空を飛ぶ夢を見た「まこと」が本当に空を飛べるようになるという物語。まさにファンタジーなのですが、細やかで体感的な描写が印象的です。なにせ初めて空を飛ぶわけで、そのあたりの様子がきちんと言葉にされています。手足を使ってのバランス、空の上の静寂さや雲の冷たさなど、なにげない表現なのですが、飛ぶことの身体的な感覚がよく伝わってきます。
絵は、和田誠さんの軽快な色彩がとても美しい。飛ぶとはいっても、ふわふわ浮いているような感じですね。飛行機のように空間を切り裂くのではなく、風にのって空と一体化するような感覚。たとえばマンガのように飛行のベクトルを強調するような表現はありませんし、また「まこと」の表情があまり変わらないことも、その自然さを表している気がします。
そして、ラストページ。文章の付いていないこのラストページが、なにより強く心に響きました。なんだろうな。うまく言えませんが、未知なるものへの期待というか、そんなことを感じるのです。
この絵本は、「こどものとも」50周年記念出版の1冊です。
▼谷川俊太郎 作/和田誠 画『とぶ』福音館書店、1978年(単行本化は2006年)、[印刷:精興社、製本:清美堂]
とぶ
とぶ
谷川俊太郎/作 和田誠/画 福音館書店
ある晩、まことは空を飛ぶ夢を見ました。
次の日の朝、あんまりいい天気なので、まことは…
はじめまして。わくわく本の海五郎といいます。
この絵本のテキストのないラスト、いいですよね。余韻があって。
トラックバック、させていただきました。
これからもよろしくお願いします。
海五郎さん、コメントとトラックバックをありがとうございます。
この絵本のラスト、本当に良いですよね。私もとても好きです。海五郎さんがエントリーで書かれているように、「無」のテキストでありながら、とても豊かなことが伝わってくる、そんな気がします。
ところで、海五郎さんは「はじめまして」ではないですよ(^^;)。以前のサイト「絵本と、それから……」http://ehon.main.jp/ でも、コメントをいただきました。実はこの間にサイトを引っ越したのです。合わせて私のハンドルネームも少し変えました。こちらこそ、これからも、どうぞよろしくお願いいたします。