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桑原隆一/栗林慧『アリからみると』

 これは、すごい! アリの目線から撮影した写真絵本。トノサマバッタ、イナゴ、ウスバキトンボ、ショウリョウバッタ、オオカマキリ、ノコギリクワガタにカブトムシと、いろんな虫たちの驚きの写真が次から次へと登場します。まさにセンス・オブ・ワンダー。

 文字通りアリの視線から見ているので、どの虫たちも画面に収まりきらないほど巨大で、ものすごい迫力です。私もうちの子どもも思わず「おーっ!」と感嘆の声を上げたほどです。

 ページをめくっていると、まるで自分がアリになったような感覚。なんだか怪獣映画のような趣もあります。アリがトノサマバッタやオオカマキリを見上げる構図は、人間がゴジラを見上げる構図と同じなんですね。青い空や遠くの木々などが背景に写っており、画面に奥行きがあることも、そんな感覚を起こさせます。

 また、虫たちの格好良さは特筆もの。キリリと伸びた足、鋭角的に曲げられた環節、木々や地面をがっちりつかむツメ、まるで鎧のように整えられた硬い外皮、繊細な模様を浮きだたせた羽……なんともいえない機能美に満ちています。クワガタやカブトムシの角なんて、(もともと魅力的ではありますが)普段見ているのとは別物の立派さ。昆虫という生き物の凄みを感じ取れます。

 ところで、考えてみると、これらの写真は、アリの目に本当に映っているものとはだいぶ違うんでしょうね。昆虫の眼は複眼ですし、視野も広いでしょうから、写真とは異なる景色が見えていると思います。その意味では、アリの「目」というよりは、アリの「視点」から見る、と理解するのがよいかもしれません。もちろん、だからといって、この写真絵本の素晴らしさは変わりありません。

 それはともかく、この写真、どうやって撮影したんだろう? たぶん特殊なレンズや機具を用いるのでしょうが、虫たちは逃げたりしないのかな。なんだか舞台裏を知りたくなってきます。検索してみたら、カメラマンの栗林慧さんは、同様の写真絵本を何冊も公刊されており、解説書も執筆されていました。今度また図書館で探してみようと思います。

▼桑原隆一 文/栗林慧 写真『アリからみると』福音館書店、2001年(「かがくのとも傑作集」としての刊行は2004年)、[印刷:日本写真印刷、製本:多田製本]