いとうひろしさんのルラルさんシリーズの一作目。ルラルさんシリーズは、うちの子どももとても好きです。
主人公のルラルさんは、芝生の庭をとても大切にしていて、動物たちが入ろうとすると、パチンコで追い払ってしまいます。誰も庭に入れません。ところが、ある朝、ワニが庭に入り込みます。かみつかれると恐いので様子を見ていると、ワニいわく、
「なあ、おっちゃん。ここに ねそべってみなよ。
きもちいいぜ。しばふが おなかを ちくちくするのが
たまらないよ。」
試しに寝そべってみると、その気持ちよさにうっとり。自分が大事にしていながら見失っていたものに気が付いたルラルさん、それからは動物たちを追い払ったりせず、みんなでいっしょに芝生に寝そべるようになります。
このおおらかなストーリーに加えておもしろいと思ったのは色の使い方です。たぶん水彩と色鉛筆だと思うのですが、使われる色が限定されています。たとえば緑色でも、芝生の緑と木々の緑と山の緑がすべて同じ色になっており、動物たちについても、鳥も犬も猫もワニもオレンジと黄色で描かれています。しかも、基本的にベタで均質な色合いです。どのページにも同じ色が同じように現れ、その結果、全体を通じて紙面に安定感があり、と同時にページをめくるごとに色のリズムも生まれているように感じます。
使用する色が限定される絵本というと、ディック・ブルーナさんのミッフィーシリーズが有名ですが、それほどではないにしても、この絵本もまた意図的に色を限っているのかなと思います。
あと、主人公のルラルさんがユニーク。客観的にみると、丸底メガネ(ワニを丸太と間違えるほど目が悪い)にはげ頭でちょび髭、一人暮らしで中年のあやしい「おっちゃん」です。でも、とてもユーモラスで(たぶん)おしゃれなおじさんです。
ワニとルラルさんが気持ちよさそうに芝生に寝そべっている様子、また、終わりのページでルラルさんとたくさんの動物たちが芝生にゆったりと寝そべっている様子をみていると、自分も芝生にごろんと横になりたいなあとついつい思ってしまいます。のーんびりした気持ちになれる絵本です。
▼いとうひろし『ルラルさんのにわ』ポプラ社、2001年