傑作が目白押しの片山健さんの絵本のなかでも、(いまのところ)私の一番のお気に入りです。この絵本は、片山健さんの絵はもちろん、片山令子さんの文章もすばらしく、おすすめです。(表紙や裏表紙、奥付ページにいたるまで)すみずみまで、非常によく考えて作り込まれていると思います。
何がすごいって、まずは絵と文の並べ方。見開きの左側に文章、右側に絵が配置されていて、リズムがよいのです。また、左側のページの文章は、そのまわりをストーリーにかかわるものの絵が囲んでいて、これもきれいです。それから、いくつか見開き2ページまるまる絵のページがあります。文章はありません。これが全体のリズムのアクセントになっています。絵本を開いた一番はじめのページ(最初の扉の前)にも、2ページまるまる秋の森の絵があって、それが最初に目に入ってきます。
片山健さんの絵は、この絵本では水彩画かと思いますが、色づいた秋の森とあたたかな熊の家が魅力的です。とにかく小熊がかわいい。とくに、だんろを前にして眠っている小熊。それから、熊のお母さん、「はちにさされたって ぜーんぜん へいき」「かわを ざぶり ざぶりと あるいて、おおきなさかなをいっぱい とる」、たくましく、そしてやさしいお母さんです。
ストーリーは、冬ごもりの準備をしていく様子が、見開き2ページごとに一つ一つ進んでいきます。これもとてもリズミカル。りすの親子、小熊のおじいちゃん、かえるの親子、やまねの親子がそのつど登場します。
ただ一つ残念(?)なのは、このお話には、小熊のおじいちゃんは出てきますが、お父さんは出てきません。熊の家族は父親がいないのがふつうなのかもしれません。
▼片山令子/片山健『たのしいふゆごもり』福音館書店、1991年