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梶山俊夫『じいさとばあさ』

 今日は1冊。日本の昔話をモチーフにした絵本です。二人で暮らす「じいさ」と「ばあさ」。ある日、山にしばかりに行った「じいさ」は、二十歳の若者になって帰ってきます。山の川端には若返りの桃がなっていて、これを食べると若くなるのです。そこで、「じいさ」に勧められて「ばあさ」もその桃を食べに山にむかうのですが、どうも食べ過ぎたみたいで赤ちゃんになってしまうという物語。
 作者の梶山さんがカバーに書かれていますが、あらためて考えてみると奇想天外なお話です。うちの子どもは「ばあさ」が赤ちゃんになった場面がよく分からなかったようで、「別の人になっちゃったの?」と言っていました。少し説明してようやく理解したようです。うちの子ども曰く「僕はこの桃、食べたくない」。うーん、そうか。どうやら赤ちゃんにはなりたくないみたいです(^^;)。
 絵は、緑と茶を基調とした彩色に太い線、文章も手書き文字で、なんとなく暖かみがあります。山々の稜線と木々が独特のリズムをもって繰り返し描かれており、これもおもしろい。桃の木をよく見ると、「じいさ」は桃を1個しか食べていないのですが、「ばあさ」は5個も食べていることが分かります。これじゃあ、赤ちゃんになるのも当然ですね。
 ラスト、赤ちゃんになってしまった「ばあさ」と「じいさ」がいっしょに暮らしている様子が描かれているのですが、これがなんとも幸せそう。二人ともニコニコしています。二人がとても仲がよいことは、最初に「じいさ」が山にしばかりに行く場面にも表れているように思いました。

じいさは やまへ
しばかりに いったって。
ばあさは さびしくて
いちにち かどにたって
まっていたって。

「じいさ」もまた、「ばあさ」が桃を食べにいったとき、家の角に立って待っているんですね。
 ところで、うちの子どもと私の今日の疑問は、赤ちゃんになった「ばあさ」に誰がお乳をあげるんだろうということ。ウシを飼っているわけでもなさそうだし、どうするのかなあ。うちの子ども曰く「ばあさが自分のお乳を自分で飲むんじゃないの」。いや、それは無理だって(^^;)。
▼梶山俊夫『じいさとばあさ』フレーベル館、1994年