河竹黙阿弥/飯野和好/斎藤孝『知らざあ言って聞かせやしょう』

 斎藤孝さんの「声にだすことばえほん」シリーズ、第三弾はなんと、わが家の家族みんなが大好きな飯野和好さんと組んで、歌舞伎の『弁天娘女男白浪(白浪五人男)』の弁天小僧菊之助のセリフ。飯野さんの絵は本当にすばらしく、画面の端々にまで力がみなぎっています。主人公の菊之助が実にワルでカッコよくて、色気がにおいたつよう。妖しい目がよいです。画面の構図もきまっていて、ページをめくるたびに、おーっという感じです。
 絵は本当によいのですが、でも、絵本全体としてみると、ちょっとどうかなと思いました。というのも、菊之助のセリフ、声に出して読んでも、それだけでは何のことやら意味が分からないのです。うちの子どももよく分からないと言っていました。巻末には斎藤さんの口語訳が載っていますが、それをそのまま読んでも、まだ分かりません。子どもはもちろん、大人の私にもよく理解できないところがあります。意味ではなく声に出すことが大事なんだということかもしれませんが、しかし、これでいいんだろうかと疑問が浮かびます。
 たとえば、じゅげむじゅげむとか「声に出すことばえほん」シリーズの以前のものだと、まさに音そのものを楽しめたと思うのですが、今回はなかなか難しい。少なくとも読み聞かせには向かないような気がします。
 もう少し仕掛けが必要なんじゃないかな。たとえば、巻末には歌舞伎役者のセリフまわしが収録されたCDブックのあることが記されていましたが、それなら、最初からCDを付けるとよいように思います。CDを聞きながらセリフまわしのおもしろさを知ると、だいぶ楽しめるんじゃないでしょうか。
 口語訳についても、註をもっと増やして、もう少し分かりやすくするとよいと思います。斎藤さんのあとがきにはいろいろ説明が書かれているのですが、やはり小さな子どもにとってはまだ難しいでしょう。
 こんなことを書いているとなんだか斎藤さんのファンには嫌われそうですが、飯野さんの絵がすばらしいだけに、もう少し、なんとかならないかなと思ってしまいました。
▼河竹黙阿弥 文/飯野和好 構成・絵/斎藤孝 編『知らざあ言って聞かせやしょう』ほるぷ出版、2004年

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です