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あべ弘士『雪の上のなぞのあしあと』

 今回もうちの子どもは謎の足跡の正体に大受けしていました。おもしろいよなー。でも、この正体、なかなかかわいいです。つぶらな瞳がまたよいです。

 ところで、表紙とその見返しまた裏表紙の見返しには、一匹の動物が描かれています。表紙では、動物園に向かっててくてく歩いているみたい。これはキツネかな。おそらく動物園のまわりにも北国の野生の動物たちが生息しているのでしょう。これもまた、北国の動物園の魅力の一つなのかもしれません。

 本文では宿直の仕事について次のように書かれていました。

まっくらで、まわりには いろんな どうぶつがいて、にんげんは ぼく ひとり。
こわいだろう、だって? とんでもない!
この しゅくちょくは ぼくの いちばんの たのしみなんだ。

ゾウ、ライオン、ヘビ、トリ……だいすきな どうぶつたちに かこまれている ぼく。
みんなは ぼくのことを にんげんの だいひょうと おもってくれている。
そして ひとばんじゅう はなしかけてくる。

 動物たちに対するあべさんの愛情がよく伝わってきます。

▼あべ弘士『雪の上のなぞのあしあと』福音館書店、1989年

あべ弘士『雪の上のなぞのあしあと』

 日本で一番寒いところにある動物園、冬の間は雪が多く閉園しているのですが、もちろん、飼育係の人たちは動物たちの世話で大忙し。そんなある夜に起こった「事件」を描いたのがこの絵本。宿直の「ぼく」が見回りをしていると、これまで見たことも聞いたこともない足跡が動物園のなかをあちこちぐるぐる回っているのです。足跡図鑑を見ても他のどんな本を見ても載っていません。いったい何が夜の動物園を徘徊しているのか。仲間たちを呼んで動物園をまわってみると……。

 いやー、これはおもしろい! 「なぞのあしあと」の意外な正体には、うちの子どもも大受けしていました。それまでの緊迫した展開がページをめくると一気に解放されるかのよう。実におかしいです。

 ところで、うちの子どもは、読みはじめるとすぐに一言、「おおかみのガブのお話を描いた人が描いているんでしょ?」。「おおかみのガブのお話」というのは、ご存じ『あらしのよるに』です。動物の描き方で分かったみたいです。さすがー(親バカ^^;)。

 でも、あべさんの最近の絵本と比べると、だいぶタッチが違うような気がします。色数が多いというか、かなりの描き込みです。途中でマンガのように絵を並べているページもありました。

 思ったのですが、この物語はおそらく実話なんでしょうね。じっさい、あべさんは北海道の旭山動物園で飼育係をされていたそうです。いや、北国の動物園ならではの出来事と思います。たぶん「なぞのあしあと」の主にとっては本当に楽しい夜の散歩だったんじゃないでしょうか。

 この絵本、おすすめです。

▼あべ弘士『雪の上のなぞのあしあと』福音館書店、1989年(「かがくのとも傑作集」としての出版は1997年)