州大学ユーザーサイエンス機構の子どもプロジェクト。サイトは子どもプロジェクト:九州大学ユーザーサイエンス機構です。

 荒井さんと野村さんのワークショップ、どんな内容かなあ。できたら、ちょっと見に行きたいです。とはいえ、仕事がなあ……(涙)

「読み聞かせ」と著作権

 asahi.com、5月13日付けの記事、asahi.com:「読み聞かせ」に細かい注文 著作権めぐり作家ら – 暮らし。図書館や幼稚園などで行われる絵本の「読み聞かせ」や「お話会」について、著作権者への許諾の要・不要に関するガイドラインを、児童書四者懇談会が作成したとのこと。児童書四者懇談会に参加しているのは、日本児童出版美術家連盟、日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、日本書籍出版協会児童書部会。

 ガイドラインは、日本書籍出版協会からPDFファイルでダウンロードできます(ただし、ファイルのサイズが2.6Mもあるので、ダウンロードするのに時間がかかります)。

 すでに多くのブログで言及されていますが、どちらかといえばネガティブな反応が多いようです。私も、最初、asahi.com の記事を読んだとき、これはどうかなあと反発を感じました。

 ただ、PDFファイルをダウンロードして読んでみると、部分的にはそんなにおかしな内容ではないと思いました。営利使用の場合には許諾が必要であるという当然の原則をまず挙げているわけで、これはそれほど異論はないでしょう。しかも、観客から1円でも料金を取ったらダメというわけではなく、会場費や交通費、お弁当代、資料代、お菓子・ジュース代を徴集することは認めているわけです。グレーゾーンは残るでしょうから、そのあたりの判断の難しさはあるにせよ、割と妥当な線引きではないかと思います。

 その一方で、かなり大きな問題をはらんでいるのが、非営利であっても原本に少しでも改変を加えるなら、すべて許諾が必要としている点。具体的には10の利用形態が許諾を要するものとして挙げられています。引用します。

  1. 絵本・紙芝居の拡大使用(弱視者用も同じ)
  2. ペープサート
  3. 紙芝居
  4. さわる絵本
  5. 布の絵本
  6. エプロンシアター
  7. パネルシアター
  8. パワーポイント
  9. OHP
  10. その他、いかなる形態においても絵本の絵や文章を変形して使用する場合

 これは少々、杓子定規すぎると思います。なにせ弱視者用に拡大するのもダメ……。なんだかなあ。ここまで規制する必要が本当にあるのかなと疑問に思えます。

 ちょっと考えてみても、ある程度の大きさの会場で絵本の読み聞かせをするとなると、子どもたちに絵本が見えにくいケースが多々あると思います。私も子どもと一緒に図書館の読み聞かせ会に参加することがありますが、近くまで寄らないとよく見えません。小さな判型でも優れた絵本はたくさんありますが、それをそのまま読み聞かせしようとしても、子どもに見えなくては意味がありません。この点からすると、拡大使用(パワーポイントやOHPも含めて)はある程度認められてよいと思うのですが、どうでしょう。

 ペープサートや紙芝居、さわる絵本、等についても、子どもたちに絵本の世界に親しんでもらう一つのやり方と考えれば、ある程度は認められてよいと思います。もちろん、その場合には、出所を明示する必要があるでしょう。

 うがった見方かもしれませんが、「読み聞かせ会」で面白かった絵本を自宅用に購入することもあるでしょうし、絵本作家や出版社の情報を知る契機でもあります。ボランティアで行われている「読み聞かせ会」は、著作者や出版社にとって無料の広告媒体とも言えます。

 また、直接的な利益に結びつかなくても、そもそも「読み聞かせ会」や「お話会」は、子どもたちが絵本と出合う貴重な機会です。絵本の面白さ、楽しさを知るチャンスをもっと大事にしてよいと思うのですが……。

 ガイドラインの1ページの末尾には次のように記されていました。

絵本や児童文学作品の作り手と渡し手が、共に手を携えて作品世界の楽しさを子どもたちの心に届けられるよう、この手引きを活用されることを願っています。

 もちろん、作品の改変を無制限に許すことは決してできません。しかし、「作品世界の楽しさを子どもたちの心に届け」るためには、もう少し配慮があってよいと思います。

絵本ダイアリー

 4月25日付け、asahi.com の記事、asahi.com: 子の成長映す絵本日記 読み聞かせやりとり記録 – こどもの本。絵本の読み聞かせをを記録する日記帳が話題になっているそうです。グランまま社から刊行された『絵本ダイアリー』です。読んだ絵本のタイトル、子どもの反応、やりとり、親の感想などを書いていく日記とのこと。

 グランまま社のサイトは、絵本の樹美術館&グランまま社top新刊情報 絵本ダイアリーに詳細が載っています。実際のページの画像も掲載されています。編者は、絵本ナビ パパ’s絵本プロジェクトの田中尚人さん。

 田中さんの編者コメントには、『絵本ダイアリー』が生まれた経緯も記されていました。2人目のお子さんに読んだ絵本のことは大学ノートに記録しているそうですが、1人目のお子さんは記録しておらず、それをとても悔しく思ったのがきっかけとのこと。

 考えてみれば、自分の子どもと一緒に絵本を読むことは、本当に貴重な時間です。絵本を読んで、一緒に笑ったりしんみりしたり話をしたりすることは、子どもにとっても、親にとっても、かけがえのない体験です。それを記録した日記帳は、まさに宝物になると思います。

 私もブログのかたちで絵本のレビューを書いていますが、子どもを中心に、というよりは絵本を中心にした内容。子どもの反応ややりとりも少しは書いていますが、それほど多くありません。またブログを始めたのは、子どもの年齢がだいぶ上がってからなので、絵本を読みはじめた当初のことはかなり忘れています。

 それに、ブログは公開が前提になるので、あまり個人的なことを書くのはそぐわない気がします。以前はそうでもなかったのですが、だんだん、抵抗を感じるようになってきました。

 今からでも、絵本日記、付けてみようかな。

 ただ、手書きだと、私の字の汚さがネック。自分以外ほとんど判読不可能な位です(^^;)。また、手書きで書く時間をどうやって捻出するかが一苦労かも。いやまあ、日頃の時間の使い方を見直せば、そのくらいの時間は大丈夫かな。手書きの良さもあると思いますし、少し試してみようと思います。