これはおもしろい! 工場跡地でなくしたボールを探していた「ダイスケ」は、地下の魔法工場(?)へと迷い込みます。果たして「ダイスケ」はボールを見つけることが出来るのか、そして地上に戻れるのか?……といった物語。
見開きの左ページに文書、右ページに絵というつくり。絵は全編、木炭(?)あるいは鉛筆で描かれ、わずかに絵の四角い枠だけが渋い緑に彩色されています。モノクロであるがゆえの独特の緊張感が張りつめています。
また、ページをめくるたびに次から次へと不思議な事物が現れ、非常に幻想的な雰囲気。一輪車に乗ったワニ、無機的でありながら有機性を感じさせる機械、巨大なカマキリ、壁抜け、まったく同じ姿形の3人のインディアン……。まさに魔法工場というタイトルがぴったり。
お話は、先の展開がまったく読めず、まるでジェットコースターに乗っているかのよう。「ダイスケ」と共に一気に冒険の世界に入っていけます。それにしても、「ダイスケ」、沈着冷静で、なかなか大したもの。まったく臆することなく、地下の工場を進んでいきます。
魔法(?)ですので、ありえないことがたくさん起こるのですが、何より謎なのはラストページ。最初の扉の絵とラストの絵を比べてみると、この物語の不可思議さが際立つように思います。
ところで、うちの子どもは、今回、だいぶ緊張して聞いていました。読み終わると、フーっと大きくため息。曰く「この絵本、おもしろいねえ」(^^;)。
▼太田大八『まほうこうじょう』大日本図書、1975年、[日本イラストレイター会議・大日本図書 共同編集、編集委員:太田大八・長新太・穂積和夫・大日本図書書籍部]